こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

気持ちの良い青空が広がり、季節を先取りしたような陽気となっています。

春の陽気は、長い間、待ち望んでいたことで、なんとなく嬉しくなりますね。

『トム・ソーヤーの冒険』の作者である19世紀の小説家「マーク・トウェイン」は、次のような言葉を残しています。

 

"In the spring, I have counted 136 different kinds of weather inside of 24 hours." 

 

春には、24時間の中に136種類もの異なる天気を数えたことがある

 

彼は、米国のニューイングランド地方の気候が変わりやすいことを

スピーチの中で揶揄(やゆ)したそうです。

 

春の気候が不安定であることを誇張して強調する際に引用される言葉かもしれませんね。

 

確かに明日の夕方からは寒くなりまして 、雪がちらつくとか。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

今回は「線維筋痛症」などの痛みの治療にもつながる可能性があるかもしれない「慢性疼痛のメカニズム」について、お話をしてみたいと思います。

 

「痛み」は本来、体を守るための警告システムです。

 

しかし「慢性痛」では、痛み自体が病気となり、患者さんの生活の質を著しく低下させます。

 

最近の研究により、「痛みの増幅(ぞうふく)」には、末梢神経系と中枢神経系における免疫反応と、アストロサイトなどの「グリア細胞」の異常な活性化が深く関わっていることが分かってきました。

 

まず、末梢神経ですが・・. ・組織が損傷したり炎症が起きると、その場所で「免疫細胞」が活性化し、様々なサイトカインやケモカインを作り出します。

 

この免疫反応は本来、組織を修復するために必要なものですが、同時に痛みの感じ方を大きく変化させます。

マクロファージや肥満細胞などの「免疫細胞」は、損傷部位に素早く集まり、TNF-α、IL-1β、IL-6などの「炎症性サイトカイン」を放出します(参考1)。

 

 

これらの「炎症性サイトカイン」は、痛みを感じる神経線維に直接作用し、神経を興奮しやすい状態にします。

特に「TNF-α」は、神経細胞の表面にある「TNFR1(TNF受容体1型、CD120a)という受容体を通じて信号を伝え、ナトリウムチャネルやTRPV1チャネルの数を増やすとされています(参考2)。

 

 

TRPV1(トリップ・ブイワン)は、唐辛子(とうがらし)の辛み(からみ)の成分カプサイシンや43℃以上の熱、酸などを感知し、「熱い・痛い」という信号(侵害受容)に変換する細胞膜上のイオンチャンネルです。

 

侵害性刺激を「痛み」として感じる主要な感覚センサーであるので「TRPV1チャネル」の数を増やす結果、神経が反応する閾値が下がり、通常では痛みを感じないような弱い刺激でも痛みを感じるようになります。これが「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる現象です。

 

風が吹くなどの些細な刺激で、ヒリヒリ・ピリピリとした激しい痛みを感じるという症状が、この「アロディニア(異痛症)」と呼ばれる状態となります。

 

さらに「IL-1β」も強力な痛み増強作用を持っています。「IL-1β」は、IL-1受容体を通じてp38 MAPキナーゼ経路というものを活性化し、「プロスタグランジンE2(PGE2)」の産生を促進します(参考3)。

 

 

「PGE2」は痛みを感じる神経を敏感にし、痛覚過敏を引き起こします。さらにIL-1βは神経成長因子(NGF)の産生も増やし、これが長期的な「痛みの感作」に寄与します。

「痛みの感作」とは、長引く痛みや炎症により神経系(末梢または中枢)が過敏になり、通常なら「痛み」を感じにない弱い刺激でも痛みを感じたり、実際の組織損傷以上に強い痛みを感じたりする現象を指します。

 

(AIを用いて画像を作成)

 

次に神経障害性疼痛における免疫応答についてのお話をさせていただきたいと思います。

神経が損傷されると、より複雑な免疫反応が起こります。損傷された神経組織からは、「DAMPs(ダンプス:ダメージ関連分子パターン)」と呼ばれる内因性の危険信号が放出されます。

 

この、「DAMPs」は、細胞の損傷や細胞死に伴って細胞内から放出される分子群の総称ですが、これにはATP、HMGB1、熱ショックタンパク質などが含まれます(参考4)。

 

これらの「DAMPs」は、免疫細胞にある「パターン認識受容体(特にToll様受容体)」を活性化し、炎症反応を開始させます。

とくに「TLR4(Toll様受容体4)」の活性化は、神経障害性疼痛の発症と維持に重要な役割を果たすことが複数の研究で示されています

(参考5)。

 

神経損傷部位では、マクロファージの浸潤が顕著に認められます。

マクロファージはM1型(炎症促進型)とM2型(抗炎症型)に分類されますが、神経障害性疼痛の初期にはM1型マクロファージが優位となり、炎症性メディエーターを大量に産生します(参考6)。

 

この炎症環境が、損傷を免れた隣の神経線維まで敏感にし、痛みの範囲を広げると考えられています。

 

最近、このメカニズムに、獲得免疫、とくにT細胞が「慢性痛」に関わることが注目されています。神経損傷後、脊髄後角や後根神経節にT細胞が入り込むことが観察されています。

 

実際に「CD4陽性T細胞」と「CD8陽性T細胞」の両方が、痛覚過敏の維持に関与していることが動物実験で示されています(参考7)。

 

「T細胞」はIFN-γなどのサイトカインを産生し、これが「ミクログリア」や「アストロサイト」の活性化を促します。

 

また、T細胞由来のサイトカインは直接的に神経細胞の興奮性を調節することも報告されています。このように、自然免疫と適応免疫の両方が協力して、「痛み」を慢性化させる複雑なネットワークを形成します。

