【第1話・第3部 / 全4部】

仕掛けられたデータ改ざんの罠。浮き彫りになる夫の身勝手な散財


全社チャットでの「昭和型業務」公開暴露劇から数日。

社内での立場を狭められた大野恭子は、表面上は静かになったものの、その瞳の奥にはドス黒い執念の炎を燃やしていた。


この日は、役員および主要クライアントが参加する、秋の大型新商品「オーガニック・スムージー」のプレゼンテーション当日。

プレゼン資料の作成とデータ分析は、数字に強い新卒の蓮見陸が担当し、私が全体の進行と最終確認を行う手はずになっていた。


「美咲さん、プレゼン15分前よ? 大丈夫? 新人の蓮見くんに任せきりで、データに不備があったらチーム全体の責任になるわよ?」


会議室の前で、大野が嫌味なニヤケ顔を浮かべながら声をかけてきた。

「大丈夫です。昨晩、私と蓮見くんで何度も数値チェックをして、共有サーバーの最終ファイルに格納してありますから」


「ふーん……そう。ならいいんだけどねぇ」

大野は含みのある笑いを残し、悠然と会議室へ入っていった。その背中に、私は一瞬胸を騒がせる嫌な予感を覚えた。




プレゼン直前に消えた原価データ。忍び寄るお局の罠

プレゼン開始5分前。スクリーンにスライドを投影するため、蓮見が共有サーバーから提出用ファイルを開いた。

その瞬間、私の顔からすうっと血の気が引いた。


「……え? 何これ……!?」


昨晩あんなに完璧に作り上げたはずのスライドから、最も重要な「試算原価」と「売上予測グラフ」の数値がすべて無茶苦茶な数字に書き換わっていたのだ。利益率がマイナスになり、事業として到底成り立たない壊れたデータになっている。


役員たちが次々と席に着く中、席の後ろで大野が口元を歪めてこちらを見ていた。

「あらぁ? どうしたの美咲さん、顔色が悪いわよ? まさか、新人が作ったデータにミスがあったんじゃないでしょうね? だから言ったのよ、手作業で1枚ずつ確認しないからこんなことになるって!」


(大野さん……! あなたがサーバーのファイルを勝手に開いて数値を書き換えたの……!?)


証拠はない。だが、共有サーバーの編集権限を持っている人間の中で、こんな嫌がらせをするのは大野以外に考えられなかった。プレゼン開始まであと2分。絶体絶命の危機に、私の心臓は早鐘のように打ち鳴らされた。




「変更履歴、全部残ってますけど?」爆速復元と詰みの一手

「落ち着いてください、美咲さん」


パニックになりかけた私とは対照的に、蓮見の声は驚くほど冷静だった。彼は手元でキーボードを叩きながら、冷ややかな視線を大野へと向けた。


「社内サーバーのファイルはバージョン管理(変更履歴)を有効にしています。さらに、クラウド上のログには『いつ・どのIPアドレスの端末から・誰のアカウントで』変更が加えられたかがリアルタイムで記録される仕組みになっています」


「え……? 変更……履歴……?」


大野の顔から一瞬で笑みが消えた。


「はい。本日11時42分、大野さんの端末からこのファイルが開かれ、数値が意図的に書き換えられたログが残っています。復元は1秒で終わります。ついでに、このセキュリティ違反および業務妨害のログを役員全員にプレゼン冒頭で共有しましょうか?」


「ひっ……! や、やめなさいよ! ちょっと触っちゃっただけじゃない! 悪気なんて……!」


ガタガタと震え出す大野。蓮見はショートカットキーひとつで完璧なデータを画面に復元させると、何事もなかったかのようにプレゼンを開始した。

プレゼンは大成功。役員からも絶賛されたが、プレゼン中ずっと後ろの席で冷や汗を流しながら縮こまっていた大野の姿を、私は冷めた目で見つめていた。




疲弊して帰宅した先に待っていた、夫の『20万円の趣味買い物』

職場のドロドロした攻防をなんとか切り抜け、ヘトヘトになって帰宅したのは22時過ぎ。

玄関を開けると、廊下に巨大な段ボール箱がいくつも積み上げられていた。


「ただいま……和樹、この箱なぁに……?」


リビングに入ると、新しい高級ゴルフバッグとクラブのセットを嬉しそうに磨いている夫・和樹の姿があった。


「あ、美咲おかえり! 見てよこれ! 最新型のゴルフクラブセット! 今度上司とゴルフ行くことになってさ、形から入らないと示しがつかないじゃん?」


「……それ、いくらしたの?」


「ん? 20万くらいかな! 家計のカード使っといたからよろしくね〜。あ、俺お腹空いたからカップ麺作ってよ」


頭の中で、ブツンと何かが切れる音がした。

毎月カツカツの家計から、自分の趣味のために20万円を相談もなくカードで一括決済し、労いの言葉ひとつなく「カップ麺作って」。


「あなた……いい加減にしなさいよ!!」


私が生まれて初めて家の中で絶叫した瞬間だった――。




💬 管理人コラム

第1話の第3部をお読みいただき、ありがとうございます!

お局・大野さんのプレゼンデータ書き換え、完全に一線を越えてますね!犯罪レベルの嫌がらせですが、IT強者の蓮見くんの「ログ全部残ってますけど?」で一瞬で返り討ちにするシーンはスカッとしました!大野さん、顔面蒼白で震えててザマァみろです!😂


……しかし!問題は家です!使えない旦那・和樹が相談なしで20万円のゴルフバッグを家計カードで爆買い!?しかも「カップ麺作って」って……美咲さんの堪忍袋の緒が切れるのも当然です!!叫んで当然です!!怒


次回、【第1話・第4部(第1話完結)】では、ついに美咲が和樹に対して「家計の完全分離とペナルティ」を突きつけます!一方、会社では追い詰められた大野お局が、まさかの『パワハラ・イジメ被害者』として人事部に美咲と蓮見を訴え出る最悪の展開へ……!?第1話のクライマックスをお見逃しなく!


「美咲さん、もっと言ったれ!」「和樹からゴルフバッグ取り上げろ!」と思ってくださった方は、ぜひ『いいね』やコメントをお願いします!次回もお楽しみに!👇