車の中で七瀬、
「今頃…、あの子たち、気づいてるかな~~~???」
運転している賀寿恵も、
「もしかして…、会えてたりして…。」
「まっ。2か月振りに…、会ったか。」
そして、七瀬、
「かかかかか。」
その笑いに賀寿恵、思わず反応して、運転しながら、
「なんですか~~。おばさん。」
「こら~~。まだ今、勤務中~~。」
その声に賀寿恵、
「あ、はいはい。」
「それにしても、あなた、あれ…。まさか…。中学から空手習ってたなんてね~~。かかかかか。いやいやいや。あんときは、ほ~~んと。スッキリしたもんね~~。」
賀寿恵、ニコニコとしながらも、バックミラーを見ながら、
「今はもぅ~~。完璧に、護身術になってますけどね…。と、言いながら、社長も、行くとこ、行くとこ、私の事、連れてってくれてますけど~~。」
「そりゃそうでしょあなた。ただで自分の身を守ってくれるボディガード。手放す訳ないじゃない。それこそ安心この上なし。」
その話に賀寿恵、
「ははは。うん。まま。確かに。」
そしてハンドルを左に切る。
「それに…。社長がいないと、私も困りますから。」
「でっしょう~~。私がいなくて、あなた、うちの人と一緒にいてみなさい。何も話すこと、ないから。」
瞬間、賀寿恵、
「かかかかか。確かに。それは言える。5分…、持たない。かかかか。」
運転をしている賀寿恵、実は、記憶力や勘が鋭く酒豪である他にも、
外見からは全く想像も付かない、空手の黒帯の実力者でもある。
中学の時に、同級生の友達から誘われて仕方なく地元の空手道場に入門。
なにやら、友達が片思いしている男子がその空手道場で空手を習っている。
その友達にすれば、何とか近くにいたい。
…けれどもひとりで入門すると言う勇気が出ない。
お願いだから一緒に入門してと頼まれたのだった。所謂、不純な動機で…。
確かに。賀寿恵にとってすれば、幼なじみの大切な友達。断る事も出来ず…、渋々と…。
それに、事実、その友達の母親が両親の経営する店の店員であり、
父親さえも日々店に通う常連さん。両親たちも、すぐに飽きる。
と、高を括っていたのだが…。…事もあろうか賀寿恵、
いきなり頭角を現し、何と、入門2ヶ月で、高校生の黒帯を稽古ではありながら、
投げ飛ばしてしまったのである。つまり、中学1年生の女子、
しかも、空手のど素人が、高校生の黒帯、初段を稽古中にも関わらず、
技で投げ飛ばしてしまったのである。道場内が驚愕。
それからである。以後、出る試合、出る試合、優勝の連続。高校時代もそのまま…。
逆に部活の方から顧問までもが入部を懇願すると言う有様。
賀寿恵の学生時代には、そんな過去がある。
七瀬、
「まさかね。あなたが中、高と空手をやっていたとは。しかも出る試合、出る試合、優勝。そりゃ、店も繁盛する訳だ。かかかかか。…で…???…空手女子が住む家。そして店。試合に優勝する度にテレビや新聞にも取り上げられれば尚更…。注目される。」
そうなのだ。賀寿恵が空手で1度目の優勝では…。
…確かに。今まで無名の中学女子の優勝が世間では、「全くのまぐれ。」と、
歯牙にも掛けられなかった。…しかし、2度目の優勝から、いきなり注目されたのだった。
…けれども、その頃には既に賀寿恵は、空手道場の師範代から直に稽古を受け、
時には師範代を床に伏せる程までに、上達していた。
…因みに、空手道場に誘った幼なじみはそれ程上達する事はなかった。
…が、それでも、自分のために入門してくれた友達のために、何とか続けようと…、
挫折しそうにもなりながら、踏ん張っては、いた。
そして…、その友達のお目当ての男子は…、と言えば…。
当然ではあるが、2か月前に入門して、女子でありながらも、いきなり圧倒的な強さ。
その女子に圧倒され、賀寿恵の友達ではなく、賀寿恵本人に、逆にアプローチされ、
賀寿恵の方は困りつつ、後退さりするように、
「いえいえいえ。私ではなく、彼女が君の事を…。」と…。そんな…賀寿恵。
…けれども、そんな賀寿恵の心打ち。…実は…。当時の賀寿恵は…。
何と、全く男子には興味はなし。むしろ、料理作りと読書に熱中する中学女子だったのである。
読書熱は3歳の頃から。
その証拠に今も沖縄の実家の賀寿恵の部屋には窓以外は本棚が立ち並び、
さまざまな著者がビッシリと並べられている不思議な事に、ジャンルも問わない。
今も七瀬家の賀寿恵の部屋には、確かに、さまざまな著書が整理されている。
聞くところによれば…。賀寿恵、母親のお腹にいた頃から、母が本の読み聞かせをしていたとか…。
そのお蔭なのかは分からないが、赤ん坊の頃の賀寿恵、一切の夜泣きはなし。

好きになれない。 vol,045. 運転をしている賀寿恵、実は…。
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
