ここからは、引き続き、
私の2018年ストーリーをごらんください。
◆翻弄ではなく衝動の人生
3月は、もうひとつ、チャレンジがあった。
幼稚園の卒園式に、児童に配布するお菓子の小袋を、
120個、納品したのである。
「3〜4種類の焼き菓子を入れたので、
500個近く、焼きました。
箱詰めのときには、ジャザの生徒さんとか、
ジャザサイズスタジオのオーナーや
後輩のインストラクターも駆けつけてくれて、
みんなで、作業したんです」
裕子さんにとって、それは革命的なことだ。
人の助けを借りるとか、誰かに頼ることは、
「よくないこと」だと思ってきたから。
今までの裕子さんだったら、
「いいです、いいです!」って拒絶するか、
助けてくれた人への「お礼」なんかを考えて、
余計、いっぱいいっぱいになっていただろう。
「でも、みんなが私の性格をわかってくれていて、
『こっちはこっちで大丈夫だから、
裕子さんは裕子さんの仕事をして!』って(笑)。
しかも、終わった後はみんな、
『手伝えてよかった!』『役に立ててうれしい!』
『可愛くできたね!』『じゃあ、バイバイ!』って。
すごくありがたかったし、
これでいいんだ……!って思いました」
自分で、自分を、許した瞬間である。
彼女は長年、それができなかった。
ようやくつかんだ、ひとつ目のドラゴンボール。
「人と交わることが、
苦じゃなくなった気がします」
そこへ来て、ひとつの出逢いが訪れる。
「お出汁教室」。
料理嫌いの人でも、シンプルに、簡単に、
とても美味しいお出汁をとる方法を、
教えてまわっている女性との出逢いだ。
「どんなにズボラさんでもできる方法なんですよ。
これを知れば、ママたちは絶対、ホッとするはず!
そう確信したので、講座の直後に、直接、
『うちのお店で講座を開いてくれませんか?』って、
言いに行ったんです」
そのことが、とてもうれしかったのだと、
裕子さんは彼女から、後で聞かされることになる。
「実際、5月にその講座が実現したんですけど、
とてもいいお客さまに恵まれて。
会話がどんどんはずんで、楽しくて、
『この場所を作った裕子さんの人柄が表れてる』
『楽しかった!』って言っていただいて」
ちなみに、ちょうどその日は、ふっこさんの提案で、
大阪でのランチ会にシフォンケーキを発送する日だった。
徹夜でケーキを焼き、「お出汁教室」をやり仰せて、
しかも、ジャザサイズのレッスンも待っている。
「でも、全部、やり切りたかった。
それは若い頃、是が非でも海外へ行きたい!って、
万策を尽くした頃から変わらないです」
詳細は「ライフ・ストーリー」参照である。
「ずっと私は、そうだったなあと思って。
『あっ!』って思ったら、すぐ動く。
そこに、迷いも悩みもないんですよね。
本当にやりたいことは、絶対に譲れないし、
人がなんと言おうと、やるんですよ」
寺井裕子は、悩み、迷う人ではない。
「心の底からやりたいこと」にのみ、
突き動かされて生きる人だ。
人に請われたり、求められたりすると、
根が真面目なので、引き受けてしまって、
必要以上に頑張ってしまうけれど、
「心の底からやりたいこと」に関しては、
誰が何と言おうと、あるいは言うまいと、
まず、身体が先に反応してしまうし、
しかも底なしにタフで、疲れ知らずで、
どこまでも元気いっぱいなのである。
つまり、ここからの裕子さんに必要なのは、
「自分の心が何に突き動かされているか」あるいは、
「自分は今、突き動かされているかいないか」を、
常に把握するというプロセスだ。
ふたつ目の、ドラゴンボールである。
「逆に言うと、そういう状態じゃない時は、
誰のひと言も、誰かの仕草ひとつも、
気になってしまうんですよね。
『私が悪いんじゃないかな』って」
ここから、彼女の試練が静かに始まる。
ふっこさんの「ポジカル魅力開花グループコース」に、
えいやと、身を投じたのが4月のことだ。
「今まで、いろんな講座を受けたり、
免許を取るために勉強したけど、
どれも中途半端に終わっていたから、
家族には『これが最後だよ』って言われました。
『今年1年、頑張ってみて、
ダメだったら、店を閉じよう』と」
チャレンジは、すぐさま訪れた。
「グループコースの2日目に、ロールケーキをお持ちしたんです。
このロールケーキを売っていきたいんです、
このロールケーキが私の作品です!
っていう気持ちで持って行ったんですけど、
そこで、『シフォンケーキを焼いてみたら?』
っていうアイデアをいただいたんですね」
「焼ける?」と聞かれれば、
「焼けます!」と答えるのが寺井裕子である。
「もちろん、ふっこさんは、
『思いつきで言ったんだから、
やりたくなかったらやらなくていいよ』
って言ってくださったんです。
でも、シフォンにご期待いただくにつれて、
私も、後に引けなくなったというか」
プレーン、紅茶、抹茶、ココア、カフェオレ。
そのうち、安定してきれいに焼き上がるのは、
プレーンと、ココアの2種類だった。
「ふっこさんの大阪でのランチ会に、
私のシフォンケーキをお出しすることになって。
その後、行われた未来プロジェクトのセミナーで、
ふっこさんの好きな、お豆腐屋さんのシフォンと、
味比べをしてもらおう!って」
そのチャレンジは、
のちに対等の結果を導き出すのだけれど、
裕子さんにとっては、
それどころじゃないくらいの修羅場だったのだ。
「紅茶と抹茶とカフェオレが、
何度試しても、うまくいかない。
水分量を増やそうが減らそうが、
温度や型を変えてみようが、
焼いても焼いてもうまくいかなくて、
徹夜で工房にこもって、焼き続けて」
これが、前述の「お出汁教室」の日のことだ。
「徹夜でお出汁教室の日を迎えて、
お出汁教室を終えて、
やっとのことで、発送作業をして。
家のことはまるで何もできなかった」
私は、家族を犠牲にしてしまうのではないか。
そんな思いが宿ったのがこの頃だ。
「でも、そんなことを思ってしまうのは、
私の思い込みだったり、
被害妄想だったりするのかなとか。
メンタルを言われれば言われるほど、
『こんな考え方する私が悪いんだ』って」
いくつドラゴンボールを手に入れても、
思考のスパイラルというやつは、
ばっくりと口を開けて待っている。
「何を言われても、もやもや、もやもやして。
私は、人と関わって生きていたい。
でも、その方法がわからない。
だけどそれを教えてくださいってお願いすることは、
どうも『甘え』や『依存』であるらしい。
……こんな調子だから、いつもふっこさんには、
コトが終わってから相談してたんですよね」
「グループコースあるある」である。
シフォンケーキをめぐっては、
もうひと騒動あるのだけれど、
それはもう少し、先の話だ。













