アンプリットとSSRI
ある日、まだ30歳代の女性患者さんが言った言葉である。
自分は本当に嫌な女だと思っていたけど、最近、それほどではないことに気が付きました。今は、わりと穏やかな性格だと思います。
ずっと長い間、そう思っていたので、自分がどんな性格だったのかすっかり忘れていました。
これは、長い時間をかけてパキシルからアンプリットに変更して数か月経った後に、出てきた話である。
過去ログに、SSRIはハードに切り込むタイプの薬であると記載している。このハードとは、厳しく、あるいは激しく切り込むという意味ではなく、ハードウェアのことである。(みな、わかっていたと思うけどね)
今までハードに切り込むタイプの薬と記載してきたもので、ハードウェア以外の意味では使ったことはない。この場合、切り込むと言いつつ可逆性要素を持つ。ハードウェアとはもちろん「脳」を指している。
「アンプリット100mgの女性 」から抜粋。
今年の年初の彼女の言葉。
性格が変わりましたね。執着心が強かったのに諦めが早いというか、「もういいか・・」と思う。いつも窮屈で精神的にきつかったのが随分楽になりました。昔は、約束事を忘れるとか到底できなかった。今は多少忘れたってたいして変わらないと思えるようになった。良い意味でです。そんな風でも世の中渡っていけるんだと思う。アンプリットは1日4錠が良いですね(100mg)。2錠より疲れた時のイライラ感がないです。
仕事は順調ですか?と問うと、
おかげさまで。不思議と仕事も多い。今日も仕事を残してここに来ている。(彼女は遠方に住んでいるため)
「いいや、明日すれば」と思う。
彼女の「まあ、いっか」の話だが、あたかも今もSSRIを服用しているかのような言葉である。これを見るとやはりSSRIはハードに切り込むタイプの薬物なのがわかる。SSRIを中止した後何年経っても、彼女の性格に好影響を与えている。
「ラミクタールと中毒疹の悲喜こもごも」から。
稀にだが、ラミクタールを使い始め、数回の服薬の後、中毒疹が発症し、その後中止したのにもかかわらず、好影響が残る人がいる。それも4回とか8回くらいしか服用していないのである。
ラミクタールは単独で使わず、他の薬と併用するが、中毒疹が出たからと言って全ての薬は中止しない。ここが悪性症候群への対応との大きな相違である(悪性症候群でもベンゾジアゼピンは残すケースもある)。
ある人は、ラミクタールをたった12.5㎎隔日で4回しか服用しなかった(のべ計8日間)。しかし、発病前に戻った思うほど、性格的にも疾患的にも若い頃にタイムスリップした。(本人の友人によれば20歳頃の彼女に戻ったという)
その人は4回だけでラミクタールは止めてしまった。しかし、止めてから2~3日後に中毒疹が発現したのである。これは離脱性かもしれないが、いずれにせよラミクタールが悪いことはほぼ間違いない。
その後、なぜかその良好な精神状態が維持されているのである。
こういうことを見ても、ラミクタールはハードに切り込むタイプであることがわかる。
「広汎性発達障害はなぜSSRIではうまくいかないのか? 」から
SSRIはうつ状態には効果が乏しく、マイナスの感情を改善する結果、うつ状態を改善するという意見がある。
この意見は、前半、後半ともおそらく誤りである。
広汎性発達障害の人でわりあいSSRIがフィットした場合、ロングフライトが生じる。この場合、一見、マイナス感情もほとんど消失しているように思われるのがミソである。これは治療範囲内に入るとも言える、ある種の軽微なアクチベーションであり、正常な治療状態とは異なっている。
これが正常でないことは時間が経てばわかる。
広汎性発達障害の人にSSRIを処方し、すぐに活動性が出て、とりあえず学校(会社)に行けるようになったり、それどころか新しく習い事を始めるとか、これは完治したのではないかと思うほど、様変わりすることがある。
これはおそらく、ある種の麻痺が生じているだけである、言い替えると、脳が痺れている感じ。
ところが、時間が経つと、きちんとSSRI服用しているのに、ネガティブ感情の連続、いわゆるネガティブのラッシュになる人が出てくる。ずっと行っていた学校や会社に再び行けなくなる。こういうネガティブ感情の出方を見ても、本質的にSSRIがマイナス感情を改善しないことがわかる。
なぜなら、広汎性発達障害の人はロングフライトの後、往々にしてポチャンと墜落することが多いからである。ただ、短期ではSSRIの良し悪しがわからない。時にフライトは2年間にも及ぶことがある。
SSRIは結局はマイナス感情をさほど改善しないが、うつ状態を改善しないわけではない。これはわりあい年配のうつ状態の人を治療して、ジェイゾロフトやパキシル、デプロメールで完全無欠と言うほど良くなる人がいることを見てもわかる。
SSRIはハードに切り込むタイプの薬物であり、ハードの健康状態、あるいは発達状態を選ぶのであろう。
だから、SSRIはマイナス感情を改善する結果、うつ状態を改善するという考え方は、臨床での印象を反映していない。たぶん間違っていると思う。そういう風に見えるとしたら、ただの統計の幻影である。(まさか1年後や2年後に墜落するとは思わないため)
合っているように見える時でさえ、SSRIがその人に良いかどうかは短期的には判別が難しい。それはセロトニンの作用が大きいリフレックスなども同様である。急激に希死念慮や衝動、暴力行為が悪化する人は明らかに合っていないと判断できるのであるが。
現代社会の日本人の広汎性発達障害のうつ状態やアパシーはセロトニンではなく、ノルアドレナリンとドパミンに働きかける薬の方がずっと合っている。
実は、ラミクタールのパラドックスにもそのことが映し出されていると思う。
