こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
気がつけば、7月もあと数日となっています。
暦も二十四節気(にじゅうしせっき)は「大暑(たいしょ)」となることに気がつきました。
今回は「動脈硬化(どうみゃくこうか)」についての新しい話題について、取り上げてみたいと思います。
まず、「動脈硬化」は、どのような状態をいうのかを少し復習しておきたいと思います。
「動脈硬化(atherosclerosis)」は、動脈の血管壁に脂質やコレステロールが蓄積し、血管が厚くなり硬くなる「慢性炎症性疾患」でしたね。この結果、血管内腔(ないくう)が狭くなり、血流が阻害(そがい)される状態でしたよね。
「動脈硬化」の進行過程は、「血管内皮細胞」の細胞の障害から始まります。
その後、血管壁へのコレステロールの沈着から始まり、炎症反応を経てプラークの形成へと進み、最終的には血管の狭窄や閉塞を引き起こします。これが様々な循環器系疾患の基盤となるわけですね。
(図はお借りしました)
このような病態の進行を抑制し、血栓の形成を予防するために以下のようなう薬剤を用いて、「LDLコレステロールを低下させる」ことが第一目標とされているわけですね。
スタチン系薬剤(LDLコレステロールを低下させる)
フィブラート系薬剤(中性脂肪を低下させる)
抗血小板薬(血栓形成を制御)
降圧薬(高血圧の管理)
最近になり、「動脈硬化」の治療について、考え方の変化があったというのですね。
「PPARα(peroxisome proliferator-activated receptor alpha)」という物質が、「動脈硬化」の病態形成と治療において中心的な役割を果たしていることが分かってきたそうです。
最新の研究知見により、PPARαの抗炎症作用 が従来考えられていた脂質代謝改善効果よりも重要であることが明らかになり、 治療戦略の根本的見直しが進んでいるのだそうです。
「PPARα」とは、どのようなものかと言いますと・・・
「PPARα(ピーピーエーアールアルファ)」は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(Peroxisome proliferator-activated receptor alpha)の略で、主に肝臓、腎臓、心臓、骨格筋に発現する核内受容体の一種です。脂肪酸代謝や炎症反応などに関与し、脂質低下薬の標的として知られています。
「PPARα」が動脈硬化を改善するメカニズムがどのようなものかは、後日の話題にいたしますが・・・
どうやら、「間葉茎幹細胞」由来のエクソソームが、この
「PPARα」に関与している可能性があるというお話をご紹介したいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
--------------------------------------------------------------------
< ブログ後記 >7月29日
「動脈硬化(atherosclerosis)」というと・・・「悪玉コレステロール(LDL-C)高値」などを連想する方が多いかもしれませんね。
LDL-C高値の「高コレステロール血症」や中性脂肪(TG)高値の「高TG血症」の状態が確認されますと・・・スタチン系薬剤(LDLコレステロールを低下させる)やフィブラート系薬剤(中性脂肪を低下させる)を服用することを勧められるのが、一般的な内科的な治療の流れとなっています。
しかしながら、最新の研究結果では「動脈硬化」の病態形成やその進行は「PPARα(ピーパーアルファ)」というものが、強く関与していることが分かってきたのですね。
この「PPARα遺伝子」は、糖・脂質代謝や細胞の分化と密接に関係している遺伝子群の発現を調節する「転写因子(てんしゃいんし)となります。
「PPARα」は、多くの代謝経路を制御しており、主に以下の機能を持つとされています。
「脂質代謝」に関わる遺伝子の発現を調節することで、血中脂質を改善する作用を持っています。具体的には、肝臓や筋肉などで脂肪酸の利用を促進し、血中のトリグリセリド(中性脂肪)を低下させ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増加させる働きがあります(参考1)。
また、「PPARα」の遺伝子の活性化は、「脂肪肝」の肝機能障害を改善させる可能性も報告されています(参考2)
「PPARα」の具体的な作用機序をみてみますと、次のようになります。
1)遺伝子発現の調節
活性化された「PPARα」は、特定の遺伝子(アポAI、AII、AV、Cなど)の発現を促進または抑制します。
2)脂質代謝の改善
これらの遺伝子発現の変化により、肝臓での脂質合成が抑制され、脂肪酸の分解が促進され、血中のトリグリセリドが低下します。また、HDLコレステロールの合成も促進されます。
さらに・・・上記のような機序による「PPARα」の活性化による効果は、どのようなものになるのでしょうか?
