メマリーとセロクエル | kyupinの日記 気が向けば更新

メマリーとセロクエル

リエゾンなどで認知症の興奮に使われる鎮静的な向精神薬として、セロクエル(クエチアピン)、メマリー(メマンチン)、デパケン(バルプロ酸Na)などが挙げられるが、今回はこのうちセロクエルとメマリーについて。今回の記事はこれらの向精神薬はジェネリックの方が多く使われていると思うので、一般名で記載する。

 

クエチアピンは錐体外路症状が出にくい抗精神病薬なので、高齢者にも処方しやすい。どのくらいの用量が必要かは症状の規模と忍容性のバランスで決められるが、大量になることはあまりない。人によると12.5㎎くらいでも結構興奮が収まるからである。しかしクエチアピンの最大の難点は糖尿病に処方できないことである。

 

クエチアピンはその人を穏和にし、少量だけでも服用していることで施設などでトラブルが減少し職員も介護がしやすくなれば非常に有用と言える。

 

メマンチンもアルツハイマー型認知症に対する鎮静的な向精神薬だが、クエチアピンとは作用機序が異なり、あまり抗精神病薬っぽくない。メマンチンが鎮静的に作用するケースでは、線形に効果が増しているように見える。その理由は、5㎎だと少し効果が物足らないが、10㎎だとやや傾眠になる人もいるからである。そういうケースは10㎎から5㎎に減量することもある。

 

メマンチンのようなよくわからないような薬がここまで効くのは驚異的である。メマンチンは意味不明だが、よく効くのである。以下の過去ログも参照してほしい。

 

 

上の記事は8年前にアップした記事だがこの時の記載内容と今の感想はあまり変わらない。感想は以下である。

 

メマリーは感覚的には10人に6人くらいははっきりとした効果がある。経過が良い人は、非常におっとりし、穏やかな性格に変わったように見える。しかし、10人のうち1~3名は効果がなく、10人のうち1~2名はかえって興奮するなど病状が悪化する。

メマンチンは非常に興奮した認知症の人に使うとほとんど効果がない。どのレベルかというと、「1日中、大声で叫んでいるような人」である。それも腹の底から絞り出すような大声なので、病棟に着くと叫んでいるのがすぐにわかる。このような人はクエチアピン+バルプロ酸Naくらいで始める方が良い。なぜなら、この2剤にメマリーを使っても効果が弱い上に、どの程度効いているのかわかりにくいからである。

 

メマンチンは繊細な効き方をするので、直線的な効き方のバルプロ酸Naと併用すると、なんとなく効果が台無しになるところがある。しかし長期的、あるいは落ち着いてくれば、併用に意味がないわけではないし、実際に併用も自分でもしている。

 

内科医からの紹介やリエゾンなどで、既にメマンチンが処方されていることも結構ある。それも20㎎である。紹介された時点で、そのメマンチンは効いていないことがほとんど全てである。

 

自分にとってその20㎎処方は謎であり、しかも謎な点が2つある。1つはメマンチンは線形に効果が増す薬であり、時に多い量のために悪化させることもあるのにもかかわらず、判で押したように20㎎まで処方されていること。

 

もう1つは、なぜああも効いていないだろうと言うことである。メマンチンは上に書いたように病態によりタイミングが悪いと、効いているかどうか判断しにくい。メマンチンは主治医が症状を観察しながら増量しないとうまく噛み合わないのではないかと思ったりする。

 

このような興奮状態が著しい認知症の治療を依頼された場合、メマンチン20㎎はまず中止してみる。メマンチンは離脱症状がほとんど出ない薬なので容易に中止できる。また、この状況でメマンチンを中止しても何も変化がないことが多い。興奮が収まることもなければ悪化もない。メマンチンは精神症状が悪すぎる状況ではリストラされる薬なのである。

 

ここでドネペジル(アリセプト)との大きな違いは、ドネペジルは中止したために病状が改善することが少なからずあること。ドネペジルは精神を刺激して悪化させる面があるが、メマンチンはそれがほとんどない。そのようなことから、精神症状が悪化した場面ではドネペジルもリストラされやすい。基本的に、身体面の副作用(特に心臓)についてもドネペジルがメマンチンより遥かに大きい。

 

高齢の認知症以外の精神疾患、例えば統合失調症、器質性精神病状態の人たちに、メマンチンやクエチアピンを処方した場合、どのような差があるかというと、メマンチンの方が精神の深いところまで効いてるように見えることである。クエチアピンは浅い場所に効き、メマンチンはもう少し深遠で効果が繊細に見える。

 

どのような高齢者に処方するかといえば、他の患者さんとのトラブルが多い人、つまり些細なことで喧嘩をしやすい人たちである。このような人にクエチアピンを処方した場合、最悪、悪化もありうる。これは深い場所で仕事をしないことから来るのであろう。(もちろん普通に良いこともある)

 

メマンチンの場合、5㎎か10㎎程度で、人が変わったように穏やかになり、他人への過干渉や暴言(悪口など)が激減することがある。また病棟生活でも、細かいことに気が付いて手伝ってくれるなど、人そのものが変わったように見えることすらある。ある患者さんの家族によれば、「母親はあんな風ではなかったのに、とても優しくなりました」と話すほどである。この人の場合、10㎎だとオーバードーズ気味で、15㎎だと傾眠になるほどであった。だから5㎎使うか10㎎使うか、迷うのである。

 

このようなことから、内科で処方されている全然効いていない20㎎処方が謎に思えるのである。

 

今回の記事はやや抽象的だが、クエチアピンとメマンチンの相違がよくわかる話だと思う。