さて、“ステージ催眠術師の通訳兼アシスタント”となった僕、熱いテレビのスタッフさんたちに支えられながら、本番収録の日に一歩ずつ近づいていきました。

 

前回にも書いたことですが、催眠術師の通訳とは、ただ催眠術師であるマーティンの英語を訳して日本人のタレントさんたちに伝えればいいわけではありませんでした。


なぜなら、TBSは僕らをオーディションする数ヶ月前にオーストラリアで専門の通訳を雇い、英語があまり話せない日本人を20名ほど集めて、実際にマーティンのステージ終演後に実験をしていたのです。

 

果たして通訳を介して、催眠術はかけられるのだろうか? 

 

そのとき通訳をされた人は、なんとオーストラリアに30年在住の日本人で、プロの通訳で、おまけにマーティンとは友達であり、マーティンのショウはもう何十回も観ているという、条件的にはうってつけの方だったのです。


でも、その実験の結果は失敗に終わりました。
20名の日本人は誰ひとり催眠術にかからなかったんです。

 

そんな経緯から、通訳としての語学力というよりも、多少はパフォーマンスができるような人ということで、英語の話せるタレントや俳優にオーディションの話がきたのでした。


そのオーディションに幸か不幸か僕が受かってしまったんです。
(この辺りは1回目のnoteに詳しく書きました)

 

 

本番まであと一週間というタイミングの頃でした。
僕らは大きな壁にぶち当たったんです。
エンターテイメントのステージングは、俳優である僕もマーティンと並んでステージ上でアシストできるとしても、催眠をかけるという最も重要な部分がクリアになってはいなかったんです。

 

催眠をかけるのは、とてもデリケートです。
被験者たちをリラックスさせ、ほんの数分という短い時間で心理的信頼関係を築いてつながっていく必要があります。

潜在意識という深層心理に語りかけていくような特別なものなのです。

それをマーティンが英語で話し、その横で僕が日本語に訳して伝えていく。
これでは雰囲気が作れないし、リラックスさせることも難しい。マーティンの英語と僕の日本語が交互に聴こえてくるようでは、言葉にも集中できないでしょう。

この問題を解消するために、打ち合わせを重ねました。
そして、この催眠をかける部分だけは、僕が通訳するのではなく、マーティンが日本語で語りかけるということに決まったんです。


僕は本番までの一週間で、マーティンに日本語を覚えさせなければならなくなりました。

催眠をかけるための日本語は、だいたい7、8分くらい。

原稿用紙2枚分くらいの量です。

催眠でまずは相手をリラックスさせるので、決して早口ではなく、ゆっくりと丁寧に語りかけていきます。
ゆっくりなのは助かりますが、丁寧に語りかけるとなると、誤魔化しが効かない。


僕はそのときマーティン一行が宿泊していた赤坂プリンスホテルに毎日通い詰め、さながらマーティンの日本語の家庭教師にでもなったみたいでした。

とにかく、番組を成功させなければ。

そのためには本番収録のステージ催眠ショウで、ひとりでも多くの日本のタレントさんたちが催眠にかからないといけない。


やれることはどんなことでもやる。
もう完全にいち通訳という役目を超えてマーティンと接し、TBSスタッフの人たちとも一緒に取り組んでいきました。

 

 

本番の前日。
僕らは明日のステージとなるTBS内で一番大きなスタジオに組まれたステージの上にいました。
そして、マーティンの日本語で催眠をかけるシーンのリハーサルをしたのです。

マーティンは持ち前の音感センスで、日本語がずいぶん上手になっていました。

しかし、その日本語で日本人に語りかけ催眠術をかけられるかというと、かなり難しいということになりました。
これは、TBS側の判断というより、マーティン自身が催眠をかけられるかどうかの手応えを基準にして判断を下したのでした。

「私は最初の1行だけ、絶対に完璧に覚えて言うから、そのあとはジョイが日本語で語りかければ大丈夫だ」


どこからそんな案が湧いてきて、しかもそれを大丈夫なんていうのか、その場にいた誰よりも驚いたのは僕でしたし、それが妥当案だとはとても思えなかったです。


でも、本番は明日。
時間的には、もう12時間を切っていました。

 

やれることはどんなことでもやる。

 

それがまさか、マーティンの代わりに催眠をかけるために日本語で語りかけることになるなんて、半年前のオーディションを受けていた自分に教えられたら、僕はスタコラ逃げていたと思います。

でも、やれることはどんなことでもやる、と約束したのです。
絶対に破ることのできない相手と。
僕は自分にそう約束してしまっていましたから、もうやるしかない。

いま思うと、この瞬間こそ、僕自身が誰よりも強烈な催眠にかかっていました。


「僕は明日の本番で、試したこともない催眠を同時に大勢の人たちにかけるのだ」という自己催眠状態になって、僕は深層心理でそれを固く信じてしまったのです。


それ以外に道がなかったからでしょう。
そうやって自分に言い聞かせなければ、そんな恐ろしいことなんてできません。

そもそも通訳でもない僕が、何十万人という人が観るであろうゴールデンタイムのテレビで通訳をする。

経験のないエンターテイメントを、錚々たる有名タレントたちの中でやる。それだけでも、かなりのプレッシャーなのに、最後のメガトン級のプレッシャーが僕に襲いかかってきたのでした。

 

そうして、本番を迎えたのです・・・・。

 

 

・・・さらに続きます。
是非、次も読んでください。 j

 

※この記事はnoteに書いているものです。

 

 

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ぜひnoteの方でも読んでみてください。

 

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※noteの感想はnoteの記事内に書いてくれると嬉しいです。

 

 

読んだよ〜、けっこう絶体絶命やん

 

 

 

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