リスパダールの脂溶性
日本で発売されている非定型抗精神病薬5剤のうち、最も高プロラクチン血症を来すのはリスパダールである。他の薬剤はプロラクチンがあまり上がらないか、上がっても一時的ですぐに下がると言われる。
リスパダールはD2受容体に強くしかも持続的に結合しているため高プロラクチン血症を来すと言われているが、実は他の要因もある。このエントリではこれについて取り上げたい。
脳は異物から保護されるシステムになっていて、血液中に有害物質が侵入しても容易に脳内に移行しない。このシステムを血液脳関門と言う。血液脳関門は、blood-brain barrier(BBB)と呼ばれ、中枢神経の毛細血管内皮細胞が関係しているなど諸説ある。このバリアは炎症が生じると崩れる傾向があり、脳内の感染症が起こった場合、通常はほとんど血液脳関門を超えて移行しない抗生剤もどんどん入れるようになるので、薬物治療的にはうまくできていると思う。これと似ているシステムを持つ組織に前立腺(参考)がある。
このように血液脳関門があるため、細菌やウイルスで身体はやられても、脳までは侵入を許さず保護される構造になっている。だから例えばインフルエンザが爆発的に流行ったとしても脳炎まで至る人は稀だ。そういう風に脳は守られているのである。
731部隊は第二次世界大戦中、中国大陸で細菌兵器開発のため人体実験をしていたと言われている。その際に、生体の髄液中に結核菌を入れるというような驚愕すべき実験をしたが、そういう方法では結核性髄膜炎は生じなかったという。脳内への細菌の感染(侵襲性)は、そういう経路とはおそらく異なるものなのであろう。
例えばヘルペスウイルスなどはありふれたウイルスであるが、神経親和性が高いもののヘルペス脳炎まで引き起こすことは非常に珍しい。ウイルスや細菌が血液脳関門を突破して感染症を起こすメカニズムは今もまだよくわかっていないのではないかと思う。
リスパダールであるが、たくさんの抗精神病薬の中でも脂溶性が低い方に入る。このため血液脳関門を超えて脳内に移行しにくい特性を持っている(リスパダールの代謝物も脂溶性が低く同じ特性を持つ)。従って脳内で有効な濃度を得るためには、末梢血液中ではかなりの血中濃度を維持せねばならなくなる。
またプロラクチンが分泌される下垂体は、一見そう見えないが、解剖学的には血液脳関門外に位置している。これはおそらく下垂体という組織はホルモンの分泌器官なので、血液脳関門内にあった場合、体の組織に移行しにくくなるからと思われる。下垂体はその役割から血液脳関門外にあった方が便利なのであろう。
このようなことから、リスパダールで治療している際、下垂体は高濃度リスパダールの空爆下に曝されていることがわかる。高濃度のリスパダールの影響を持続的に受けているため、高プロラクチン血症が生じやすいのである。
参考
プロラクチン血症
リスパダールはD2受容体に強くしかも持続的に結合しているため高プロラクチン血症を来すと言われているが、実は他の要因もある。このエントリではこれについて取り上げたい。
脳は異物から保護されるシステムになっていて、血液中に有害物質が侵入しても容易に脳内に移行しない。このシステムを血液脳関門と言う。血液脳関門は、blood-brain barrier(BBB)と呼ばれ、中枢神経の毛細血管内皮細胞が関係しているなど諸説ある。このバリアは炎症が生じると崩れる傾向があり、脳内の感染症が起こった場合、通常はほとんど血液脳関門を超えて移行しない抗生剤もどんどん入れるようになるので、薬物治療的にはうまくできていると思う。これと似ているシステムを持つ組織に前立腺(参考)がある。
このように血液脳関門があるため、細菌やウイルスで身体はやられても、脳までは侵入を許さず保護される構造になっている。だから例えばインフルエンザが爆発的に流行ったとしても脳炎まで至る人は稀だ。そういう風に脳は守られているのである。
731部隊は第二次世界大戦中、中国大陸で細菌兵器開発のため人体実験をしていたと言われている。その際に、生体の髄液中に結核菌を入れるというような驚愕すべき実験をしたが、そういう方法では結核性髄膜炎は生じなかったという。脳内への細菌の感染(侵襲性)は、そういう経路とはおそらく異なるものなのであろう。
例えばヘルペスウイルスなどはありふれたウイルスであるが、神経親和性が高いもののヘルペス脳炎まで引き起こすことは非常に珍しい。ウイルスや細菌が血液脳関門を突破して感染症を起こすメカニズムは今もまだよくわかっていないのではないかと思う。
リスパダールであるが、たくさんの抗精神病薬の中でも脂溶性が低い方に入る。このため血液脳関門を超えて脳内に移行しにくい特性を持っている(リスパダールの代謝物も脂溶性が低く同じ特性を持つ)。従って脳内で有効な濃度を得るためには、末梢血液中ではかなりの血中濃度を維持せねばならなくなる。
またプロラクチンが分泌される下垂体は、一見そう見えないが、解剖学的には血液脳関門外に位置している。これはおそらく下垂体という組織はホルモンの分泌器官なので、血液脳関門内にあった場合、体の組織に移行しにくくなるからと思われる。下垂体はその役割から血液脳関門外にあった方が便利なのであろう。
このようなことから、リスパダールで治療している際、下垂体は高濃度リスパダールの空爆下に曝されていることがわかる。高濃度のリスパダールの影響を持続的に受けているため、高プロラクチン血症が生じやすいのである。
参考
プロラクチン血症