こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
9月に入りまして、最初の休日の午後になっています。
今朝は青空が広がり、気持ちがよいかもしれないと思いまして、少し散歩をしました。
陽射し(ひざし)は強かったのですが、空気は秋のように少しだけ爽やか(さわやか)なものに感じました。
米国の作家 「ルドルフォ・アナヤ」の言葉に次のような言葉があることを思い出しました。
There is a time in the last few days of summer when the ripeness of autumn fills the air.
夏の終わりの数日間の中には、秋の成熟が空気を満たす時期がある
というものなのですが、まさに慣れ親しんだ(なれしたしんだ)秋の空気に気がついたような気がしました。
「ルドルフォ・アナヤ」の小説『祝福せよ、ウルティマよ』などをお読みになった方もいらっしゃるかもしれませんね。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
(AIで画像を作成)
今回は、「脂肪肝」が「老化」のスピードを加速する・・・というお話をしてみたいと思います。
「脂肪肝」とは、いったいどのような状態をいうのでしょうか?
「脂肪肝」とは・・・肝臓に過剰な脂肪(中性脂肪)が蓄積され、肝臓全体の約30%以上を脂肪が占めている状態のことです。現在、一般成人の20-25%、男性では約40%が脂肪肝を患っているとされており、非常に多くの方が罹患している現代の生活習慣病であると言えます。
いわゆる肝臓が「フォアグラ」状態になっているなどと・・・以前は笑い飛ばすこともあったかもしれません。
しかし、近年の研究により、「脂肪肝」は、単に肝硬変や肝がんへ進展する可能性あるばかりでなく、「老化」そのものを加速させるリスク因子であることが明らかになりつつあります (参考1)。
「脂肪肝」が「老化」のスピードを加速させる・・・と言われると、その深刻(しんこく)の度合いは・・・ある程度の確率(かくりつ)で、肝硬変や肝臓癌が起こるリスクがあると言われるよりも、より深刻な問題と感じる方も、ひょっとしたら多いかもしれませんね。
(AIで画像を作成)
では、どのようなメカニズムで、「脂肪肝」は、「老化」を加速させるのでしょうか?
脂肪肝が老化を促進(そくしん)する分子メカニズムとして、以下のようなものが挙げられます。
1.慢性炎症
肝細胞内に蓄積した脂肪は、TNF-α(ティーエヌエフ アルファ)やIL-6(インターロイキン6)といった「炎症性サイトカイン」の持続的放出を引き起こし、慢性低度炎症を形成します (参考2)。
この現象は老化の分子基盤とされるinflammagingに直結し、血管や筋肉、脳機能の加齢性変化を促進します。Inflammagingは、感染のない状態での慢性的な全身性炎症として定義され、加齢に伴う罹患率と死亡率の主要なリスク因子とされています (参考3)。
2.酸化ストレスとDNA損傷
「脂肪肝」では、ミトコンドリア機能障害が起こり、これにより「活性酸素種(ROS)」が過剰産生され、DNAやタンパク質、脂質が損傷します (参考4)。
「活性酸素種(ROS)」などの酸化ストレスは、「細胞老化」を促し(うながし)、炎症との悪循環を形成します。
また、「ミトコンドリア」の機能低下とATP産生能の減少が認められ、細胞のエネルギー代謝異常が「老化」のプロセスを加速させます。
3.NAD+NAD+代謝異常とエネルギー破綻
「脂肪肝」では「NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の低下が認められ、「サーチュイン1遺伝子(SIRT1)」をはじめとするサーチュインファミリーの活性低下を介して細胞老化を促進します (参考5)。
「NAD⁺」は、細胞代謝やDNA修復機能の維持に必須(ひっす)であり、その枯渇は細胞の恒常性維持能力を著しく損ないます。
4.テロメア短縮
肝組織を用いた研究では、「脂肪肝」の患者において、同年代の対照群と比べてテロメア長が有意に短縮していることが報告されています (参考6)。
とくに、肝線維化の進行と「テロメア短縮」の間には独立した関連が認められ、年齢調整後もなお統計学的に有意な関連性が維持されています。「テロメア短縮」は細胞老化の分子時計として機能し、肝細胞の再生能力低下と炎症の持続化に寄与(きよ)するとされています。
5.エピジェネティックな変化
DNAメチル化やヒストン修飾の異常が、「脂肪肝」の患者で確認され、老化関連遺伝子発現異常に関与しています (参考7)。
特に、アセチル-CoA代謝の変化が「エピジェネティック修飾」を引き起こし、発がんリスクの増加にも関与することが報告されています (参考8)。
ここまでくると・・・これは、本当に「脂肪肝」を温存(?)しながらの「健康寿命」を伸ばすのは、無理かもしれないな〜と思われる方が多いのではないでしょうか。
ならば・・・どうすればよいのか?
それについては、後日の話題にしたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
-----------------------------------------------------------------
<ブログ後記>9月9日
昨夜は、虫の声が聞こえる中で、満月の夜を堪能(たんのう)しました。暑い暑いと言っているうちに、いつの間にか秋の夜の特徴ともいえる「虫の声」を聞いて、少し驚き(おどろき)ました。
さて、今回は「脂肪肝」について、お話をさせていただきました。
本文では「脂肪肝」としましたが、これまではNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)とNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と細分化されていました。
しかし、2023年に前者がMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)となり、
後者がMASH(代謝機能障害関連脂肪性肝炎)に変更され、それに伴い「脂肪肝」の新しい名称は、「脂肪性肝疾患(SLD)」と呼ばれるようになっています。
しかしながら、「脂肪肝」の名称は、いまだにポピュラーなので、こちらを使わせていただきました。
上記の命名変更の背景(はいけい)には、この疾患の概念(がいねん)として、より「代謝機能異常」に焦点を当てたものとなり、「老化関連疾患」としての側面がより明確になったといえるかもしれませんね、
今後は、単なる肝疾患としてではなく、全身の「老化プロセス」を加速させる代謝性疾患として包括的(ほうかつてき)にアプローチすることが求められる:・・と記載された文献もよく見かけるようになっています。
ところで、この「脂肪肝」を改善するには、どうすればよいのでしょうか?
