こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
早いもので、3月も半ばとなっていますね。
東京の桜は、3月18日ごろから開花し、25日頃からは満開になるのだとか。いよいよ、本格的な春の到来が期待できそうです。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は「肥満」、とくに「内臓脂肪型肥満」について、お話をしてみたいと思います。
現代の医学において、「肥満」は最も深刻な健康課題のひとつであるとされています。
WHO(世界保健機関)の報告では、世界中で成人の約39%が太り気味(過体重)であり、その割合は増え続けていることが報告されています。
「肥満」は単に「体重が重い」という問題ではなく、心臓病、糖尿病、がん、脳卒中といった命に関わる病気の引き金となり、年間約400万人の死に関与していると推定されています(参考1)。
そして、(繰り返しになるかもしれませんが)近年の医学の中で分かってきたことは、「どれくらい太っているか(量)」よりも「どこに脂肪がついているか(場所)」の方が重要であるということです。
どのようなことか?・・・と言いますと、お腹の中に脂肪が溜まる(たまる)「内臓脂肪型肥満」は、見た目以上に健康への悪影響が強いことが明らかになっています(参考2)。
これまでにも「内臓脂肪型肥満」は、「動脈硬化」や「糖尿病」を発症すやすくなり、また、それらの「病態」を悪化させることは、話題としてきたのですが・・・実は「内臓脂肪」の存在は、ヒトの寿命(じゅみょう)そのものを縮めて(ちぢめて)しまうわけですね。
体重(kg)を身長(m)の2乗で割った「BMI」と死亡率の関係を調べると、多くの研究で以下のような「J字型」のグラフになることが分かっています。
約90万人を対象とした解析では、「BMI」が22.5~25.0の範囲で最も死亡リスクが低く、そこから「BMI」が5上がるごとに死亡率は約1.3倍ずつ上昇します(参考3)。
特に若い世代や男性において、この傾向は顕著であると報告されています(参考4)。
BMIが30~35になると平均余命は2~4年、BMI 40~45では8~10年も短くなると推計されています。
なぜ、「内臓脂肪」は、命を短くしてしまうほど、「リスク」が高いものであるのか?・・・という話題になっていくわけですが、続きは後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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<ブログ後記>3月17日
今回は、「内臓脂肪型肥満」について、お話をさせていただきましたが・・・
「内臓脂肪型肥満」はなぜ、生命を脅かす(おびやかす)ほどリスクが高いのでしょうか?
その理由は、「内臓脂肪」は単なる脂肪の塊ではなく、全身の炎症や動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中リスクを高める多数の物質(アディポカインやサイトカイン)を分泌する「内分泌臓器」とみなされる・・・からという理由になります。その特徴をみますと、以下のようなものになります。
1)内臓脂肪は「活発すぎる」
内臓脂肪は、ホルモンなどの刺激に敏感で、脂肪を分解して「遊離脂肪酸」という物質を放出しやすい性質があります(参考5)。
2)肝臓への直行便
最も重要な点は、内臓脂肪が「門脈(もんみゃく)」という大きな血管を通じて、直接肝臓に繋がっていることです(参考6)。
内臓脂肪から漏れ出した脂肪分や炎症物質は、フィルターを通らずに直接肝臓を攻撃し、全身の代謝を狂わせます。
3)免疫細胞の巣窟
内臓脂肪の中には、免疫細胞(マクロファージ)が集まりやすく、そこが炎症の火種となります(参考7)。
若干、ファンタジックな見出しになってしまいましたが・・・
上記のような性質から、「内臓脂肪型肥満」の脂肪は、「毒を出す臓器」に変化するといっても過言ではありません。
以前は「内臓脂肪」は、単なる「エネルギーの貯蔵庫」だと以前は思われていました。
しかし、現在では、様々なホルモンを分泌する「人体最大の分泌臓器」であると考えられています。
例えば、「内臓脂肪」が溜まると、「ホルモン(アディポカイン)」のバランスが崩れ、低下することが分かっています(参考8)。
この「アディポカイン」は以下のことに深く関与するとされています。
1)糖代謝・インスリン感受性の調節
2)エネルギーバランスの維持
3)炎症・免疫応答の制御
4)血管機能・動脈硬化への影響
このように「アディポネクチン」は、 本来、ヒトの身体を良い状態に保つように働く善玉ホルモンですが、「内臓脂肪」が増えると逆に分泌が減ってしまうわけですね。
このことが、「動脈硬化」や「糖尿病」を加速させ、TNF-αやIL-6といった「炎症を引き起こす物質」であるサイトカインが大量に放出されます(参考9)。
そして、これらのサイトカインが血液に乗って全身を巡り、血管や臓器を傷つけます。
さらに「内臓脂肪型肥満」が寿命を縮める最大の特徴は,「慢性低グレード炎症」にあると言われています(参考10)。
このメカニズムは、次のようなものになります。
さらに過栄養により脂肪細胞が「トリグリセリド」を蓄積し、細胞が大きくなりすぎると(肥大化)しますと、これらの細胞が「低酸素状態(虚血)に陥ります(おちいります)。
そのような状態になりますと、脂肪細胞にアポトーシスなどの細胞死が起こり、細胞の内容物(脂質・DAMPsなど)が細胞外に漏出します。
これで終わりではなく、死んだ細胞を貪食しようと「M1型マクロファージ」が集まるということになります。
「M1型マクロファージ」 とは、免疫活性型のマクロファージでしたね。
なので、・・・「M1型マクロファージ」は、TNF-α、IL-6、IL-1βなどの炎症性サイトカインを大量に分泌します。これらが血液に乗って全身を巡り、血管や臓器を傷つけるとされています(参考11)。
こうしたことで起こる「免疫応答」が「慢性低グレード炎症」として、各種の臓器を障害していくわけですね。
少しだけ、大きい視点で見てみると・・・これら「炎症性サイトカイン」の高い状態が「細胞老化(セネセンス)」を促進することが多くの研究で示されています。
さらに周囲の細胞にも老化を波及させる因子と考えられています。
従って、これらを慢性的に上げる生活習慣や疾患(肥満・内臓脂肪・慢性感染など)は、老化スピードを高める方向に働く可能性が高いといえます。
