32歳の夏


とある病気が見つかって
入院、手術をしました
入院先はとても大きな病院
費用の点では悩みましたが
病室は個室を選びました
手術は無事に終わり
ひとりの時間を静かに過ごします
3日ほど経ったある日、
病棟の婦長さんがやって来て
「重篤な患者さんにこのお部屋を
譲っていただいて大部屋に
移っていただけませんか?」
と丁寧にお願いされたんです
術後も安定していたので
『大丈夫ですよ』と返事をして
6人の大部屋へ移動しました
大部屋では
どうやらわたしが最年少💦
50〜70代くらいの患者さんで
ベッドが埋まっていました🛏️
わたしのベッドは窓側で
カーテンを挟んだ隣の患者さんは…
なんと尼僧さん
尼僧さんって厳しい修行をして
〝精神鍛錬を極めた人〟
みたいなイメージがありましたが
毎日、御弟子さんと思われる方が
お見舞いに来ていらして
その会話が丸聞こえで…
『わたしね、
死ぬのは怖くないけど
手術は怖いのよ』
ちょ、ちょっと、ちょっと〜〜〜
思わずカーテンを開けて
突っ込みたくなりました
でも、その一言で
なんだか一気に親近感が
で、その尼僧さんの手術前夜です
夜中に目が覚めたら
ぶつぶつ… ぶつぶつ…
小さな声が聞こえてきます
『こわい…こわい…こわい…こわい…』
耳を傾けると隣のベッドから
ずーっと聞こえてくるのです

とはいえ、
何をしてあげることもできないので
無理矢理寝ようとしましたが…
その後、
強烈な金縛りに遭うわ
悪夢にうなされるわで
散々な夜でした

数年後、定期検診で
その病院に行った時に待合室で
あの尼僧さんの姿を見かけました
手術、無事に終わって
良かったですね〜〜〜





(こころの声)
あれだけ嫌だと思っていた
大部屋なんですが
気付いたら他の患者さんに
ずいぶん可愛いがっていただけまして
『若いんだから食べられるよね』
『これ、わたしもう食べられないから』
病院食の余りが
全部わたしのところに集まり
結果、入院中なのに2㎏増量
迎えた退院の日
自宅から履いてきた
スカートのファスナーが閉まらず
地味に困ったのでした
