PZCとクロフェクトン | kyupinの日記 気が向けば更新

PZCとクロフェクトン

今回は、前回の「双極性障害の周期的傾眠について(8)」の補足のエントリである。

過去ログ「ウェールズタイプの統合失調症の寛解」に出てくる年配の男性患者さんだが、薬を中止し約5年くらい経った時、よくわからない理由で再発が起こった。ある日、付き添いの人と一緒に再診したのである。

本人は、ただぼんやりとしており集中力が欠如していた。その時の病像を一言で言えば、軽い亜昏迷ないし困惑状態であった。簡単な話はある程度できるが、時々辻褄が合わないことがある。また空虚であり、表情がスッキリとしていない。

興奮はしておらず、何かを訴えるわけではなく、ずいぶん大人しい。

最も重要なことは、その時の病状が本人には全く洞察ができないこと。今、再発が起こっていることは本人にはわからないようなのである。

この病状だと、入院すべきかどうかは家庭環境など他の要因が考慮される。僕は入院させず、とりあえずPZCをもう一度飲んでみたらと勧めた。そのくらいの対応で良さそうに見えるのである。

本人にとっても入院しなくて良く、たった1錠(4mg)服用すればそれで良いなら悪い話ではないので、それで話がまとまった。

1ヵ月後に再診したところ、既に元に戻っていた。あの病態は簡単に収まったようであった。あの時に生じた病状はこれまでの病歴、服薬内容、診察時の精神所見から、十分に予想できる範囲のものである。

もう1人、過去ログには出てきていない女性患者さんの話。

彼女はうちの病院から50km以上遠方に自宅があった。彼女はたまたまだが、僕の研修医時代に助手をされていた医師が主治医であった。その病院の院長である。

なぜうちの病院に来たかと問うと、評判を聞いたからと言う。誰が言ったかと聞けば、どうも「外来人数の新記録」の後半に出てくる女性患者さんが勧めたようである。(最近、500km以上遠方の人が初診することがある。それどころか、その後、外来通院されるのが驚異。)

この女性患者さんは、非定型病像をかつて呈したことがあり、今ではクロフェクトン25mgのみ服用すれば良いくらいの人であった。かつて入院したことがあり、「その時の辛さは言葉に表現できない」と話していた。だから入院しなくても良いように、早く治療するためにここに来たという。

その時の病像は典型的な亜昏迷ではなく、不安、抑うつ、心気症のごった煮といった感じで、一時もじっとしておれないような状況であった。上で挙げた男性患者さんとは、洞察ができるかどうかの点で異なる。

僕はデパケンRとアンプリットを処方し、しばらくクロフェクトンと一緒に服用するように勧めた。

その結果、1ヶ月~2ヶ月くらいで寛解し、入院しなくても済んだのである。かろうじて、期待に応えられたといったところ。

彼女は元気になると、極めて活発に動けるようになった。家庭でも仕事でもバリバリ何でもこなせるようになったのである。

ウェールズの人と広汎性発達障害の人は同じライン上にいるのではないかと思う人もいるかもしれない。しかし、コミュニケーション、対人関係などの点でかなり異なっている。ウェールズの人は、女性であれば、PTAの役員を積極的にやるとか、友人が多く、その中でもまとめ役をいつも任されるとか、広汎性発達障害の人々には難しいか、あるいは避けるような仕事ができていることが多い。

その後、彼女はなだらかに薬を減量し、今はまたクロフェクトン25mgだけである。彼女の場合も、薬なしでやっていける時期があるのではないかと思う。

この2人の話で特に重要なことは、非定型精神病は気分安定化薬は重要であるが、必要不可欠とまでは言えないことであろう。


寛解すると、なんらかの賦活系抗精神病薬1剤で済むことがあるようなのである。

参考
人間の秘めたるエネルギーと治癒の謎(の後半)
躁うつ病は減っているのか?