実際にIL‑1βは、老化細胞が分泌するSASPの中核であり、周囲細胞を「老化細胞」を起こす鍵となる分子とされていますし(参考12)、
IL‑1βとTNF‑αは、ともに他臓器(脳・肝・椎間板など)の老化・機能低下を促進することが報告されているのですね(参考13,14)。
このような観点から考えますと、中年太り(内臓脂肪型肥満)であるにも関わらず、「健康長寿」を夢見ていることが
いかにナンセンスなことであるかがお分かりいただけるのではないかと思ったりもしますね。
今回も最後までお付き合い頂きまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Lancet Diabetes Endocrinol. 2018 Dec;6(12):944-953.
Association of BMI with overall and cause-specific mortality: a population-based cohort study of 3·6 million adults in the UK Krishnan Bhaskaranら
2)Lancet Diabetes Endocrinol. 2019 Sep;7(9):715-725.
Visceral and ectopic fat, atherosclerosis, and cardiometabolic disease: a position statement
lan J Neelandら
3)Lancet. 2009 Mar 28;373(9669):1083-96.
Body-mass index and cause-specific mortality in 900 000 adults: collaborative analyses of 57 prospective studies
Gary Whitlockら
4)Lancet. 2016 Aug 20;388(10046):776-86.
Body-mass index and all-cause mortality: individual-participant-data meta-analysis of 239 prospective studies in four continents
Emanuele Di Angelantoniaら
5)Front Cardiovasc Med . 2023 Jul 27:10:1187735.
Visceral adipose tissue and residual cardiovascular risk: a pathological link and new therapeutic options
Arturo Cesaroら
6)Diabetol Metab Syndr. 2011 Jun 22:3:12.
Visceral adiposity, insulin resistance and cancer risk
Claire L Donohoeら
7)J Clin Endocrinol Metab. 2004 Jun;89(6):2548-56.
Adipose tissue as an endocrine organ
Erin E Kershawら
8)Front Cardiovasc Med. 2020 Feb 25:7:22.
Adipose Tissue Distribution, Inflammation and Its Metabolic Consequences, Including Diabetes and Cardiovascular Disease
Alan Chaitら
9)Nutrients. 2020 May 3;12(5):1305.
Obesity, Bioactive Lipids, and Adipose Tissue Inflammation in Insulin Resistance
Iwona Kojtaら
10)Biomed Pap Med Fac Univ Palacky Olomouc Czech Repub. 2019 Feb;163(1):19-27.
Visceral fat and insulin resistance - what we know?
Karolina Janochovaら
11)Front Cardiovasc Med. 2020 Feb 25:7:22.
Adipose Tissue Distribution, Inflammation and Its Metabolic Consequences, Including Diabetes and Cardiovascular Disease
Alan Chaitら
12)Aging (Albany NY). 2012 Dec;4(12):932-51.
IL1- and TGFβ-Nox4 signaling, oxidative stress and DNA damage response are shared features of replicative, oncogene-induced, and drug-induced paracrine 'bystander senescence'
Sona Hubackovaら
13)Biomed Pharmacother . 2020 Nov:131:110660.
The role of IL-1β and TNF-α in intervertebral disc degeneration
Yongjie Wangら
14)Int J Mol Sci. 2023 Mar 9;24(6):5217.
Secretory Factors from Calcium-Sensing Receptor-Activated SW872 Pre-Adipocytes Induce Cellular Senescence and A Mitochondrial Fragmentation-Mediated Inflammatory Response in HepG2 Cells
Lautaro Briones-Suarezら
(夜の東京駅舎の風景)
(筆者撮影)
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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