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現実を直視するのが辛い時、人は自分に嘘をつく選択をします。現実にフィクションを混ぜて、自分の心にとって楽な世界を作り上げます。
これは奇妙な話です。嘘は、吐く人と吐かれる人とが分かれるから成立します。嘘だと解っている自分に吐いても、騙されるはずはありません。
けれども、人の心は器用なものです。知りたくない事実や現実、可能性については、ぼやかして焦点を合わせないようにします。その隙に都合の良いフィクションを、現実として思い込もうと努力するのです。
フィクションが現実から離れれば離れるほど、難易度が高くなります。より多くのぼやかしが要求されます。
特定の分野での部分的なフィクションであれば、普段は正気でいられます。その事に直面した時にだけ、心がぼやけます。
あまりに多くのフィクションを抱えてしまうと、普段から正気でいられなくなります。少しでも正気になってしまえば、辛い現実が見えてしまうからです。このような人は、いつも夢を見ているようにぼんやりとして、発言内容の辻褄も合わなくなっていきます。
事実と願望との区別がつかない状態は、狂気です。狂気は麻酔には使えても、何も問題を解決してはくれません。見ないようにした時点で、問題は未解決のまま保留され、負債として残るのです。
最終的に、自分で自分は騙せません。いくら誤魔化して現実から目を逸らしても、気付いていない訳ではありません。そもそも気付いているからこそ、目を逸らせます。
事実と異なるものは、現実との整合性が取れなくなります。フィクションの世界を守ろうとすれば、他の現実もフィクションに巻き込み、帳尻を合わせるしかありません。
それは正気を失い、狂気を招くのと同義です。狂気の世界が楽だと思ってはいけません。そこは楽園に見えて、単にそこにあるだけの現実に怯えて逃げ回る苦痛に満ちた世界です。自分に嘘をつくと、かえって追い込まれるのです。
人間の心は、大勢が何となく想定しているよりも、はるかに強靭です。潜在意識の不合理な恐怖心である異常反応がなければ、人は根底で正気です。加えて心の毒(苦痛)を溜め込まずに減らしていける素地があれば、現実は逃げるに値しません。
逃げて心の毒を溜め込んで現実とセットにしてしまうから、おぞましい化け物のようになるのです。
※異常反応
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