伊勢海老は海老の王様と呼ばれ人気が高い。海外でもこの仲間は高価だ。どの海老も同じように美味しく、それぞれの良さがあり、野人は特に伊勢海老が王様とは思っていないし価格でも判断しない。伊勢海老は生まれ育った九州の実家で中学の時から潜って獲っていたが、たまに浜で焼いて食べる程度で持ち帰りたいとも思わなかった。刺身にしてもコリコリ感は他の海老と変わらず甘味にやや欠ける。甘い海老は他にいくらでもあるのだ。大人になって気付いたのだが、伊勢海老の旨味はその頭にある。頭が異様に大きい分だけミソも多く濃厚なダシが出る。海老も蟹も茹でてダシガラを食べるなんてもったいない話だ。
それから例外なく伊勢海老を食べる時は活きたままぶつ切りにして味噌汁にして食べている。人に食べさせるなら別だが、自分が食べる場合はいくら大きくてもあまり刺身にはしない。ブイヤベースと同じようにスープの独特の味を楽しみ、身はどちらかと言えばどうでも良い。もったいないから捨てずに腹のタシに食べるだけだ。伊勢海老を買うことはほとんどない。野人の頭の中ではどの海老も価値が同じで、この海老は極端に高すぎる。まだ車海老のほうが身の味は良くて、重さの割には量もたくさん取れる。車海老の仲間のクマエビはもっと美味しくてその半額だ。伊勢海老の素晴らしさはその頭の味にあり、活きていなければ味わえない。ワタリガニの仲間の蟹もすべて味噌汁が旨い。しかし伊勢海老の味噌汁の味は強烈な個性を放っている。冷凍物や輸入ものとの違いは最初の一味でわかる。日本の海には日本の海の味があるのだ。