 

次にやっと「ミクログリア」や「アストロサイト」の話が出てくるわけですが・・・続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>2月17日

 

今回は、神経障害疼痛のお話をさせていただきました。

「痛み」は本来、体を守るための警告システムであるというお話を本文内でさせていただきましたが・・・

 

やはり、「痛み」が絶え間なく続いている「慢性の痛み(慢性疼痛)」は、「痛み」そのもの自体が病気となり、患者さんの生活の質を著しく低下させます。

 

ひとつの例が「線維筋痛症」であったりするわけです。

風があたってもガラスが刺さったような痛みに感じるというのは、まさに痛みの大きさが増幅されているように思います。

 

本文では、「末梢神経系」の領域の異常についての話であるわけですが、

損傷部位で発生するTNF-α、IL-1β、IL-6などのサイトカイン、また、

マクロファージ、CD4+T細胞(ヘルパーT細胞)、CD8+T細胞(細胞障害性T細胞)などと並べられますと・・・これは、何らかの「異常な免疫反応」が起きているのではないか?・・・と思えてきますよね。

 

多くの新しい用語にうんざりする方も多かったと思いますが、末梢神経では、炎症性サイトカインが放出され、何らかの「自己免疫反応(?)

」が起きている可能性があるわけです。

 

次に「中枢神経系」の領域に話を移しまして・・・「アストロサイト」が活性化して、痛みの増幅を起こすというお話をしてみたいと思います。

脳内(中枢神経系)に存在する最大のグリア細胞が「アストロサイト」というものになります。ギリシャ語で「星の細胞」を意味でして、多数の細い突起を広げ、脳全体に網目状に展開しています。

 

この「アストロサイト」は、以前のブログ内でもお話をしたことがあるかもしれません。

アストロサイトは、「神経細胞とは異なり電気信号を発生しないため、脳が働くために必要な情報伝達には関わっていない」と考えられ、その重要性が見過ごされてきた細胞となります。

 

その後、「アストロサイト」の四方八方に伸ばし突起は先端がシート状で、神経細胞同士の接合部位である「シナプス」と「脳血管」を覆っています。ヒトの「アストロサイト」は、1個あたり推定200万個以上のシナプスに関わっていると考えられているのですね。

 

また、「アストロサイト」は、「血管」と「神経細胞」の間を橋渡しし、血管からグルコースなどを取り込んで神経細胞へ渡す役割を持つとされます。

 

こうした多彩な機能を持つことから・・「アストロサイト」は、「脳内の環境調整役」などと呼ばれているわけです。

 

しかしながら、「神経損傷」がある状態では、「アストロサイト」は反応性の状態に変化し、「痛み」の増幅(ぞうふく)に積極的に関わるようになります。


とくに脊髄後角の「アストロサイト」は、末梢からの痛み刺激や炎症性メディエーターに反応して活性化します。

この活性化は「GFAP」というタンパク質の発現増加を特徴とし、形態的には細胞体が大きくなり突起が増えます(参考8)。

 

活性化したアストロサイトは、神経伝達の調節、炎症性メディエーターの産生、細胞外環境の変化など、複数の仕組みを通じて「痛覚伝達」を強めてしまうのだそうです。

 

・・・とここまでが、導入部分で、さらに「アストロサイト」の活性化は、しばしば「ミクログリア」の活性化と並行して起こります。実際、これらのグリア細胞間には密接なクロストークが存在し、互いに活性化を促進する・・・とい話になり、それは治療するには、どのような薬剤が最適か?・・・となっていくわけですが、

続きは、次週の話題にしたいと思います。

 

「難攻不落(なんこうふらく)の城を攻めて、完全に落とすには・・

・それなりの理論武装が必要なわけでして〜〜〜と言いながら、難しい用語に もう、ここでやめようかな〜〜〜とも思うわけですが、もう少しだけ話を進めたいと思います(本当は、ヘトヘトです笑い泣き

 

今回も最後までお付き合いいただき

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Trends Neurosci. 2001 Aug;24(8):450-5. 

Glial activation: a driving force for pathological pain  

LR watkinsら

 

2)J Neurosci. 2003 Apr 1;23(7):2517-21. 

Tumor necrosis factor-alpha induces mechanical allodynia after spinal nerve ligation by activation of p38 MAPK in primary sensory neurons  

Maria Schhafersら

 

3)Nature. 2001 Mar 22;410(6827):471-5. 

Interleukin-1beta-mediated induction of Cox-2 in the CNS contributes to inflammatory pain hypersensitivity   

T A Samedら

 

4)Sultan Qaboos Univ Med J. 2015 May;15(2)

The Role of Damage-Associated Molecular Patterns (DAMPs) in Human Diseases: Part II: DAMPs as diagnostics, prognostics and therapeutics in clinical medicine  

Walter G Land

 

5)Brain Behav Immun. 2010 Jan;24(1):83-95. 

Evidence that opioids may have toll-like receptor 4 and MD-2 effects

Mark R Hutchosonら

 

6)Nat Commun. 2020 Jan 14;11(1):264. 

Dorsal root ganglion macrophages contribute to both the initiation and persistence of neuropathic pain 

Xiaobing Yuら

 

7)J Neurosci. 2009 Nov 18;29(46):14415-22. 

T-cell infiltration and signaling in the adult dorsal spinal cord is a major contributor to neuropathic pain-like hypersensitivity

Michael Costiganら

 

8)Acta Neuropathol. 2010 Jan;119(1):7-35. 

Astrocytes: biology and pathology   

 Michael V sofroniewら

 

(ミッドタウン東京:水の湧き出る風景)

(筆者撮影)

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理事長・ 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

(業績)

 

 

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