キリスト教徒だった母の遺品に,大,小,2つの英文による聖書があった。今回は小さな聖書。この小さな聖書は,具体的には,名刺より少し大きなサイズ。発行は,米国聖書協会(American Bible Society)。
母は,英語がからっきしダメ(戦時中の女学生であったので,まともな英語教育をうけていない)。それゆえに,あまり読んだ形跡がない。
この小さな聖書の内容は,新約聖書(+10戒,主の祈り,詩編19,詩編23,詩編24,詩編91,詩編121)に加えて,米国で有名な讃美歌(日本ではあまり知られていない)。収録されている讃美歌は,以下のとおり。
Our God, Our Help
Lead On, O King Eternal
Onward Christian Soldiers
Faith of Our Fathers
Eternal Father,Strong to Save
How Firm A Foundation
Rock of Ages
Abide With Me
Now the Day is Over
ここまでは,内容的に,どうってことないが,さらに,祈祷文と米国愛国歌が追加されている。祈祷文は,以下のとおり。
A Prayer on going into battle
A Prayer for loved one
A Prayer for a pure heart
A Prayer for Thanksgiving
A Prayer for penitence
Washington's prayer for the nation
私がギョっとしたのは,最初の祈祷文。battleというのは,最初,抽象的な意味だと思ったのですが,祈祷文を読むと,文字通り戦場に向かう将兵ための祈祷文。
また,掲載されている米国愛国歌は,以下のとおり。
America the beautiful
My country, 'Tis of thee
National Anthem
国歌はともかく,この2つの曲は?まるで,MAGA集会のように,大勢の人が集まる集会で星条旗が舞っているようなイメージ。youtubeでは,軍のコーラスが歌っている動画が多数。
以上により,これは,普通の聖書ではないと思い,調べたことによると,戦場に出征する兵士が背嚢(軍用リュックサック,軍用backpack)などに入れることを想定した物らしい。
母がこの聖書を手に入れた時期は,はっきりしないが(裏表紙には,母の名前以外の記載がない),終戦後の1947年-1950年の間。母に聖書を贈呈した人は,不明。母は亡くなるまで何も語らなかった。恐らく米人宣教師か,朝鮮戦争に赴くために,一時的に熊本に駐留した米軍兵士。
この聖書を見る毎に,父には申し訳ないが,母が父ではなく,アメリカ人に嫁いだほうが,より幸福だったのではないとよく思う。今では,アメリカ人に嫁くこと,アメリカ人を嫁にもらうことは何でもない。しかし,終戦直後となるとそうも行かないことは想像に難くない。
今となっては,この聖書に関わった人が戦場に赴かれたのであれば,無事,復員されていることを願うのみである。