「天国が見えた」その後 | kyupinの日記 気が向けば更新

「天国が見えた」その後

今日は、「天国が見えた」というエントリに出てきた男性患者さんの近況を紹介したい。最初、リスパダールとセレネースが多剤併用で処方されており、しかも幻覚妄想がたいして改善していなかった。今年の8月18日の最初のエントリから抜粋。

今、時々行っている病院で、多剤併用の男性患者さんを外来治療している。この人、数年くらい前はセレネース40mgの単剤で治療されていた。セレネース40mgは相当なものだが、単剤ならコントミン換算で2000mgとまだまだ上には上がいる。

僕が初めて診た時の処方
リスパダール  14mg
セレネース   12mg
レボトミン   200mg
デパケン    600mg


くらいでコントミン換算値が2200mg。これ以外に抗不安薬や眠剤、抗パーキンソン薬も併用されていている。この処方でもなお幻聴や幻視が活発にあり、落ち着いていないのである。しかし、それなりに定常状態にあり家庭療養は可能であった。

この患者さんは、リスパダール、セレネースがともに空振りに終わっている。最初、エビリファイが合うような感覚があったので、これを追加しつつセレネースを比較的速いスピードで減量していった。少し遅れ気味にリスパダールも漸減。そして数ヵ月後(8月頃)にはこのような処方になった。

エビリファイ  6mg
セレネース   6mg
リスパダール  9mg
レボトミン   200mg
デパケン    600mg
リボトリール   2mg
 (CP換算1550mg)


よく「コントミン換算値が1000mg」とか出てくるが、コントミンは1000mgも使わない薬物なので、「リスパダール換算」とか「セレネース換算」の方が実際の臨床ではリアリティがあると思う。コントミン1000mgとはすなわちリスパダール10mgなのである。

この患者さんの場合、減量を進めてもたいして幻覚が悪化しないかわりに良くもなっていなかった。いずれは幻覚妄想もなんとかしなくてはならない。カルテ見る限り、リスパダールやセレネースでは幻覚妄想を抑えるのは無理のように見える。無理なものを大量に処方しても副作用が増えるだけだ。

エビリファイの追加により、表情を改善しいくらか賦活していたが、幻覚妄想にはあまり効果的とは言えなかった。たぶん、エビリファイの最高量でも幻覚を止めるのは難しいだろうし、エビリファイ単剤だと、メジャー的な抑制が外れとてつもなく悪化する懸念もある。

セレネース、リスパダールの後継の定型あるいは非定型薬物が必要と思われた。かつてうつ状態もみられており、エビリファイとの併用ならトロペロンが良いと思った。これは僕なりに根拠というか考え方があるのであるが、ここでは長くなるので書かない。幻覚妄想についても、力価的にトロペロンはリスパダールに肉薄するので改善する可能性がある。うちの病院で、エビリファイにトロペロンを併用処方することで、何人か病状が改善していたことも決断の根拠であった。

最近の処方
エビリファイ  12mg
リスパダール  3mg
トロペロン   6mg
レボトミン   200mg
デパケン    600mg
(CP換算 1261mg=リスパダール12.6mg)


これ以外に眠剤、抗不安薬、抗パーキンソン薬、便秘薬を処方している。遂にリスパダール中止まであと一息になった。陽性症状が少し減少し、何より表情が明るくなりすっきりしている。実は前回診察時、リスパダールをオフにしようかとよっぽど思ったが、最近気温が下がってきたのでやめておいた。この季節は潜在的に悪化する要素があるので仕方がない。

リボトリールは意味がないと思ったのでリストラした。どうもデパケンも必要ないような気がするのだが、複数の変更を同時にするとわけがわからなくなるためまだ残している。この処方で体重も数ヶ月で5kgほど減少している。これはひょっとすると、リスパダール、レボトミン、デパケンを一掃すると20kgくらい減量できる可能性もあると思う。

最近、1週間の予定で家族と一緒に試行機で旅行に出かけたらしい。旅行は10数年ぶりくらいだったという。楽器も持って行き、その演奏についてずいぶん歓迎されたと母親も喜んでいた。なんと、周りの人たちにも病気だとは思われなかったようなのである。

本人と家族によれば、今も幻覚妄想は残っているが、少なくともイライラして大声を上げたり、あるいは全く入浴もしない状況はなくなっているらしい。総合的には今の処方はまあまあだ。

量的にも、重い患者さんとしてはシンプルな処方になってきている。こういう患者さんは定型薬を使わないと全般のレベルアップが難しいことが多い。