妄想と携帯履歴 | kyupinの日記 気が向けば更新

妄想と携帯履歴

ずっとセレネースで治療されていて、わりあい安定しているので薬を変えなかった外来患者さんがいた。彼の処方は、セレネースはまだ良いとして、アキネトンやアーテンが計9錠も出ていたので、これが気になっていた。

ある時、この抗パーキンソン薬を少しだけ減らしてみたところ、EPSがすぐに出てきて現実的には減量できないことが判明。なぜこんなに出ていたのかわかったよ。というか、これが少量の抗パーキンソン薬で済んでいるなら、安定しているし仕事もしているしで変更はしなかったと思う。

実際、3年以上は処方変更しなかったのである。ある時、なぜか振戦がさらに酷くなった時期があった。この機会に少しセレネースを減量し、思い切ってリスパダールに替えてみた。根本的にセレネースをやめないと話にならないと思ったのである。ジプレキサは非常に危険に思えたので、これへの変更はやめておいた。

リスパダール3mgくらいになった時であろうか、ある日、突如、妄想が再燃。

最悪。
ひょっとしたら、こんな結果になるんじゃないかと思ったよ。安全策をとり、リスパダールから処方したのがかえって裏目になってしまった。

彼によると、○○という男がガンガン電話をかけて来て、呼び出して覚せい剤を飲ませると言う。警察にも相談に行ったが、一応、話は聞いてもらったが、結局は相手にしてもらえなかったらしい。統合失調症の妄想はあまりにもリアリティがないことが多く、素人が聞いても容易に妄想だとわかる。それは基本的な統合失調症の妄想のクオリティなのである。(もちろん例外はある)

僕は、ちょっと思いついて、携帯の履歴を見せてくれと彼に頼んだ。彼は簡単に見せてくれた。

なんとその○○という男は、実際に履歴を見る限り、確かにガンガン電話をかけて来ているようなのであった。

ウソだろ~

ちょっと信じられないというかビックリであった。妄想自体はあまりにも荒唐無稽なので、間違いはないのであるが、「ガンガン電話をかけて来る」などは事実であった。

彼の場合、皮膚の色が浅黒くてきめも粗いので、思い切ってエビリファイに変更することにした。というか、ここまで悪いと入院治療も視野に入るし、かえって処方しやすかったことがある。手をこまねいていて、何か事件が起こってからでは遅い。

結果だが、エビリファイは結構効いたと言えた。たった6mgだけど。今はエビリファイ6mg、セレネース3mg程度で、妄想はほぼ消失している。

彼に、○○氏のことを聞いてみた。

彼によると、今は全然電話をかけて来ないのだという。履歴を見せてもらったら、確かにその通りだった。

彼はニコニコしながら、「本当に助かりました」なんて言っている。薬物治療のために症状が良くなったとは全く気づいていない。さすがだ・・

最近までいつも怒っているような顔つきだったが、今はかなり穏やかな表情になっている。エビリファイが半分以上占めると、振戦もかなり減少してきた。今は抗パーキンソン薬も少ししか残っていない。

しかし・・
一部、 どうも腑に落ちないのである。

あれは幻だったのか・・

参考
エビリファイが合う人、合わない人