こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
暦に二十四節気では、すでに「小雪(しょうせつ)」となっています。
静かに冬の到来を告げる雪が降るはじめる頃とされていますが、雪までは降らないとしても、音もなく小雨(こさめ)が降っていることに
気がつくことも多くなりました。
冬の初めに、降ったかと思うと晴れ、また降りだし、短時間で目まぐるしく変わる通り雨。この雨が徐々に自然界の色を消していくなどとも言われていますね。
先人達は、さびれゆくものの中に、美しさと無常の心を養ってきたのだとか。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(AIを用いて作成)
前回は「血管再生医療」とは、どのようなものか?・・・という話題をご紹介したのですが、今回は「皮膚」のコンディションを整える(ととのえる)因子について、お話をしてみたいと思います・
実は・・・「皮膚」は最大の臓器でありまして、神経・免疫・内分泌が相互に結び付く「NICE(Neuro-Immuno-Cutaneous-Endocrine)ネットワーク」を備えていることが知られています
さらに表皮層にある「角化細胞(ケラチノサイト)」の増殖と分化=「ターンオーバー」は、細胞内プログラムだけでなく、
概日リズム(サーカディアンリズム)と連動して動く
「皮膚のサーカディアン時計」と全身の「ホルモン」により多層的に制御(せいぎょ)されていることが知られています(参考1)
皮膚の「ターンオーバー」とは、皮膚の表皮が新しく生まれ変わる周期的なプロセスのことでしたね。
表皮の最も深い層(基底層)で新しい皮膚細胞が生まれ、徐々に上の層へと押し上げられていきます。この過程で細胞は変化し、最終的には角質となって表面に到達し、自然に剥がれ落ちるというものでしたね。
(AIを用いて作成)
「サーカディアンリズム(概日リズム)」のマスタークロック(中枢時計)は、脳の視床下部にある「視交叉上核(SCN)」という部分にありました。
そして、「視交叉上核(SCN)」には、「時計遺伝子」というものが存在していました。
「時計遺伝子」には、以下のようなものがあります:
ポジティブ因子(転写を促進)
- CLOCK(Circadian Locomotor Output Cycles Kaput)
- BMAL1(Brain and Muscle ARNT-Like 1)
ネガティブ因子(転写を抑制)
- PER1, PER2, PER3(Period)
- CRY1, CRY2(Cryptochrome)
「時間治療(クロノセラピー)」とは、どのようなものなのでしょうか?
「クロノセラピー(Chronotherapy)」とは、「サーカディアンリズム」 に合わせて治療や薬の投与時間を最適化することで、効果を最大化し副作用を最小化する治療法のことです。
皮膚においては、皮膚細胞が持つ固有の体内時計のリズムに合わせてスキンケアや治療を行うアプローチです。
皮膚には独自の「サーカディアンリズム」があり、時間帯によって異なる機能を発揮するのだそうです。具体的には
○日中(防御モード)
- 紫外線からの保護機能が高まる
- 皮膚バリア機能が最大化
- 経表皮水分蒸散量(TEWL)が低い
●夜間(修復・再生モード)(参考4)
- DNA修復活動が夜間にピークを迎える
- 細胞分裂は夜中にピーク達する
- DNA合成(S期)にピーク
- 皮膚の透過性が増加し、午後9時から深夜にかけて成分の吸収が最も効果的になる
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<ブログ後記> 11月28日
今回は「皮膚」と「サーカディアンリズム(概日リズム)」の関係について、お話をさせていただきました。
なんとなく、そうではないか?・・・と私は思っておりましたが、やはり、そうであったか・・・とあらためて、納得(なっとく)した次第です。
本文でもお話をしたように・・・
皮膚の「再生」には、とりわけ「サーカディアンリズム」は重要な役割を果たしていると報告されていまして、
具体的な年齢は、示されていないのですが・・・加齢した皮膚の「幹細胞」においては、日々のリズムの変化が皮膚の「再生」に悪影響を及ぼすことが報告されています(参考5)。
実際に・・・皮膚の「サーカディアンリズム」は、DNA修復、細胞増殖、アポトーシス、炎症反応、酸化ストレス、
および、ホルモンシグナル伝達を調節することにより、紫外線の一部で誘発されるDNA損傷の管理に重要な役割を
果たしているという報告もあります(参考6)。
では、多くの細胞が産生されるもとになる皮膚の「幹細胞」は「サーカディアンリズム」の支配を受けるのでしょうか?
