野人の実験農園にイチゴの花が咲いていた。この春で3回目だからよく頑張る。幅1m、長さ10mのうねだけでなく、通路から隣のうねまでランナーを出して進出している豪傑もいるが、抜かずに放置してある。草にも負けず頑張って、自分達の世界を築きつつある逞しいイチゴだ。5種くらい植えたと思うが、もうどれがどれだかわからない。春だけでなく夏も秋も花が咲き実がなっている。ここだけは真夏も草刈りが必要ないから楽だ。イチゴは弱弱しいイメージがあるが、野人農園の中ではイチゴが一番草に強く、1年目は草に埋もれたが生き延び、二年目からは草を抑えて生やさない。まるでクローバーと同じくらい雑草を抑える力を持っている。8月は多忙で放置すると通路は草ボウボウになってもイチゴのうねは草もまばらで涼しげに育っていた。虫もつかないので薬はいらず、植えてから石灰も肥料も水も一度もやったことがない。つまり、まったく手がかからず、これからはむしろ広がりを食い止めるほうが手がかかりそうだ。通路を埋めた邪魔者イチゴは散々踏んづけられてペッタンコになったにもかかわらず、また鎌首持ち上げて花を咲かせていた。まあ、実を付けるまでは踏まないように跨いで通るしかない。実は小粒だが驚くほど酸味と甘味が濃厚で旨い。これまで食べた水っぽいイチゴとは比べ物にならない。体中の細胞が生き返る活力イチゴだ。丹精込めず、スパルタ式に放置すればこれほど味が違うのかと言うほど生命力に溢れている。肥料と水で細胞を膨らませない限りアブラムシも寄りつかない。株主で還暦を越えた女性の植物学者は、液肥で膨らんだ農薬まみれの市販のイチゴは絶対に食べないが、野人農園のイチゴは宝物のようにして食べている。大きなイチゴが好物なら膨らませるしかない。綺麗なイチゴが好きなら薬をたっぷり使うしかない。甘いイチゴが好きなら農家が苦心しなくてもミルクをかければ十分、しかしどうやっても味と成分のバランスは自然界の植物に人が敵うはずもない。減農薬が当たり前の時代だがそんなことはない。自然の道理に適えば正常な野菜は出来る。健康を重視するなら残留農薬ばかり神経質になるよりもっと周りの植物に目を向けたほうが良いのではないだろうか。草食動物も人間も、正常な「植物」を食べなければ本来は100歳以上ある寿命をまっとう出来ない。

