kyupinの日記 気が向けば更新 -893ページ目

トリプタノール

一般名:アミトリプチリン

トリプタノールは代表的な3環系抗うつ剤の1つで、抗うつ剤の中では最強に属するものと考えられる。薬物プロフィールとしてはトリプタノールはセロトニン優位だが、体内で代謝されてノルトリプチリンになってしまうので複雑である。ノルトリプチリンは商品名はノリトレンで、これはノルアドレナリン優位である。全体のNAと5HTのバランスは微妙だが、いくらかノルアドレナリン優位と思われる。トリプタノールは半減期は8~24時間で作用時間は長い。代謝物のノリトレンの半減期もかなり長く18~96時間と言われており、トータルで考えて半減期の長い薬物といえる。トリプタノールはH1受容体阻害作用を持ち、眠さの副作用がみられる。3環系抗うつ剤で体重増加をきたすことがあるが、このH1受容体阻害作用が関係していると考えられている。また鎮静に関係するα1受容体阻害作用も強い。代謝活性物質のノリトレンはトリプタノールの欠点である口渇、便秘、起立性低血圧などの自律神経系の副作用は(トリプタノールに比較し)少ない。

 

パキシルなどの比較的効果が強いSSRIでうまくいかない場合、しばしばトリプタノールくらいまで行ってしまう。トリプタノールは「眠さ」という副作用があるため、これで効果的であったとしても、実用にならない場合もある。なぜなら、眠すぎると仕事にならないからである。これでは職場に復帰できない。僕は、アモキサン、アナフラニール、トフラニールくらいで治療していて、まあまあ良い治療状態だが、あと1歩と思われる時、トリプタノールに一部変えてみることがある。たいていトリプタノールへの変更のため、以前より良いと言われることが多い。トフラニール、アナフラニールくらいを支障なく服用できる人は、トリプタノールも大丈夫なことが多い。

 

意外なことに完全にトリプタノールに変更するのではなく、一部だけトリプタノールにしてほしいと言う希望の人がいる。なぜそうした方が良いのかよくわからないが、その方がバランスが良いのだと言う。だから、アモキサンとトリプタノールの2本立てという変な処方になってしまった。1人だけではなく、時々こういう人がいるということは、きっとその方が良いのだと思う。こんな変な処方はまぁ良いのだが、レセプトをチェックするドクターが専門医の場合、何を考えているんかな~と思われそうなのがちょっと。こういう処方は、抗精神病薬の場合もそうだけど、バカっぽく見えるのが辛い。

 

うちの病院はトリプタノールの10mg錠は置いておらず、25mg錠だけでやりくりしている。たいてい25mgか50mgでスタートし、150mgを目指す。75mgで十分良くなる場合はそのままだ。75mgはなんとか飲めても、100mg以上はきつさ、口渇、眠さなどの副作用で難しいということもある。尿閉が出ると、この症状を改善する気の利いた方法があまりないのと、仮にちょっと良くなったとしても本人の苦痛が大きいので、この薬を諦めることが多い。トリプタノールは、僕は最高225mgまで使用したことがあるが、これは本当にうまくいかなかった人で、普通は150mgぐらいを最高量にしている。はっきり言ってトリプタノールは150mgより多く使いたくはない。

 

トリプタノールは、本当に強い抗うつ剤なのだが、この薬で良くならない人も現実にはいるのである。トリプタノールでうまくいかない場合、他の抗うつ剤で使ったことがないようなものがある場合、順番に試してみる。トリプタノールは確かに強い抗うつ剤だが、人により個人差があり相性があるからだ。たいていの3環系抗うつ剤でうまくいかない場合で、病状が深刻な時は電撃療法を考慮する。医師によれば、とっくに電撃療法をする人もいるだろうが、ゆっくりした経過の場合は、薬で可能なら薬でやっていく方針ではある。

 

