「ああ、よかった。無事に元の世界に帰って
来た」
「ハインリヒさん、すみません。私の手違い
で大変な思いをさせてしまいました」
「いや、おかげでボードゥアン4世について深
く理解することができた」
「僕はすっごく楽しかったです。ハインリヒ
様の違う面を見ることができて、ますます好
きになりました」
「私は少しヒヤヒヤした」
「大丈夫ですよ。ハインリヒ様の演技は完璧
でした」
「私の父フリードリヒ2世は語学が得意で
アラビア語もでき、異教徒の王と何度も手
紙のやり取りをして、ついには和平条約を
結ぶことに成功した。私は生きている時は
父を理解することができず、憎んでばかり
いた。だが、オンフロワと話をする中で、
父のことも少しは理解できるようになった」
「それはよかった。でもオンフロワさんが
王冠を受け取ったということは・・・大変
だ、ラパン、歴史が変わってしまう」
「バルさん、大丈夫です。歴史が変わること
はありません。オンフロワさんは結局王位を
辞退し、イザベルさんと別れさせられていま
す」
「そうなのか・・・」
「歴史は変わらなくても人々の意識は変わっ
ていく。そなたたちのおかげで、私にとって
ドン・グリがどれほど大切な存在かよくわか
った」
「ハインリヒ様にそんなこと言われるなんて
僕はもううれしくてうれしくて・・・」
「だが、気になることもあった。ウサ吉殿、
そなたは戦場で素晴らしい活躍をしていたが
ドン・グリについてはどう思った?正直に
答えて欲しい」
「戦闘能力ゼロ、動きの遅いリスを戦場に出
すのは極めて危険である」
「えー、そこまではっきり言わなくても」
「私も薄々感じていた。ドン・グリを鍛えな
いと何かあった時に危険だ。だが、私の傍に
いるとどうしても甘えてしまう」
「それならウサ吉の弟子になって私達と一緒
に旅をしませんか?」
「え、そんなーハインリヒ様と離れて暮らす
なんて、僕は耐えられない・・・」
「ずっと離れ離れになるわけではない。そな
たが旅に出て強くなって帰って来てくれたら
こんなうれしいことはない」
「わかりました。僕はハインリヒ様のために
強くなって帰ってきます」
「いい心がけだ。それならドン・グリ、さ
っそく先頭を歩いてくれないか」
「はい、師匠」
「おーい、ウサ吉、ラパンが倒れて動かな
くなっている」
「ああ、ラパンは大きな仕事をした後はい
つもこうなる。俺達とは比べ物にならない
ほど強い力を持っているが、力尽きるのも
早い」
「ラパンをどうするの?」
「しばらくすれば動き出すから心配しなく
ていい。それよりも俺はあのリスが心配だ。
振り返って戻ったら最後、泣き出してしば
らく動けなくなる。俺達は先に行っている」
「ハインリヒ様のためにも僕は強くなるん
だ・・・泣かないぞ!」
ー完ー