(おわり)
自分は本当に嫌な女だと思っていたけど、最近、それほどではないことに気が付きました。今は、わりと穏やかな性格だと思います。
ずっと長い間、そう思っていたので、自分がどんな性格だったのかすっかり忘れていました。
これは、長い時間をかけてパキシルからアンプリットに変更して数か月経った後に、出てきた話である。
過去ログに、SSRIはハードに切り込むタイプの薬であると記載している。このハードとは、厳しく、あるいは激しく切り込むという意味ではなく、ハードウェアのことである。(みな、わかっていたと思うけどね)
今までハードに切り込むタイプの薬と記載してきたもので、ハードウェア以外の意味では使ったことはない。この場合、切り込むと言いつつ可逆性要素を持つ。ハードウェアとはもちろん「脳」を指している。
「アンプリット100mgの女性 」から抜粋。
今年の年初の彼女の言葉。
性格が変わりましたね。執着心が強かったのに諦めが早いというか、「もういいか・・」と思う。いつも窮屈で精神的にきつかったのが随分楽になりました。昔は、約束事を忘れるとか到底できなかった。今は多少忘れたってたいして変わらないと思えるようになった。良い意味でです。そんな風でも世の中渡っていけるんだと思う。アンプリットは1日4錠が良いですね(100mg)。2錠より疲れた時のイライラ感がないです。
仕事は順調ですか?と問うと、
おかげさまで。不思議と仕事も多い。今日も仕事を残してここに来ている。(彼女は遠方に住んでいるため)
「いいや、明日すれば」と思う。
彼女の「まあ、いっか」の話だが、あたかも今もSSRIを服用しているかのような言葉である。これを見るとやはりSSRIはハードに切り込むタイプの薬物なのがわかる。SSRIを中止した後何年経っても、彼女の性格に好影響を与えている。
「ラミクタールと中毒疹の悲喜こもごも」から。
稀にだが、ラミクタールを使い始め、数回の服薬の後、中毒疹が発症し、その後中止したのにもかかわらず、好影響が残る人がいる。それも4回とか8回くらいしか服用していないのである。
ラミクタールは単独で使わず、他の薬と併用するが、中毒疹が出たからと言って全ての薬は中止しない。ここが悪性症候群への対応との大きな相違である(悪性症候群でもベンゾジアゼピンは残すケースもある)。
ある人は、ラミクタールをたった12.5㎎隔日で4回しか服用しなかった(のべ計8日間)。しかし、発病前に戻った思うほど、性格的にも疾患的にも若い頃にタイムスリップした。(本人の友人によれば20歳頃の彼女に戻ったという)
その人は4回だけでラミクタールは止めてしまった。しかし、止めてから2~3日後に中毒疹が発現したのである。これは離脱性かもしれないが、いずれにせよラミクタールが悪いことはほぼ間違いない。
その後、なぜかその良好な精神状態が維持されているのである。
こういうことを見ても、ラミクタールはハードに切り込むタイプであることがわかる。
「広汎性発達障害はなぜSSRIではうまくいかないのか? 」から
SSRIはうつ状態には効果が乏しく、マイナスの感情を改善する結果、うつ状態を改善するという意見がある。
この意見は、前半、後半ともおそらく誤りである。
広汎性発達障害の人でわりあいSSRIがフィットした場合、ロングフライトが生じる。この場合、一見、マイナス感情もほとんど消失しているように思われるのがミソである。これは治療範囲内に入るとも言える、ある種の軽微なアクチベーションであり、正常な治療状態とは異なっている。
これが正常でないことは時間が経てばわかる。
広汎性発達障害の人にSSRIを処方し、すぐに活動性が出て、とりあえず学校(会社)に行けるようになったり、それどころか新しく習い事を始めるとか、これは完治したのではないかと思うほど、様変わりすることがある。
これはおそらく、ある種の麻痺が生じているだけである、言い替えると、脳が痺れている感じ。
ところが、時間が経つと、きちんとSSRI服用しているのに、ネガティブ感情の連続、いわゆるネガティブのラッシュになる人が出てくる。ずっと行っていた学校や会社に再び行けなくなる。こういうネガティブ感情の出方を見ても、本質的にSSRIがマイナス感情を改善しないことがわかる。
なぜなら、広汎性発達障害の人はロングフライトの後、往々にしてポチャンと墜落することが多いからである。ただ、短期ではSSRIの良し悪しがわからない。時にフライトは2年間にも及ぶことがある。
SSRIは結局はマイナス感情をさほど改善しないが、うつ状態を改善しないわけではない。これはわりあい年配のうつ状態の人を治療して、ジェイゾロフトやパキシル、デプロメールで完全無欠と言うほど良くなる人がいることを見てもわかる。
SSRIはハードに切り込むタイプの薬物であり、ハードの健康状態、あるいは発達状態を選ぶのであろう。
だから、SSRIはマイナス感情を改善する結果、うつ状態を改善するという考え方は、臨床での印象を反映していない。たぶん間違っていると思う。そういう風に見えるとしたら、ただの統計の幻影である。(まさか1年後や2年後に墜落するとは思わないため)
合っているように見える時でさえ、SSRIがその人に良いかどうかは短期的には判別が難しい。それはセロトニンの作用が大きいリフレックスなども同様である。急激に希死念慮や衝動、暴力行為が悪化する人は明らかに合っていないと判断できるのであるが。
現代社会の日本人の広汎性発達障害のうつ状態やアパシーはセロトニンではなく、ノルアドレナリンとドパミンに働きかける薬の方がずっと合っている。
実は、ラミクタールのパラドックスにもそのことが映し出されていると思う。
(おわり)