これは、以下のようなことが推奨(すいしょう)されています。
1.体重減少
7-10%の体重減少で肝臓の脂肪化状態の改善、10%以上でMASH(代謝機能異常関連脂肪性肝炎)の改善や線維化の改善が期待できるとされています (参考9)。
体重減少は「炎症マーカー」の改善や「テロメア長」の安定化させることが示されています。
2.食事療法
いわゆる「地中海食」は、肝脂肪減少とインスリン感受性改善に有効であり、抗酸化物質と抗炎症成分の豊富な摂取が「老化プロセス」を遅延させるとされています (参考10)。
最新の研究では、地中海食と時間制限食を組み合わせた介入により、より顕著な代謝改善効果が報告されています (参考11)。
3. 時間制限食
間欠的断食や時間制限食による肝脂肪改善効果が複数のランダム化比較試験で報告されており、オートファジー活性化を介した細胞老化の遅延効果も期待されています (参考12)。
4.運動療法
週150分以上の中強度有酸素運動で肝脂肪が20-30%減少し、レジスタンス運動との併用でさらなる効果が得られます (参考13,14)。
運動は「テロメラーゼ活性」の向上と「NAD⁺レベル」の改善を通じて、細胞老化を遅延(ちえん)させると考えられています。
5.睡眠
睡眠時間や睡眠の質は、「脂肪肝」、とくにMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)の発症・進展リスクとの関連が示されており、適切な睡眠は概日リズムの正常化とサーチュイン活性の維持に重要であると報告されています (参考15)。
いかがでしょうか?「脂肪肝」が「老化のプロセス」を進行させるという報告が、これだけ報告されていると・・・肝臓のフォアグラ状態などと、笑ってばかりもいられない・・・かもしれませんよね。
今回も最後までお付き合いくださり
誠にありがとうございました![]()
参考)
1) Hepatology. 2023 Dec 1;78(6):1966-1986.
A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature
Mary E Rinellaら
2)Hepatology. 2010 Nov;52(5):1836-46.
Evolution of inflammation in nonalcoholic fatty liver disease: the multiple parallel hits hypothesis
Herbert Tilgら
3)Nat Rev Endocrinal.. 2018 Oct;14(10):576-590.
Inflammaging: a new immune-metabolic viewpoint for age-related diseases
Claudio Franceschiら
4)Mitochondrion. 2006 Feb;6(1):1-28.
Mitochondrial dysfunction in NASH: causes, consequences and possible means to prevent it
Karima Begricheら
5)Br J Pharmacol. 2016 Aug;173(15):2352-68.
Hepatic NAD(+) deficiency as a therapeutic target for non-alcoholic fatty liver disease in ageing
Can-Can Zhouら
6)Sci Rep. 2021 Sep 9;11(1):18004.
Association between telomere length and hepatic fibrosis in non-alcoholic fatty liver disease
Hee Kyung Shinら
7)Curr Diab Rep. 2013 Apr;13(2):229-37.
Epigenetics of insulin resistance: an emerging field in translational medicine
8) Genome Med. 2022 Jun 23;14(1):67.
Acetyl-CoA metabolism drives epigenome change and contributes to carcinogenesis risk in fatty liver disease
Gabriella Assabteら
9) Gastroenterology. 2015 Aug;149(2):367-78.
Weight Loss Through Lifestyle Modification Significantly Reduces Features of Nonalcoholic Steatohepatitis
Eduardo Vilar-Gomez ら
10) J Hepatol. 2013 Jul;59(1):138-43.
The Mediterranean diet improves hepatic steatosis and insulin sensitivity in individuals with non-alcoholic fatty liver disease
Marno C Ryan ら
11) Aliment Pharmacol Ther. 2025 Apr;61(8):1290-1309.
Effects of a 12-Week Mediterranean-Type Time-Restricted Feeding Protocol in Patients With Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease: A Randomised Controlled Trial-The 'CHRONO-NAFLD Project'
Sofia Tsitsou ら
12)JHEP Rep. 2021 Feb 17;3(3):100256.
Treatment of NAFLD with intermittent calorie restriction or low-carb high-fat diet - a randomised controlled trial
Magnus Holmerら
13) J Hepatol. 2012 Jul;57(1):157-66.
Exercise and non-alcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis
Shelley E Keating ら
14)J Hepatol. 2017 Jan;66(1):142-152.
Aerobic vs. resistance exercise in non-alcoholic fatty liver disease: A systematic review
Ryuki Hashida ら
15) Sleep Breath. 2023 Oct;27(5):1985-1996.
Short sleep duration and the risk of nonalcoholic fatty liver disease/metabolic associated fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis
Jie Yang ら
(虎ノ門ヒルズからの夕刻の風景)
(筆者撮影)
=================================

理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
【Coming Soon】
12年分のブログから検索も可能?・・・なの?
<内科医ひとちゃんの抗老化医療最前線>
<今週、なんとなく聞いてみたい曲>
=====================
<JTKクリニックからのお知らせ>
◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。
◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。
◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)
自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。
◯JTKクリニックの「抗老化医療」や「総合内科」診療をお手伝い
いただける医師を募集しています(非常勤可)→下記Mailへ
<JTKクリニック 所在地>
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階
電話 03-6261-6386
=================================








