ひとりの男性が隣の女性に、
「救急車を。」
女性、
「あ、はい。」
階段の踊り場で。
晄史、
「姉さんっ。高井戸さん。」
ようやく耀司、
「痛ってぇ~~~。」
気が付いた耀司。すぐさま、自分の顔のすぐ下にある睦美の顔に、目を丸くして、
「大丈夫ですか、睦美さん。」
その声にようやく気付く睦美。目を開けて、
「え…???…あ、あ~~。」
耀司、体を起こして、
「つぅ~~。ほぅ~~~。」
睦美、すぐさま、
「高井戸さんっ。高井戸さん。」
耀司、その場に膝まづいて、両目を閉じて、そして開けて、
「ほぉ~~~~。」
睦美、ゆっくりと。
晄史、誓、
「姉さん。」
「お義姉さん。」
他の人たちも、
「大丈夫ですか…???」
睦美、すぐさま体を起こして、
「私…。」
体中を…、あちこちと。
「なんとも…。」
その声に耀司、睦美を見て、
「ははは。良かった~~~。」
晄史、
「良かったじゃないですよ、高井戸さん、どこか…。」
瞬間、晄史、高井戸の左肩に手を。
耀司、
「痛っ。…くぅ~~~。」
耀司、晄史を見て、
「どうやら…、肩、やっちゃったみたいですね~~。」
晄史、ふぃに触れた手を引っ込めて、
「あ。ごめんなさい。」
睦美、膝まづいて、
「高井戸さん。肩…???」
晄史、周りに、
「誰か、救急車を。」
「あ。それならもう呼んでます。」
ロビーは既にかなりの人数が…。
耀司、そして晄史、誓が、その人物に顔を。耀司、その人物の顔を見て、
「もしかして…。」
晄史、
「河原崎栄伍(からわざきえいご)。」
誓も、
「河原崎栄伍…???」
階段の下にも群がっている。
河原崎、踊り場の方に歩み寄り、
「大丈夫ですか…???」
階段を見て、
「どうやら…。」
そして、
「今さっき、救急車は呼びました。」
後ろを振り返り。
女性も、コクリと頷き、
「もう間もなく、ここに…。」
晄史、
「あ、でも…。2時間ほど前にこの近くで事故が…。」
河原崎、
「大丈夫かとは、思いますが…。緊急車両ですから。…それはともかく…、おふたりとも、怪我…。」
そんな河原崎に耀司と晄史、そして誓、それぞれの頭の中に、
「…どうして…、この人が…???」
河原崎栄伍。タレント、俳優である。
昨今、ドラマや映画には出演はしていないが、
バラエティ番組やその他の特別番組などには引っ張りだこである。
レギュラーを数本掛け持ちしているという芸能人である。
恐らく、この人物目当てのロビーの混み様である。
踊り場に今度は座ったままで睦美、
「高井戸さん。」
その声に耀司、睦美を見て、
「ははははは。うん。睦美さん、何ともなくって。」
睦美、その声に、
「えぇ。」
誓、
「でも、お義姉さん。大丈夫って言っても…。」
耀司、自分から立ち上がろうと…。すると、今度は右足が…、
「あた。」
晄史、
「えっ…???」
誓、いきなり高井戸を見て、
「!!!」
耀司、
「あ、いや…。大丈夫です。少しチクンとしだけで…。」
その場で軽く、足踏み。
「うんうん。多分…、OK…???」
河原崎、
「…けど…。もう間もなく救急車。とにかく、病院へ。」
その内に、外で救急車のサイレンの音。
誓、
「あ、来た。」
河原崎の付き人のような…。女性が、救急隊の先導を。
晄史、
「高井戸さん。」
そして救急隊員に、階段から転がり落ちて。
晄史、高井戸を支えるように。
「とにかく高井戸さん。」
耀司、
「あぁ。あ~~。はい。」
誓は睦美を。
「お義姉さん、とにかく、大丈夫とは思うけど。高井戸さんと一緒に。」
そして救急隊員に、
「この人も落ちた当人です。どこもなんともないとは本人、言ってますけど。」
救急隊員、
「歩けますか…???」
睦美、
「えぇ。」
「とにかく、一緒にお願いします。」
睦美、どうしようもなく、
「えぇ。…あ、はい。…分かりました。」
耀司はストレッチャーに。そしてそれに付き添うように睦美が…。
晄史、救急隊員に、
「僕たち、後から追い駆けます。」
ストレッチャーはそのまま救急車に。
晄史、河原崎に一礼して、
「ありがとうございました。」
河原崎、微笑んで、
「いえいえ。お大事に。」
誓も、ペコリとお辞儀を。
晄史、誓に、
「タクシー、捕まえて。」
誓、
「あ、うん。」
「あ、それなら。ちょっと待って。」
河原崎の付き人らしき女性、スマホで。…そして…、
「えぇ。お願い。」
すぐさま駐車場の方から1台の車が。
女性、後部座席のドアを開けて、
「乗って頂戴。タクシー捕まえるよりこっちの方が遥かに早い。」
そして運転手に、
「菅波(すがなみ)君、あの救急車、追い駆けて頂戴。」
そして、
「くれぐれも、安全運転で。」
菅波と呼ばれた運転手、男性である。女性に、
「あ、はい。分っかりました。」
女性、
「お願いね。」
後部座席に晄史と誓、ふたりに、
「ありがとうございます。わざわざ車まで。」
「うんうんうん。すみません。甘えま~~す。」
救急車が出る。それに合わせて晄史と誓の乗った車も。
晄史、誓、
「おっと。」
「わっ。」
大通りに出て、そのままサイレンを鳴らしながら…。
運転手の男性、
「すみません、シートベルトお願いします。」
晄史、誓、
「あ。すみません。」
「あ、はい。」

ママでいい…。 vol,109. ひとりの男性が隣の女性に、「救急車を。」
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