お化けは山姥よりもっと若い女性だと言う。
皆は必死の形相で止めたが、山姥でないことがわかれば相手が誰だろうが一向に構わんのだ。
お化けとは言っても四谷怪談のように恨みを持ったものや魔物はごく一部で、そのほとんどが天に昇れず、自分でもわからずさ迷う人の魂だ。
歩いて40分かかるこの浜は子供の頃から慣れ親しんでいたが、夜のお化けは知らなかった。
持ち物は初期のブログにも書いたが1週間にしては軽装備だった。
空手着、水中眼鏡、モリ、ナイフ、懐中電灯、ウイスキー、タバコ、ライターくらいで他には何もない。
岩の上で寝て、食糧はすべて海から調達すればよい。
特訓は、必ず1時間の遠泳で沖へと向かうがサメ用にナイフは必需品だ。
次に、崖の下には巨岩が多く、裸足で岩から岩へ跳躍、跳んでから着地点を見極める反射神経の特訓だ。
最後は岩から宙返りして砂利浜へ着地、逆立ち歩行、兎跳びで足腰を鍛えたあと武術の練習だ。
卒業まで下駄、靴など持ってはいなかったから最初から最後まで裸足で過ごす。
山道も裸足で走り、雪の山道も裸足に下駄だったから足の裏は誰よりも丈夫だ。
もう一つの日課は趣味と鍛練を兼ねた「食糧調達」で、モリと網袋を持って海に入れば2時間は上らず潜りっぱなしだ。
それで1日半の食料は十分賄え、アワビにサザエにタコにクエにイシダイなど食べ放題だ。
しかし朝も昼も夜も浜で焼いて食べたりしていればいい加減飽きて来る。
肉が食いたくて、猪にも淡い期待を抱いたが海岸には出て来なかった。
夜になると崖に囲まれた周囲は完全な暗闇になる。
野人の焚火の火で浮かび上がる背後の森や絶壁や奇岩はやや不気味だ。
空手着のまま海や湧き水に入るから濡れているが、焚火のそばの岩で寝ていれば朝になったら乾いている。
一日目はお化けのことなどすっかり忘れてコテ・・っと眠ってしまった。
続く・・