東シナ海流23 武術鍛錬2 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

飛行場は火山岩の大地の上にあり海が見渡せ、この飛行場の管制塔に3人が寝泊りしていた。


ラジオ体操を済ませいよいよ武術鍛錬が始まった。

各自が好きな武具を手にするのだが先が思いやられる。

まず農園の池ちゃんがヌンチャクを手に、「師範、お願いします!」と向かってきた。

まだ使い方も教えてはいないのに・・


池ちゃんは東京農大の柔道部出身で体格も立派だ。

しかし、自称「お坊ちゃま」で、野蛮な事に対しては「婆や」がうるさかったらしい。

仕方ない、面倒だが相手をした。手にしたのは一本の丈だった。


棒術は得意でこれがあれば何処から打ち込まれてもかわせる。

丈は3等分した位置を両手で軽く握る。自在に使いこなすと防御と攻撃が瞬時に出来る力学の傑作品だ。

池ちゃんはヌンチャクをブランブラン振り回していたが「ホチョ~!」と正面から打ち込んで来た。

丈で「コン!」とはじくと弧をかいて池ちゃんの脳天に「ゴン!」と当たってしまった。


アッゲ~~~!ビックリマークドクロ


・・・と悲鳴をあげてうずくまり、頭を掻きむしっていた。相当痛かったのだ。


気を取り直して再度構え、今度は横から振り回して来た。

地面に沈み込むようにして後ろ回し蹴りで彼の両足を払った。

彼の大きな身体は横になり地面に「ドン!」と・・倒れた。

それきり・・池ちゃんは鍛錬から身を引いた。


次は山本さんだった。

彼は木刀を選び正眼に構えた。昔に剣道をかじったらしい。

池ちゃんが脱落したのを見て

「本気で行くで~!ええのんか?」と言う。


「面でも胴でも突きでもどうぞ・・」と言うと・・


「ワイをなめとんな、スネでもかまわんかい?」


「武道の試合ならルールがあるけど、こりゃ武術ですから何でもアリ、木刀投げてもOK」


「よっしゃあ~後悔すなよ、怪我しても知らんで、ところで、反撃・・せんやろうなあ?」


「受けるだけ、心配無用、思い切りどうぞ」


彼の表情を見ると何やら企んでいるのがわかる。

いきなり「突き」が来た。


昨夜の包丁もそうだったが突きが好きな男だ。

軽く避けると今度は突きに行くと見せかけて木刀で足を払いに来た。

丈でコン!と受けて、その反動で片方の丈の端を彼の喉元の前で止めた。

山本さんは驚いていたが


「こりゃ・・あかん。練習しても無駄やなあ~、何年かかるかわからんわ」・・と、あっさりとあきらめた。


こうして、意気揚々と開始された「武術鍛錬」はわずか1時間で終わってしまった。

教える前に・・彼らは勝手に始めて勝手に去って行った。


それから、たまに一人で、広々とした飛行場で、棒術、ヌンチャク、トンファーなど練習していたが、見物していたのは孔雀だけだった。

声援も「アオ~!」としか言わないから気も散らない。


大学の時は棒術の鍛錬をすると見物人が集まった。野人独特の鍛錬をするからだ。

後輩に軟式野球部から軟球をどっさり持って来させ、校舎のコンクリートの壁の前に直径1mの円を描きその中で棒を構え、10mくらいの距離から思い切り投げさせる。

当たらないと判断すれば動かず、かすると判断すれば身体をわずかに逸らし、かわせなければ叩き落す。目をつぶらずに玉を見切る練習だ。

たまに軟球を顔の正面で受けるのだが、真芯で捉えずチップになると頭の横をかすって痛い。

テニスボールと違って軟球は当たると結構痛いのだ。


2球連続して投げさせたり、同時に投げさせたりしていると他のクラブの奴らが集まり、やがて面白がって投げて来た。

いっぺんにタマが・・たくさん・・


「バカタレ!やめんかい!」と怒鳴っても・・・

玉入れみたいに・・ポンポコポン音譜~って叫び


腹筋をバットで思い切り叩かせていた時も野次馬が寄って来た。

高い木の枝にコウモリみたいに何分も足だけで逆さにぶらさがり一回転して下りたり、砂丘をバック転で転げ下りたり、いつも一人で実戦的な鍛錬をしていた。

物理的な武術は創造性を豊かにする。


この島は静かだが何か物足りない。

孔雀以外では、たまに野生の山羊が集団で滑走路を横切って行った。