心理カウンセラー・公認心理師の栗林あや(いがぐりこ)です。
以前、SNSを見ていたら、いつもつらい気持ちを発信している人の投稿が流れてきました。
「もう消えてしまいたい」「誰もわかってくれない」。
そういう言葉が、毎日のように続いてました。
その人にはファンがたくさんいて、投稿には、応援コメントがたくさん集まっていました。
「大丈夫だよ」「〇〇ちゃんの味方だよ」「私はここにいるよ」。
コメントを書いている人たちはみんな、ほんとうに心を込めて声をかけている様子でした。
私も心配で、つい、その人の投稿を見るようになりました。
でも、その人の投稿は、それから何ヶ月たっても、半年経っても、1年経っても、変わらず辛い気持ちが吐露されつづけていました。
それどころか、その人のところには、次から次へと、「えー!そんなことが起きるの?!」というような悲惨な出来事がやってきて、
つらさを訴える言葉や、周りの境遇を責める言葉が、どんどん強くなっていくように見えました。
これだけたくさんの人が励ましているのに、なぜ、この人はずっと同じつらさの中にいるんだろう・・・。
よくよく見ると、その応援のコメントの中には、その人と同じくらい、いや、その人以上に、
その人の辛さに共感する慰めの言葉や、その人の悲しませた相手を責める賛同のコメントが、たくさんついていました。
その時、私は
「周りの人たちがよかれと思ってやっている応援が、もしかして、逆にこの人を縛っているんじゃないか」
と、気づいてしまったのです。
そう思いながら見ていたら、なんだか心がざわざわしてきてしまって、
私は、その人の投稿を見るのをやめてしまいました。
それから数年経って、ふと思い出して、その人の投稿を見に行ったら、
変わらず、その人はその日も、辛い気持ちの投稿を続けていました。
ここで、励ましている人たちが悪い、と言いたいわけではありません。
私だって、つらそうな人を見たら、「大丈夫だよ」って声をかけたくなります。
ただ、たくさんの「わかるよ」「つらかったね」「それはひどかったね」が、ひとりの人にずっと集まり続けると、その人の中に、こんな気持ちが育っていくのかもしれません。
つらい自分でいるあいだだけ、みんながそばにいてくれる。
つらければつらいほど、たくさんの人から賛同が得られる。
元気になったら、この人たちは離れていくかもしれない。
そう感じてしまうと、つらい自分から抜け出すのが、だんだんこわくなっていく。
そして、どんどん、その人は不幸な状況から抜け出せなくなって、
応援という名の不幸の賛同コメントを養分にしながら、どんどん悲惨な状況に巻き込まれていく。
その場面を見ながら、そんなことを感じました。
もしかすると、今の時代のSNSって、そういう「つらければつらいほど、たくさんの人から賛同が得られる。」というループにハマりやすいのかもしれません。
私も、目の前の人がしんどそうな話をすると、つい、なんとかしてあげなきゃ、って思ってしまうことがありました。
その人の代わりに考えて手助けしたり、答えを出してあげたくなるのです。
もちろん、「わかるよ」「つらかったね」って悩みに共感したり、寄り添ったり、一緒に解決方法を考えることはとても大事なことだと思います。
でも、聞いても聞いても終わりが見えなくて、話を聞くたびに、こちらの心まで、どんどん重くなっていく。
もし、そんなふうになってきたら、ちょっと立ち止まった方がいい。
私が手助けしたり、先回りして答えを出してしまうと、その人が自分で考えて、自分で動き出す機会を、ごっそり奪ってしまう。
私が相手の悩みを代わりに背負ってしまうほど、その人は「自分で考えなくていい」状態に、とどまっていしまう。
悩みを聞き続ける私と、悩み続ける相手とが、おたがいに離れられなくなっていく。
こういう関係って、「共依存」って言われるけど、本当によくあることなんですよね。
カウンセラーの仕事を始めてからは、目の前の人に何かを言いたくなったときは、自分の中で一回、こう問いかけてから動くようにしています。
「これは、この人の力を信じている応援かな?」
「それとも、私がその人の悩みを、代わりに背負おうとしているだけかな?」
そう自分に確かめてみています。
相手に口を出したくなる気持ちをこらえて、その人が自分で答えにたどりつくのを、待てる時間が少しずつ増えました。
もちろん、完ぺきにできてるわけじゃ、ぜんぜんないんです。
今でも、つい相手に口を出したくなる日はあります。
ただ、先回りする前に、ちょっと立ち止まれるようになると、相手の気持ちを全部背負ってしまうしんどさが、かなり減ると思います。
私と同じように、誰かをずっと励まし続けて、自分のほうがしんどくなっている人って、けっこういるんじゃないかなぁ、って思います。
励まし方そのものが、間違っているわけじゃありません。
その励ましが、相手の力をちゃんと信じる応援になっているかな?っていうのは、大事なところだと思います。
ちょうどこの話、動画にしました。
よかったらみてみてください。
▼優しい人ほど相手をダメにする。共依存を強める「励まし方」【公認心理師が解説】
栗林あや(いがぐりこ)でした。
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