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Dr.平川の沖縄・アジア麺喰い紀行
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多くの国々や地方を廻って驚嘆したことは、華僑と呼ばれる中国人の海外雄飛の実行力とそれに伴う中国文化の拡散であった。今回は主として食文化のうち、麺について観てきた。中国から渡来した麺がそれぞれの国々で、元々そこにあった地元の料理と融合し、新しいカテゴリーの麺料理を誕生させ、その地に根を張っている事に感動を覚えた。
(p288-289)
著者は獣医師やフードライターの経歴を持つ平川宗隆氏。沖縄そばの大手製麺所である「サン食品」が、創立45周年記念事業として協賛し出版されている。300ページ近いボリュームのある単行本ながら写真はオールカラー。それでいて2000円しないのだから驚く。

沖縄在住の著者はまず沖縄そばの歴史と現在についてまとめている。沖縄そばも、麺の形状などで「沖縄そば」「八重山そば」「宮古そば」の3種類に大別され、様々な具を乗せたバリエーションがあり、焼きそばとして食される沖縄そばもある。沖縄そばを使った冷やしソバやつけ麺は、新しいジャンルとして紹介されている。
同じ福建省をルーツに持つ長崎チャンポンとの共通項や、戦前に台湾で沖縄そばにそっくりな麺があったという記録、東京から伝えられたソーメンが沖縄でも馴染まれていった歴史など、国単位では括りきれない麺文化がある事が紹介されていく。
すべての麺類の発祥地である中国をはじめ、東アジア・東南アジア各国の麺を探訪していく。割譲された歴史を持つ香港・マカオに独特な麺文化を期待した筆者だが、ほぼ中華料理圏であった事に残念がるものの、タイのトムヤムクンスープヌードル、マレーシアのラクサなどに発見をする。冒頭の引用した「あとがき」の文にもあるが、華僑が少数派になる土地では中華料理の食材も調達が難しく、その中で新しい麺料理を誕生させていったのではないかとしている。
最後にはアジアの麺文化と沖縄そばを比較している、東南アジアではシンプルなスープに、自分で入れる調味料で味を変えていく事が一般的である一方、沖縄そばや中国の麺では、スープがほぼ完成した状態であるなどの特徴の違いが触れられている。面白いのは、沖縄以外の日本人が、沖縄そばの代名詞のように思っている「ソーキそば」が、1975年生まれである事実。この年には沖縄海洋博覧会が開かれ、観光客に対するアピールや、客単価アップの思惑があったのかもしれない。
沖縄名物のソーキ肉を乗せた事が県民にも支持を得て、テビチ、中身、ゆし豆腐など、様々な食材が沖縄そばにトッピングされるようになった。この柔軟さ、ラーメンにはまだまだ足りていない点かもしれない。
そういえば、この書は沖縄を起点にして西を旅した記録であり、「ラーメン」については触れていない。しかし、この一冊を読むと、ラーメンについても考えさせられる。華僑による麺料理の伝播であるとともに、蕎麦やうどんに使われてきたスープや具が融合した日本のラーメン。中国の影響を色濃く受けつつ、新しく誕生した麺文化でもあると思える。
