吐く息は白い。
「はぁい」
優しさの含まれている言葉に杏梨は笑顔だ。
「ゆきちゃん、ご飯食べた?」
雪哉を居間に通しながら聞く。
「まだなんだ 忙しくてね」
「良かった♪チキン、オーブンで焼いたの」
「すごくいい香りがすると思ったよ」
雪哉を座らせた杏梨はキッチンから焼きたてのチキンと野菜を持ってきた。
2人分の料理を見て雪哉が問いかけるような視線を向けた。
「わたしもまだなんだ♪香澄ちゃんが熱を出しちゃって・・・」
「そっか、ちょうど良かったよ 一緒にクリスマス・イブを祝おう」
杏梨がサイダーを注いだグラスを掲げる。
「うん♪メリークリスマス♪」
2人のグラスを合わせると美しい音色が響いた。
食べながら会話が弾む。
「ゆきちゃん、一緒に食事する人いなかったの?」
杏梨にとってはすごくうれしいことだが。
「まあね」
雪哉は言葉を濁した。
クリスマス・イブを過ごす特別な人。
杏梨以外思い浮かばない。
数人の女性から食事に誘われたが仕事は忙しかったし、誰よりも杏梨と過ごしたかった。
人が苦手な杏梨だから外でイブを過ごす事はまずないと思ったが、貴美香さんに電話をかけて確かめた。
だから杏梨の親友が熱を出して来られなくなった事は知っていた。
だが、夕食を食べ損ねていたのは杏梨らしいと心の中で笑った。
ケーキを取り分けている杏梨を眺める。
紺色のトレーナーにダボッとしたジーンズ、髪は短く、まるで男の子のようだ。
それでも雪哉はかまわなかった。
「どうぞ ゆきちゃん」
大きく取り分けたケーキを雪哉の前に置く。
そして自分の分も大きく取り分けた。
砂糖で出来たサンタクロースを自分のケーキの上に置きにこーっと笑う。
「どうせ食べられないんだろう?」
サンタクロースはもとより、動物で出来た砂糖菓子も可哀想で食べられない事を知っている。
「うん 見ているだけでいいの♪」
続く
今夜もう一回 更新します
モモ