釣りたての活きたイナダをいただいた。野人は自分で何でも調達出来るが、もらうことも得意だ。別におねだりするわけではないのだがカモがネギしょってやって来ることが多い。イナダはブリの幼魚で関東の呼び名だ。出世魚で大きくなるにつれて名が変わる。50cmくらいまでがイナダで、この上がワラサ、8キロを越えるとブリになる。学名はブリに変わりない。夕方さばいたのだが活きが良すぎて身がゴリゴリだった。このサイズは夏は脂のノリが今ひとつだが、秋になると腹の部分に脂が乗る。このイナダも十分だったがすぐに刺身で食えばガムみたいで噛むのが疲れる。一晩寝かせたほうが良いのだが、腹は食いたいモードに入っていた。薄作りにしてポン酢で食べれば歯ごたえを楽しめるが何となくつまらない。迷わずに半身に粗塩をべったりとまぶした。1時間そのままにして酢で締める事にした。昆布だしと自家製魚醤と酢を合わせたものに2時間浸して「シメブリ」にしたのだ。その間に寿司飯を作り、イナダの皮を指で剥いで適当な大きさに切り分けた。寿司飯をつまんで手の中で転がし、ネタとワサビを加えてにぎる。「いな~だの握り寿司」の完成だ。イナダを塩と酢で一工夫、食べやすくしたので「いな~だ」になったのだ。別に深い意味はない。夕食は寿司だけでシンプルなものになったが、イナダのゴリゴリの身は食べやすい歯ざわりで非常に旨かった。旨いものに集中するなら他の食い物はいらない。
マッタケとハモとアワビと伊勢海老とヒラメを同時に食いたいとは思わない。食材に対して失礼だ。ご馳走を節操もなく食い荒らせば、翌日は素材の味はよく覚えていないはずだ(笑)。人間はそれほど器用ではない。

