統合失調症治療の抗精神病薬最高量で効かない時の対処について | kyupinの日記 気が向けば更新

統合失調症治療の抗精神病薬最高量で効かない時の対処について

統合失調症の薬物治療の際、最初の抗精神病薬で経過が思わしくない際に、その薬が合っていれば増量することで対処する。その薬が合っているとは副作用がそれほどではなく、幻覚妄想が改善していることである。もちろん意欲が出るなど陰性症状が改善しているケースもある。

 

忍容性の関係で最高量まで増量できない人もいるが、今の非定型抗精神病薬は副作用が少ないので最高量まで処方できる人が多い。副作用的に最高量まで増やしにくい非定型抗精神病薬は、リスパダール(12㎎)くらいである。

 

これは合わないと思える時、増量途中で少量であれば急に中断することもないわけではないが、普通は漸減しながら次の抗精神病薬を追加しつつ変更する流れになる。この際に一時的に併用になるが、精神科医は併用の際のその人の病状の変化を目撃することになる。

 

かつて非定型抗精神病薬がリスパダール(リスペリドン)しかない時代は、次の薬はセレネース、コントミンなどの定型抗精神病薬だった。非定型抗精神病薬で良くならないなら定型抗精神病薬を処方するしかなかったのである。

 

現在は非定型抗精神病薬の種類が増えたので、次にトライする抗精神病薬も非定型抗精神病薬のことが多い。

 

現在、最初に統合失調症の患者さんに処方される非定型抗精神病薬は、おそらくエビリファイ(アリピプラゾール)かレキサルティではないかと思われる。なぜエビリファイやレキサルティが選ばれるかと言うと、長期的な副作用が少なそうに見えるからである。この副作用とは主にEPSである。EPSについては以下の記事を参照してほしい。

 

 

D2レセプターに対する遮断作用が大きければ大きいほど、今は見えなかったとしても、20年、30年経てば顕在化する副作用のリスクが高くなる。現在、長期入院患者さんが多い病棟では、抗精神病薬の負の遺産のような事例が散見されるため、その結果は証明されていると言える。

 

エビリファイはEPSは少ないが、アカシジアだけは結構頻度が高い。それでもEPSの長期的リスクは低く見える。レキサルティはD2遮断作用はエビリファイより高い分、幻覚妄想にはより効果的であるし、バランス的に洗練されている非定型抗精神病薬だと思う。

 

非定型精神病薬は、統計的にどれを選んでも効果に差がない。その意味ではどれを選んでもそれが悪い選択肢とはみなされない。そのようなことから、いかなる薬から始めるかは精神科医の好みも少し影響すると思われる。

 

最初に選択される薬として、エビリファイ及びレキサルティを除けば、ジプレキサ(オランザピン)、リスパダール(あるいはインヴェガ)なども挙げられると思われる。ジプレキサやリスパダールは急性期の陽性症状を治療する際、抗精神病作用の期待値が高いため選択されていると思う。手堅い選択である。

 

なぜジプレキサやリスパダールから開始されることが多いかと言うと、統合失調症の患者さんが初診した際、ターゲットは幻覚妄想が活発など陽性症状だからである。急性期でしかも症状が重い時、大量のエビリファイ(24㎎)かジプレキサかリスパダール(あるいはインヴェガ)が選択されることが多いと思う。

 

このような重い病状の初診時に、シクレスト、ラツーダ、ロナセン(ブロナンセリン)などから始める精神科医は、よほどその薬を使い慣れているか、第1感でその薬が良さそうに見えた時と思われる。これらの非定型抗精神病薬は、陽性症状への効果は決して劣ってはいないので、これらの処方が悪い選択肢とはみなされない。

 

治療が難しい統合失調症の患者さんにはクロザリルが選択されることもあるが、副作用的な問題で初診から処方されることはほとんどない。この薬は原則、入院させて処方開始せねばならないこともある。

 

さて、エビリファイやレキサルティを上限まで処方し、結果的に経過が良くない場合、他の非定型抗精神病薬に切り替えるが、近年は2nd選択がセレネースになることはまずないと思われる。

 

エビリファイかレキサルティが合わない際に、2番目に処方される薬は環境も選択肢に影響する。外来患者さんであれば、比較的軽い薬、ラツーダ、セロクエル(クエチアピン)、ロナセン、ルーランなども選択されうる。それは外来の時点で、それほど陽性症状が重い状態ではないこともあると思われる。いずれにせよ、ここで中途半端に併用にせず、どれか1剤で治療を試みるのが一般的である。

 

入院患者さんであれば、病状が重いことが多く、エビリファイないしレキサルティが効かない場合、たいてい、ジプレキサ、リスパダール(あるいはインヴェガ)、シクレストくらいが2nd選択になると思われる。その理由は、これらの薬は鎮静作用が大きいからである。ジプレキサは筋注製剤もあるほどである。

 

エビリファイやレキサルティでは忍容性的に最高量まで増量できないような人は、リスパダールやジプレキサを処方した場合、とんでもない近未来が予測できる。そのような人は侵襲の少ない薬が選択されることも多い。他のピンポイントタイプの薬である。

 

ピンポイントタイプではないが、セロクエルを少量から増量するなども選択されるであろう。セロクエル(クエチアピン)はたいていの薬が服用できない人でも、750㎎まで服用できることがある。700㎎まで処方すれば非力なセロクエルでも効果はまあまあである。

 

非定型抗精神病薬でことごとくうまくいかない場合、主に2つの手法があると思われる。1つは、非定型抗精神病薬の2剤併用、もう1つはセレネース、コントミンなどの旧来の定型抗精神病薬の単剤治療である。

 

おそらく長期的には前者が副作用的に優れるので、定型抗精神病薬の単剤治療をするくらいなら、非定型抗精神病薬の2剤治療の方が良い。

 

特殊なケースとして非定型+定型の併用治療もあるが、この組合わせは1剤がエビリファイの場合、定型1剤より優れている感覚がある。その理由は長期的なEPSの原因がD2レセプターの過度の遮断作用にあり、一方、エビリファイはD2親和性が特別に高く、たいていの定型抗精神病薬を押しのけるからだと思う。

 

エビリファイ+定型抗精神病薬は、エビリファイのD2部分アゴニスト作用と定型抗精神病薬のD2以外のレセプターへの作用の総和になっているように見える。これはひょっとしたがそう単純なものではないかもしれないが、エビリファイ+トロペロンの2剤併用ではそのように見えることが多い。

 

この考え方は非定型+非定型の2剤併用でも同様である。1剤にエビリファイがあれば、もう1つの非定型抗精神病薬の効果を修飾し、もしかしたら20~30年後の遅発性EPSを緩和できるかもしれない。このエビリファイを含む併用は相補的ともまた異なると思う。

 

例えば、年配の女性患者さんがセレネースを2㎎だけ長期的に処方されていて、口ジスキネジアやメージ症候群などが生じている際に、エビリファイ6㎎くらいに変更した際、十分に時間が経つと、全てそのような副作用がなくってしまうことがある。それらは決して非可逆性ではないことがわかる。また可能なら長期的なEPSを避けることが重要なことも理解できると思う。

 

理想は非定型抗精神病薬単剤治療が良いが、2剤にならざるを得ない際、単に抗精神病薬増量にならないような処方を心掛けるようにしている。2剤併用でも増量的な併用だと長期的な影響は予測しにくく、理想的ではないことがあるからである。