電撃療法は重いうつ病の患者にかける場合、非常に有効ではあるし長期的なデメリットがあまりないように見える。しかし電撃療法は永久には効かないので、いずれ薬物療法でコントロールしなければならない。いずれ薬物療法を考慮するなら、急いで電撃療法をするのではなく、なんとか薬物で頑張るべきだ。僕はそういうスタンスではある。期間をおいて電撃療法を繰り返す方法もあるが、僕はそんな方法は好きではない。それしか方法がないなら別だが。その時、電撃療法をしなければ、ちょっと目を離した隙に自殺してしまうような急を要するような患者の場合、電撃療法は十分な適応になる。なぜなら、もう薬物では間に合わないからだ。うつ病の自殺企図や、亜昏迷状態には電撃療法は奏功することが多い。今回は電撃療法の話ではないので、このくらいにしておきたい。

 

ごく最近、トリプタノールでまったく効果がないという患者さんに久しぶりに遭遇した。この患者さんはたいてい薬物はあまり効果がないか無効だったが、アンプリットがまあまあ良かった。アンプリットで軽快退院したが、こんなこともあるのである。アンプリットは面白い薬物でいずれ話したい。

(これは2000年頃にウエブにアップしたものをいくらか加筆、改変したものです)

エビリファイ(その3)

エビリファイは、2002年にアメリカでいち早く発売された。大塚製薬が開発したのにもかかわらず、日本ではなく先に海外で発売されているのである。エビリファイは、アメリカでは30mgまでの用量で使用されるが、時に45mgまで使用できる。けっこう評判が良く、売り上げを伸ばしているらしい。日本では24mgまでの処方で、時に30mgまでとされるが、アメリカとの差がさほど大きくないような感覚がある。エビリファイの薬効であるが、換算では24mgはコントミン600mgに相当すると言われる。セレネースだと12mgだ。日本の治験では、15mg程度使われたことが最も多かったらしい。だいたい治療域は6mg~24mg程度とされている。


最近、既に30~40人くらいの患者さんに処方しているが、あんがい少ない量でも薬効が大きいような気がし始めている。6mg追加処方しても全然違う場合がある。アメリカでは単剤で使用することが多いらしいので、置き換えてできるだけ単剤で行くように努力はしているが、今のところ単剤が実現した人は少ない。表情が明るくなると言うか、いかにも非定型という感触はあるが、効き方はジプレキサやセロクエルなどとだいぶん違うね。


ところで、未だに大塚製薬は全くといって良いほど宣伝をしていない。大塚製薬は今まで向精神薬を発売した経験がないので、ひょっとしたら慣れていないというか、どうしたら良いかわからないんじゃないの?と思ったりしていたが、最近ちょっと考えが変わった。発売直後は調査が義務付けられており、この時期、いらん宣伝をして、副作用(報告)がたくさん出てきたら非常に困る。つまり、9月頃まではじっとしていた方が会社としては利口なのだ。詳細な勉強会をして、比較的珍しい副作用まで意識されると、とうてい挙がらなかったかったであろう副作用報告も出てくる可能性がある。あまりにも副作用報告が多い場合、厚生労働省に心証が悪くなる。なんつったり。


服装

このところ、強烈な暑さが続いていたわけだが、さすがにちょっと夏バテ気味。先日、東京に行って暑い中、歩き回ったのも効いているような・・ 普段、僕は夏はケーシーを着ている。(ケーシーというのはブラックジャックが着ている半袖の白衣)これはランニングシャツにそのまま着れるので身軽でよい。下は普通のメンパン。病院に行く時は、ポロシャツとメンパンだ。最低限、Tシャツは着ていかない。なぜTシャツではダメなのかというと、急に措置入院とか鑑定で呼び出されることがあるから。例えば、警察署とか検察庁とか刑務所に行かねばならなくなるので、あまりにラフだとちょっと恥ずかしい。(まあ良いのかもしれないけどね。気にしない人もきっといると思う)