それは、以下のような作用となります。
脂質に対する作用
【1】血中TG(トリグリセリド)の低下
肝臓でのTG(トリグリセリド)合成が抑制され、血中のTG(トリグリセリド)濃度が低下
【2】HDLコレステロールの増加
HDLコレステロールの合成が促進され、血中のHDLコレステロール濃度が上昇
【 3】その他の効果
脂肪酸の利用促進、炎症反応の抑制、インスリン抵抗性の改善など
抗炎症作用
【1】NF-κBシグナル伝達経路の抑制による「炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6など)」の産生抑制
抑制
【2】ロイコトリエンB4(LTB4)のクリアランス促進による炎症抑制
【3】「血管内皮細胞」の炎症反応を制御(参考3)
【4】血管壁へのマクロファージをアポトーシスを起こさせることで、マクロファージの浸潤と活性化を抑制 (参考4)
血管壁への直接な作用
【1】内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性化による血管拡張作用
【2】接着分子(VCAM-1、ICAM-1)の発現抑制によるマクロファージの血管壁への浸潤抑制
【3】マクロファージでの泡沫細胞形成の抑制
などが知られている。「PPARα」の活性化をすることにより、LDL-C値、TG値の値に関係なく、「動脈硬化」の進行が抑制される可能性が指摘されています。
実際に以下のようなことが、現時点で検討されているそうなのですね。
「PPARα」の肝細胞特異的遺伝子導入は、脂質代謝と炎症の両方を同時に制御する画期的なアプローチとして、動脈硬化治療に革命的な可能性を秘めていると考えられています。
実際に動物を用いた研究では、複数の動物モデルでコレステロール30-50%減少、TG値の40-70%減少、プラーク面積32-75%縮小という劇的な改善を実証し、分子レベルでの多面的治療効果が確認され
ているのだそうです。
ところで、「PPARα」遺伝子と「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」の関係は、主に肝疾患や動脈硬化などの疾患モデルで注目されています。
間葉系幹細胞(MSC)には、骨髄由来、脂肪由来、臍帯由来、歯髄由来など、様々な種類がありますね。
話を戻しますと・・・「間葉系幹細胞(MSC)由来のエクソソーム」の投与は、「PPARα」を活性化する可能性があることが報告されているのですね。
「PPARα」遺伝子と「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」の関係を見てみますと・・・
「間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソーム」、は、特に肝臓疾患モデルにおいて、以下のようにPPARαの発現を回復・増加させることが示されています。
「ヒト臍帯MSC由来エクソソーム」は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルマウスの肝臓で低下したPPARαタンパク質発現を回復させ、炎症抑制や肝障害の改善に寄与する(参考5)、
このように「間葉系幹細胞」に由来するエクソソームの投与は、「PPARα遺伝子」の発現を増加させることが知られており、「動脈硬化」を改善させる可能性が考えられているのですね。
ヒトは生まれた時から、徐々に「動脈硬化」に進行していくことが分かっていますので、その進行を強く抑制できるのは、なんとも夢のある話に思えますね。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Cell Physiol Biochem.2018;51(6):2760-2775.
Targeting PPARα for the Treatment and Understanding of Cardiovascular Diseases
Shuzhen Liら
2)Pharmacol Res. 2023 Jun:192:106786.
Roles of the peroxisome proliferator-activated receptors (PPARs) in the pathogenesis of nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD)
Yuan-Ye Qiuら
3)Oxid Med Cell Longev. 2021 Feb 25:2021:2045259.
PPAR _α_ Targeting GDF11 Inhibits Vascular Endothelial Cell Senescence in an Atherosclerosis Model
Fangfang Douら
4) J Biol Chem. 1998 Oct 2;273(40):25573-80.
Activation of proliferator-activated receptors alpha and gamma induces apoptosis of human monocyte-derived macrophages
G Chinettiら
5)Stem Cell Res Ther. 2022 Nov 12;13(1):517.
Human umbilical cord mesenchymal stromal cell-derived exosomes protect against MCD-induced NASH in a mouse model
Ying Shiら
=================================

院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
(
筆者がセレクトしたピアノJazzの曲)
(
筆者がセレクトした夏の夜のJazzの曲)
<今週、なんとなく聞いてみたい曲>
=====================
<JTKクリニックからのお知らせ>
◯外来診療は予約制をとり、待ち時間が生じないようにしています。
◯ ダイエット漢方製剤は、オンライン診療でも可能です。
◯ 線維筋痛症に対するノイロトロピン等の点滴療法、トリガーポイント注射を行なっております。(セカンドオピニオン診療も可)
○自分の皮下脂肪から組織を採取し、「間葉系幹細胞」を培養して、自分自身の組織内に投与する「幹細胞治療」を開始しました。
<JTKクリニック 所在地>
〒102-0083
東京都千代田区麹町4-1-5麴町志村ビル2階
電話 03-6261-6386
=================================







