もう過ぎてしまったが、終戦記念日になると必ず思い出すことがある。
半世紀・・50年前の約束だ。
約束から25年間は果たそうとする強い意志はあるが、どうすれば果たせるのか皆目わからなかった。 果たせる道が見えてからも遅々として進まず、悶々とした日々が続いた。
記憶力が悪くて頑張っても時間を守れないお野人、約束など自分から滅多にしないが・・・してしまった。
人生のすべてを費やすほどの重い約束。
約束した相手はこの世の人ではないが、野人にとってはこの世の人。
神であっても魔物であっても、動物、昆虫であっても意思を持った同じ生き物。 誰であれ約束は約束だな。
「自分なりに努力して頑張ったがやれなかった」・・・は、野人の本意でも生き方でもない。
その程度の心構えなら最初からしないほうがよい。
時間はかかっても必ず結果は出すし約束も果たす。
約束した時期は17歳。
相手は同世代の大勢の男達・・
特攻で散っていった人達だ。
あの時何人と、誰と約束したかは覚えていない。
まあ普通に考えれば馬鹿げていると思われるだろうが、野人ははっきりと約束した。
約束の内容は・・
国土の平和、世界の平和、戦争のない世界を築くこと。
まあ、これも普通に考えれば一笑に付すようなことだろう。
17歳にしては荷が重すぎるどころか、人類史上誰もやれていないことなのだから。
しかし野人は・・
「やってやれないことはない」
本気でそう思っていたし、その方法は・・
「そのうち思いつくだろう」
そう考え 彼らの遺志を引き継いだ。
安易な約束、無責任な約束などとはこれっぽっちも思わず、必ず果たすつもりで生きて来た。
それに・・彼らも見込みがあると思ったからやって来て約束したのだろうし、それに応えないとな。
あの時、約束しなければもっと気楽に生きられたのに・・とは一度も思ったことがない。 結構気楽だったしそう深刻でもない。
高校から大学の頃、反戦運動が盛んになり反戦歌も流行った。
関心がなかったのは、それで約束が果たせるとは思わなかったからだ。 各国の事情で戦争が起こるのだからその事情を改善しない限り争いは何度でも起こる。 当然のことだな。
自由な人の心は都合でどちらに転ぶこともあれば、憎しみが憎しみを生むこともある。 世界の歴史はその繰り返しだ。
民族、宗教、思想を超えて一つの方向に向かわなければ不可能。
それらの壁は絶対であり、超えるのは困難を極める。
唯一の方法はそれらとは関係なく、誰が考えても答えが一つになる物理しかない。
世界の誰もが飢えずに満たされればよいのだ。
19歳の野人はそう考え、それは今も変わらない。
約束から2年目、方法は決まっていないが基盤となるこの方程式が出来上がった。
彼らとの約束を果たす為に海洋学のある大学を選び、深海という未知の世界への進出の礎になるつもりだったがビジョンのない国に失望、海外へ渡ることを決意、就職活動はしなかった。
固い決意もやや失速・・ 大学、先輩などのしがらみからしばらくヤマハに籍を置くことになった。
入社後、自分の意志ではなく彼らが散った海域に偶然引き寄せられたが、それに全く気付かなかった。
約束はしたが、彼らの詳しい情報はほとんど知らなかったからだ。
そこには当時のヤマハ社長が大切にしていた予科練生き残りの男が2人いた。 一人は船舶部門、一人は社長専用小型ジェット機のパイロットだ。 高齢のパイロットは大和が沈んだ海域に、自らの意思で一人で突っ込み彼らの後を追った。
それでも野人はピンと来なかった。
47歳で長居をしてしまったヤマハを退社、再就職も事業も眼中になく、一人山奥で約束を果たす為の準備に入った。
独自の地球物理学の研究であり自然界の仕組みの究明と動植物との対話。 猪を仕留め燻製、自給自足で山水、ランプ生活、武術で体を鍛え直す施設も計画。
これもまたヤマハ入社時同様に色んな邪魔が入り結局今の会社を興した。 出来ちゃったものは仕方ない。
山ではなくこの会社で社員も引き連れて約束を果たせばよいのだ。
それから幾度も東シナ海に引き寄せられた。
まあ、催促されているようなものだな。
そこで初めて引き寄せられ続けていることに気づいた。
彼らは約束を忘れてはいない。
東シナ海を走り回っていた頃、拠点だった枕崎のすぐ近くに知覧があることも知らなかった。
知ったのは6年前であり、それまで探して行こうとしなかったのは彼らに合わせる顔がなかったからだ。
結果どころか出発点にも立てなければ行けるはずもない。
6年前に初めて訪れた時には進む道も決まり始動中。
約束は果たせてはいないが経過報告は出来た。
その時、彼らが常に共にあることを知り、東シナ海での絶体絶命のピンチは幾度か彼らに助けられたことを悟った。
やっとここまで来て、世界も視野に入った。
「黙らっしゃい~
任せておきなさい
」
そう言ってみたいのだが、まだ言えそうにもない。
先輩達だし・・
百年かかろうが二百年かかろうが約束は必ず果たさないとな。
野人はその為に生きている。
東シナ海 新たな旅立ち
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大和に一番近い島
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海門に通ずる開聞岳
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