医師というのは年齢にも役職にもよるが、背広があまり必要ない職業なんだな。病院に限れば、スーツを着ていくことは春夏秋冬、ほとんどない。僕は季節により何組か持っていたが、年間に数回しか着ない感じだった。4年前くらいに院長になって、院長会なるものが時々あるので背広は以前より必要になった。背広というか、スーツあるいはジャケットなんだが、こういうフォーマルな場所に着ていくようになると、季節で変えないとおかしいので意外にお金がかかる。ネクタイも、いろいろ種類を揃えたり。僕は、エルメスの動物柄のネクタイに絞り数本買った。院長になってからも、スーツはあまり着ないのでもったいない感じだった。次第に慣れてくると、少しズルをしてあまりネクタイをしなくなった。ネクタイは素早くできないのだ。(慣れてないので、なかなか端が揃わない) 夏なら、ポロシャツ、パンツ、おとなしめのジャケット、くらい。


精神科医は全般に変わった人が多いのか、こういうフォーマルな場面でも中にズンだれた格好の人がいるので、この程度なら目立たない。院長会ならまだ良い。それなりに社会的地位もあるので、これはあまりにもという人は少ない。同門会や勉強会では、もっとちょっとひどい格好の人の頻度が増える。あんた、もうちっとマシな格好して来いよ。と言ったところ。しかしここがポイントだが、若い人の格好はそう変ではないのである。なぜかと言うと、あとで指導教官からいろいろ言われる可能性もあるので、わりと無難にしているから。若くて注目を集めるような妙な格好をしているのは、真に大物か、頭が逝っているかどちらかだろう。むしろ、年配の人に変な格好な人が目立つ。頻度的には。近年は比較的まともになったというか、普通の人が多くなった印象がある。そんな会があっても、雰囲気がそれほど変に感じないもの。


今の若い世代の人は古い人たちに比べ良くも悪くも個性がないと思う。精神科医でかなり経験があって、ズンだれた格好の人々(そう多くはない)だが、僕なりの考察を進めた結果、ある結論に達した。しかし、ここで話すのは自粛したい。


トフラニール

一般名:イミプラミン

半減期:9~20時間(未変化体) 代表的な3環系抗うつ剤のひとつ。うつ病の他、夜尿症などにも使用される。一般に、原因のはっきりしない疼痛はうつ状態が背景にあることがある。そのような痛みに試みる価値のある薬物でもある。しばしば、抗うつ剤の新薬の治験で2重盲検の対照薬物になっている。効果は強い方である。3環系抗うつ剤の中では眠さが比較的少ないという特徴がある。トフラニールは構造式がコントミンと良く似ている。もともとコントミンなどの抗精神病薬を作ろうとしていて、偶然発見された歴史を持つ。トフラニールはそれ自体バランスの良い薬物プロフィールを持つ。セロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害作用は五分五分である。しかし体内でデシプラミンに変化し、これは強いノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を持つ。したがって全体としては、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強くなっている。ドーパミンの再取り込み阻害作用はほとんどないか、わずかである。(日本ではデシプラミンは発売されていない。世界的にみても発売されている国は少ない)

 

ナルコレプシーという疾患があるが、これは睡眠発作などの特徴のある症状がある。ナルコレプシーを精神科外来で初診でみることは極めて稀である。睡眠外来などを専門を標榜している病院なら、わりと診るのかもしれないが。ナルコレプシーなど眠さを主訴に初診するように思えるが、実は必ずしもそうではなくて、意外に不眠を訴えて来院したりする。睡眠のバランスが崩れているためだ。そこで、うつ病と(誤診して)トフラニールなどを処方して、偶然、ナルコレプシーも良くなったりするらしい。これはけっこう有名な笑い話だったりする(過去形)。トフラニールは、ナルコレプシー、周期性傾眠症、夜尿など、精神科でも睡眠にまつわる疾患に親和性が高い。ナルコレプシーや周期性傾眠症など、いつも眠くなるような疾患に使えるところが、3環系でも比較的眠さが少ない薬物らしさが出ていると思う。

 

