最寄り駅まで向かうバスは
いつもたいてい、混んでいます。
今日は土曜日ということもあって
バス停に停まるたびに
たくさんの人が乗り込んできます。
ふと左を見ると
座席の右側におばあさんが
そしてその左にはリュックが置いてありました。
ん?
リュック?
座席に?
こんなに混んでんのに?
二度見、三度見しても
やっぱりリュックです。
おばあさん、
そりゃないだろう
と思いました。
こんなにギュウギュウ詰めなのに
リュックを座席に置かないでくれ。
あいにく、私は
ちょっと離れたところに立っていて
しかもおばあさんの前に立っているのは
ポーーーンと腹のつきでた
小太りのオッチャンで
さすがにこのオッチャンが
おばあさんに
「奥に詰めてください」
とは言えないだろうなぁ
と思ったのです。
私には関係ないと言えば関係ない。
でもなぁ‥‥‥
と思っている間に
バスは駅に着きました。
ギュウギュウ詰めで立っていた人の中には
子供連れの、
目の見えない女性もいらしたのがわかりました。
う〜〜ん、これはーーー!
バス停に着き、バスを降りると
私はリュックのおばあさんに
声をかけました。
「あの、すみません。
このバスはとても混んでいて、
目の見えないオカアサンも
立ってらっしゃいました。
できればお荷物は膝の上に乗せていただけたらと」
するとおばあさんは
「あ、ごめんなさいね。
実は私、胃癌で胃を摘出したので
お腹をあまり圧迫できないのよ。
でも、ごめんなさいね」
と、おっしゃる。
私には目に見えるものしか見えてなかった。
そういう方もいらっしゃるのだ。
「そうでしたか〜。
それは余計なことを申しました。
どうもすみません」
と私が謝罪すると
おばあさんは私の方にそっと手を置いて
「いえいえ、私の方こそ
ごめんなさいね〜」
と言われる。
「どうぞお気をつけて」
と言って別れたのだけれども、
私は話しかけてよかったなぁって思いました。
余計なことを〜
でしゃばったことを〜
という、恥ずかしい気持ちや
反省するような気持ちもあったのだけれど、
でも察する力の弱い人間は
言葉を交わしてみてわかることもある。
だとしたら
できる限り失礼のないかたちで
言葉を交わしてみたい。
私の肩には
おばあさんの手のぬくもりが
残っているみたいだから。
