統合失調症と前立腺肥大症
精神科の臨床をしていると、統合失調症の男性患者さんにほとんどと言ってよいほど、前立腺肥大症が合併しないことに気づく。
しかし、うつ状態やうつ病、神経症の人では治療開始後に合併することもあるし、初診時に既に治療中の人もいる。
ここで重要なのは、既に前立腺肥大症が生じているケースでは、処方禁忌ないし慎重投与とされている抗うつ剤があること。例えばアナフラニールは尿閉を悪化させるため前立腺肥大症の人には禁忌である。サインバルタは、禁忌ではないが慎重投与となっている。
実は、昔の日本人は現在より前立腺肥大は多くなかったらしい。それはここ数十年の食事の西洋化にも関係しているという意見がある一方、そうではないという意見もある。
いずれにせよ、かつての日本人には、前立腺肥大になりにくい生物学的ないし食事を含めた生活環境があったようである。
統合失調症は普通、思春期からせいぜい30歳代、稀に40歳代に発病する精神病であり、前立腺肥大とは発症年齢がかなり異なっている。ということは、初診時に統合失調症と診断しても、年齢的に前立腺肥大はまだ生じていないのが普通である。
統合失調症の場合、抗精神病薬を服薬していない人のほうが稀なので、第一感としては、抗精神病薬の服用により前立腺の肥大を抑制しているのでは?という考え方が自然である。
実際、この考え方は合理的に説明できる。前立腺肥大の治療の1つに交感神経α1遮断薬、例えば、ハルナール、フリバス、エブランチル、ユリーフなどが処方されているからである。
元々、抗精神病薬はなにがしかのα1遮断作用を持つものが多いので、統合失調症の患者さんは若い頃から、既に前立腺肥大を抑える薬を飲み続けていることになる。だから、前立腺肥大症にほとんどならないのであろう。

上は、6年くらい前にアップした主な非定型精神病薬の薬物プロフィールであるが、たいていの薬でα1遮断作用を持つ。セロクエルはこの副作用のために、起立性低血圧が生じることがある(そのため、この記事はセロクエルのテーマに入れている。深い意味はない)。
統合失調症と前立腺肥大症と抗精神病薬を考えるに、1つの謎がある。
それは抗精神病薬による血中プロラクチンへの影響である。プロラクチン値の上昇は抗精神病薬の中でも特にドグマチールとリスパダールで生じやすい。プロラクチンが高くなると、女性では乳汁分泌、月経不順、無月経、不妊などが出現する。男性でも性機能障害(勃起障害、射精障害)が生じうる。
元々、プロラクチン自体は前立腺肥大の促進因子なのである。プロラクチンの値が高くなると、テストステロンの代謝物質であるジヒドロテストステロンが増加し、その結果、前立腺が肥大するメカニズムがある。
たぶん、前立腺はプロラクチンの上昇より、抗精神病薬のα1遮断作用の方がずっと影響が大きいのであろう。近年の抗精神病薬はたいしてプロラクチンを上昇させないのも関係がありそうである。
抗精神病薬のプラスもマイナスも含めた総合的な薬理作用により、統合失調症の人は前立腺肥大症になりにくいと思われる。なお、統合失調症の疾患特性として、これがあるのかどうかはよくわからない。
参考
高プロラクチン血症
リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎
統合失調症の人の癌の罹患率
統合失調症と痛みの感覚
統合失調症と加齢臭
しかし、うつ状態やうつ病、神経症の人では治療開始後に合併することもあるし、初診時に既に治療中の人もいる。
ここで重要なのは、既に前立腺肥大症が生じているケースでは、処方禁忌ないし慎重投与とされている抗うつ剤があること。例えばアナフラニールは尿閉を悪化させるため前立腺肥大症の人には禁忌である。サインバルタは、禁忌ではないが慎重投与となっている。
実は、昔の日本人は現在より前立腺肥大は多くなかったらしい。それはここ数十年の食事の西洋化にも関係しているという意見がある一方、そうではないという意見もある。
いずれにせよ、かつての日本人には、前立腺肥大になりにくい生物学的ないし食事を含めた生活環境があったようである。
統合失調症は普通、思春期からせいぜい30歳代、稀に40歳代に発病する精神病であり、前立腺肥大とは発症年齢がかなり異なっている。ということは、初診時に統合失調症と診断しても、年齢的に前立腺肥大はまだ生じていないのが普通である。
統合失調症の場合、抗精神病薬を服薬していない人のほうが稀なので、第一感としては、抗精神病薬の服用により前立腺の肥大を抑制しているのでは?という考え方が自然である。
実際、この考え方は合理的に説明できる。前立腺肥大の治療の1つに交感神経α1遮断薬、例えば、ハルナール、フリバス、エブランチル、ユリーフなどが処方されているからである。
元々、抗精神病薬はなにがしかのα1遮断作用を持つものが多いので、統合失調症の患者さんは若い頃から、既に前立腺肥大を抑える薬を飲み続けていることになる。だから、前立腺肥大症にほとんどならないのであろう。

上は、6年くらい前にアップした主な非定型精神病薬の薬物プロフィールであるが、たいていの薬でα1遮断作用を持つ。セロクエルはこの副作用のために、起立性低血圧が生じることがある(そのため、この記事はセロクエルのテーマに入れている。深い意味はない)。
統合失調症と前立腺肥大症と抗精神病薬を考えるに、1つの謎がある。
それは抗精神病薬による血中プロラクチンへの影響である。プロラクチン値の上昇は抗精神病薬の中でも特にドグマチールとリスパダールで生じやすい。プロラクチンが高くなると、女性では乳汁分泌、月経不順、無月経、不妊などが出現する。男性でも性機能障害(勃起障害、射精障害)が生じうる。
元々、プロラクチン自体は前立腺肥大の促進因子なのである。プロラクチンの値が高くなると、テストステロンの代謝物質であるジヒドロテストステロンが増加し、その結果、前立腺が肥大するメカニズムがある。
たぶん、前立腺はプロラクチンの上昇より、抗精神病薬のα1遮断作用の方がずっと影響が大きいのであろう。近年の抗精神病薬はたいしてプロラクチンを上昇させないのも関係がありそうである。
抗精神病薬のプラスもマイナスも含めた総合的な薬理作用により、統合失調症の人は前立腺肥大症になりにくいと思われる。なお、統合失調症の疾患特性として、これがあるのかどうかはよくわからない。
参考
高プロラクチン血症
リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎
統合失調症の人の癌の罹患率
統合失調症と痛みの感覚
統合失調症と加齢臭