ところで、副作用だが一般の3環系抗うつ剤とあまり大きな相違がない。(口渇、便秘など) 現在、僕の患者さんでこの薬物を処方している人は、たった数人しかいない。数えたことがないのだが、おそらく10人もいない。一時、この薬物で治療していても、後にトリプタノールやアナフラニールに変えてしまったりするからだ。うつ病メインで治療している際に、トフラニールからトリプタノールに変更した場合、同じミリ数でも以前より良いという人が多いので、やはり薬効的には、トリプタノールの方がやや強いのかなと思う。しかし、アナフラニールやアモキサン程度なら、あまり差を感じない。

(これは2000年頃にウエブにアップしたものをいくらか加筆したものです)

 

デパス

一般名;エチゾラム

これはマイナートランキライザーで、吉冨薬品の自社製品。マイナートランキライザーのうち、純粋に日本製というのは少ないんじゃないのだろうか?日本製なので、特にアメリカに輸出していることもなく、日本でとても使われているわりに資料がない薬ではある。アメリカで発売されると、FDAが気合を入れて調査するのでエビデンスが充実する。アメリカでは、個々の薬剤について催奇形性などのランキングが公式に発表されており、非常に勉強になるというか医師からすると助かる。アメリカで発売されていないくらいなので、日本しか売られていない薬剤かと思っていたが、韓国でゾロが売られているという話もある。(未確認) デパス非常に安価な薬であり、以前はデパスにゾロがあるのが不思議でたまらなかった。(ゾロ=ジェネリック) しかし、このように安価な薬物でもゾロになると病院の納入価が正規品より安いので、意味があるのである。つまり定価からの値引率が大きい。これを薬価差益が大きいと言う。しかしなにしろデパスは安すぎるので、メチャクチャな量を処方しないと、元が取れないというか、ゾロを導入した甲斐がないのではないかと思われる。


さてデパスだが、0.5mg、1mgの2剤型があり、1mgが若干大きい。1日に0.5mg~せいぜい3mgまでが使用範囲であることが多い。もともとの薬効だが、不安といわゆる分裂病(統合失調症)の不眠に適応があった。今は、統合失調症の不眠と言っても、病名にこだわらず使用されるようになっている。つまり、デパスは昼も夜もいつでも使える薬剤なのである。抗不安作用はマイナートランキライザーの中では強い方で、眠さも慣れるとそれほどではなくなる。半減期が短い方であり、ハルシオンに見られるような健忘が出現することがある。筋弛緩作用もあり、時に老人の転倒や若い人でも階段で空足を踏むような影響が出ることがある。僕はデパスは一般科で使われ過ぎだと思う。筋弛緩作用が強調されて、肩こりなどに安易に使われている。デパスは、(精神的に)何もない人に使うには強すぎる。デパスは、ごく軽度のうつ状態に効果があるように見えるが、本格的うつ病にはほとんど効果がない。しかし、本格的なうつ状態にも、それに付随する恐怖、不安には上乗せで効果が期待できる。ちょっと不思議な作用ではある。


ところで、上に分裂病の不眠と書いたが、もともとこんな経緯があるのか1ヶ月処方が可能である。実は本邦では睡眠薬全般が管理を厳しくすべき薬剤の範疇に入れられており、たいていの睡眠薬は2週間処方までしかできない。しかしデパスは1ヶ月処方が可能なのである。ロヒプノールやハルシオンなどが2週間処方までしかできないのはなんとなくわかる。一方、アモバン、リスミーなどが1ヶ月処方可能なのがよくわからない。このあたりは、少し緩めてもらわないと臨床的にはちょっと困るルールなのである。今年の薬価改正時に、精神病院協会がすべての睡眠薬を1ヶ月処方できるように国にお願いを出していた。その後、処方できるようになったとか話を聞かないので、きっとアクセプトされなかったんだろうなと思う。僕は、デパスはあまり使わないタイプの精神科医に入る。最も使わないタイプくらいかもしれない。全然使わないってことはないけどね。