「あっ!いた!おばあちゃーん!」


バスをおりたとたん、ミオは手をふりました。


「ようきたねぇ。暑かったやろ?」




なつ休みに、おばあちゃんの家へ
行くことをたのしみにしていたミオ。


「今日は〝みやまや〟によって行こうか?」


山の小さな だがし屋さん___
ミオのだいすきなお店です。


小さなひき戸をあけると
ふうりんの音がむかえてくれました。





お店のいすにすわると、
おばあちゃんがおくにいる
おじいさんに声をかけました。


「お好み焼き、ひとつ、お願いねぇ。」


ミオはびんのジュースをのみながら
おじいさんの手もとをじっと見つめます。


へらをにぎるのは右手だけ。
左のそで口はふんわりと風にゆれています。


おじいさんは右手だけで玉子をわり、
なれた手つきでお好み焼きを焼きます。


………どうして、
おじいさんの左手はないんだろう?


ミオはふしぎに思いましたが
聞いちゃいけない気がして
そのまま言葉にはしませんでした…


おじいさんは、じょうずにへらを使い
お好み焼きをくるりと返します。





「焼けたよ。」
しずかな声でぽつりと、
おじいさんがいいました。


「ありがとう。いただきます!」
にっこりわらってお好み焼きをひとくち。


ミオが顔をあげると、
おじいさんは少しだけわらいました。


のれんをくぐって外に出ると西の空が
うっすらあかね色にそまっていました。


「おじいさんのお好み焼き、おいしいね。」


「あの人の焼くお好み焼きは
昔からかわらんよなぁ…」


ミオがぽつりと聞きました。
「…おじいさんの左手、どうしてないの?」


「うん。戦争で…なくしたんよ。」


ミオはしずかにうなずきました。


「せんそうって、こわいんだね…」





次の朝___


ミオはおばあちゃんと
山のふもとのお寺に行きました。


「おはかまいりって、どうしてするの?」


ミオが聞くと、おばあちゃんは
にっこりしていいました。


「おじいちゃんたちが、
こっちに帰ってくるからだよ。」


すると、どこからともなく
ちょうちょがやってきて
ミオのまわりをくるくるとまわります。




「ねぇ、おばあちゃん。もしかして…
おじいちゃんが来たのかもね?」


「そうかもしれんなぁ…」
おばあちゃんは小さくうなずいて
やさしくわらいました。



その夜のこと___
おばあちゃんが家の前で
木をもやしはじめました。


「この火はなぁ、迎え火(むかえび)って
いうんだよ。ごせんぞさまたちが空の
向こうから帰ってくるんだ。」





「この火をたいて、ここだよーって
道しるべにするんだよ。」


おばあちゃんがそう言って
そっと手を合わせました。


ミオがおばあちゃんのとなりで
火を見つめていると…


炎の向こうにゆらゆらといくつもの
かげがあらわれたように見えました。


その中には、
若い兵隊さんのようなかげがひとつ___


「……おじい…ちゃん…?」
ミオは小さな声でつぶやきました。


こちらを見て、ほほえんでいるような…
そんな気がしたのです。




「おばあちゃん。また明日もさ…」


「うん、明日も?」


「おじいさんのお好み焼き、食べたいな。」


「ふふふ。そうしようかね。」









子供の頃に通っていた

駄菓子屋さんのおじいさん。



ほとんど話さない静かな方でしたが

お好み焼きを焼く姿はとても丁寧で

おじいさんのことが好きでした。



大人になった今、

その静けさの意味が

少しだけわかる気がします…



お盆の迎え火を見ていると

命は繋がっているということ、

今ある日常がどれだけ尊いか、

そんなことをあらためて思います。



このお話には、

そんな記憶と想いを込めました。



あのお好み焼き、また食べたいです😌



お読みいただきありがとうございました風鈴