ウソとホントの間 ー村上海賊の娘ー |      生きる稽古 死ぬ稽古

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ー毎日が おけいこ日和ー
        

文庫本四巻、という

なかなかの長編を一気読み。

 

 

 

 

読み終わって

いくつかの〈はざま〉を行き来している。

現代と戦国期との間、

史実と脚色の間、

醜女と別嬪の間、

信仰と政治の間などなどなど…。

 

この物語の主人公は

瀬戸内海の海賊の娘で

景(きょう)姫と言います。

 

作者は、史実としてはただ<女>とだけ記されているだけの彼女を

単純で刹那的で野蛮できかん気が強く、

それでいて

荒くれ男たちを惹きつけてやまない魅力を持った

愛すべき暴れん坊として描いています。

 

人として尊敬できるかどうか?とか

人として正しい行いであるのかどうか?とか

そんな定規ではかれるような存在ではない。

ともかく破茶滅茶な姫様です。

 

作者は限りなく史実を重んじて

徹底的に取材を重ね、

その史実の上にキャラの強い人物たちを肉付けして

物語を展開していきます。

歴史的にはただの<女>でしかなかった姫を

生き生きと描き出しています。

 

だから痛快です。

ものすごく面白い。

 

この物語に出てくる登場人物のほとんどは

日本の歴史に名を留めた人物なんです。

 

でも、実際にこんな性格の人たちだったのかどうか?

という肉付けは作者の力量。

そんな海賊たちの物語なんですが、

出てくる人たちは

剛の者、

あるいは豪の者が多いんです。

 

腹が据わった、とか

肝が太い、とか

器がでかい、とか

今の時代には死語となってしまったような

そういう人物が

たっくさん出てくるのです。

 

主人公の姫のところで

刹那的

と書きましたが、

それは他の人たちにも言えることで

後先の計算づくで動かない、とか

その一瞬に、まさしく命を懸ける、とか

そんな人もたくさん出てきます。

 

もう一つたまげたのは

海賊気質のことです。

海賊気質、特に泉州の海賊たちは

面白いか面白くないか?

というところに

生きることの最重要価値を置いていて、

命のやり取りをしている戦の最中であってさえ、

びっくりするような軽口を叩いています。

殺されるまさにその刹那にも

まるでテレビでお笑い番組を見ているような口のききかたをしているんです。

 

この時代の命というものはとても軽い。

 

というような一文が

物語のはじめの方に出てくるのですが

まさにソレ!!

みんな、自分の命なんぞ

そんなに大したものではない、

とでも思っているようで

そんなことより

命以上に大事にしているものというのが

それぞれの胸中に宿っているようなのです。

 

この物語を読み終えると、

ちっせえワタシ

ということを実感させられます。

 

思いっきりネタバレになっちゃいますけど、

自分たちが圧倒的に不利になるようなタイミングで

敵前逃亡を図ろうとする武士たちを

「あぁ、ええよ」

と許して

「しょうもないやっちゃなぁ」

と笑い飛ばす大将がいたり、

孫を船中に乗せたままだったから

この一騎打ちはちょっと待ってくれと言われて

「それはいかん、早くいってやれ」

と返事をする武士がいたり、

勝利した船の上で、

敵兵相手にかつての武功を延々と話して聞かせる重臣がいたりと

およそ<命をかけた真剣な戦い>の場で

そんなバカな!!

と言いたくなるようなエピソードが満載なんです。

 

完全無欠のヒーローがいるわけじゃなく、

性格的に破綻していたり

弱虫だったり

上から目線でカッコつけてたり

短絡的で直情的だったり

ネチネチと口うるさかったり

腕が立つくせに、ただただ卑怯だったり…

 

一筋縄ではいかない豪の者、剛の者たちが

瀬戸内海を舞台に

大迫力の戦を展開していきます。

 

もう一度言う。

あ〜〜、面白かった!!