皮膚の「幹細胞」には、「表皮幹細胞(ひょうひかんさいぼう)」」や「毛包幹細胞(もうほうかんさいぼう)などが
あるのですが、これらの「幹細胞」は・・・
やはり、24時間周期の「サーカディアンリズム」に従って、増殖・分化・DNA修復などの機能を時間帯ごとに最適化していることが知られています。
皮膚「幹細胞」に存在する時計遺伝子(BMAL1, CLOCK, PER, CRYなど)は、日中と夜間で異なる遺伝子発現パターンを
作り出し、紫外線防御や増殖、分化のタイミングを制御します。
そして、「サーカディアンリズム」が乱れますと・・・幹細胞の再生能力が、極端に(きょくたんに)低下し、老化や発がんリスクが高まることも報告されています(参考7)
また、「サーカディアンリズム」は、表皮幹細胞の増殖を調節し、DNA損傷と皮膚の老化を最小限に抑えますが、
それを乱すと酸化的DNA損傷や機能障害を引き起こす可能性があると報告されています(参考8)。
このなかで、「BMAL1遺伝子」は、「ROMO1遺伝子」と「活性酸素」などの酸化ストレスを調節することにより
皮膚の治癒に重要な役割を果たしており、その欠乏はマウスにおいて治癒の遅延を引き起こすとされています。
また、「皮膚のターンオーバー」についてですが、シフトワークや夜間の光暴露などでリズムが乱れると、「ターンオーバー」の周期が崩れ、「バリア機能」の低下、「老化」の促進、炎症や皮膚疾患のリスク増加が報告されています。
このように皮膚の「幹細胞」や皮膚真皮層のコラーゲン、エラスチンを産生する「線維芽細胞」ばかりでなく、
「皮膚のターンオーバー」さえも、「サーカディアンリズム」を作り出している「時計遺伝子」の精密な制御(せいみつなせいぎょ)
によって、日中は防御、夜間は修復・再生が最適化されるよう調節されているというのですから・・・かなり、驚きます。
幹細胞やその由来成分(エクソソーム)、光線治療、バイオマテリアル、植物成分など、多様なアプローチが皮膚幹細胞・線維芽細胞・ターンオーバー維持に有効である可能性を示す論文が多数存在します。
では、 皮膚の幹細胞、線維芽細胞、「ターンオーバー」を良好に保つための具体的で、かつ、有効な治療法とは、存在するのでしょうか?
実は、その有効性を示す論文は、多数、存在します。一部をご紹介すると・・・次のようなものになります。
【1】「脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)」
【2】「iPS細胞由来エクソソーム」
これらは、線維芽細胞の増殖・コラーゲン合成・ターンオーバー促進・抗炎症・抗老化作用を示し、皮膚の再生や老化抑制に有効とされています。
ここで、「iPS細胞由来エクソソーム」が出てくるのは、とても嬉しい(うれしい)のですが・・・
線維芽細胞の増殖・コラーゲン合成・エラスチン合成、ターンオーバー促進作用があり、
また,以前にブログ内でご紹介したように・・・「老化細胞」のうち、細胞の分裂異常が生じたために
強制的に分裂を停止させられて、「老化細胞」になってしまったものが存在し、これらが「iPS細胞エクソソーム」によって、「正常細胞」と復帰する・・・その効果は半年程度なのですが・・・
この期間は、炎症性サイトカインの放出現象(SASP)がなくなり、「老化細胞」の総数が減ることになりますね。
以上のように・・・脂肪幹細胞由来のエクソソームなどの治療も、iPS細胞由来のエクソソームではないのですが、再生経路、酸化ストレスの調節、細胞活動の調節など、さまざまな分子メカニズムを通じて皮膚の老化防止に潜在的な効果を示す
可能性が指摘されているのですね(参考11)。
なかなか、今後の展開(てんかい)が楽しみ・・・ですね![]()
今回も最後までお付き合いくださり
誠にありがとうございました![]()
参考)
1) Nature. 2011 Nov 9;480(7376):209-14.
The circadian molecular clock creates epidermal stem cell heterogeneity
Peggy Janichら
Patrick-Simon Welzら
The Influence of Circadian Rhythms on DNA Damage Repair in Skin Photoaging
Zhi Suら
Circadian actin dynamics drive rhythmic fibroblast mobilization during wound healing
Nathaniel P Hoyleら
How and Why the Circadian Clock Regulates Proliferation of Adult Epithelial Stem Cells
Bogi Andersenら
MSCs and their exosomes: a rapidly evolving approach in the context of cutaneous wounds therapy
Faroogh Marofiら
Exosomes Derived from Human Induced Pluripotent Stem Cells Ameliorate the Aging of Skin Fibroblasts
Myeongsik Ohら
Progress in the Development of Stem Cell-Derived Cell-Free Therapies for Skin Aging
Yoan Chouら
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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