こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

いよいよ、夏本番といってよいのでしょうか。

「梅雨」に特有の湿気がなくなって、強い陽射し(ひざし)となっていますね。

 

3連休でお出かけをしている方も多いかもしれません。

 

イギリスの銀行家、政治家、生物学者、考古学者であったジョン・ラボックは、次のような言葉を残しています。

 

Rest is not idleness, and to lie sometimes on the grass on a summer day listening to the murmur of water, or watching the clouds float across the sky, is hardly a waste of time.

 

休息は怠惰ではない。夏の日に草の上で横になって水のせせらぎを聞いたり、雲が空を横切るのを眺めることは、ほとんど時間の浪費ではない。

 

ジョン・ラボックは、多くの研究業績を残し、多くの法律の制定に関わるなど。精力的に仕事をこなしたと伝えられていますが・・・

夏の「自然」の中で、過ごすことを格別な時間と考えていたのかもしれませんね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

前回は、癌に対する「細胞障害性T細胞(CTL)」の作用について、お話をさせていただきました。

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」は、癌細胞の表面にある「MHC class I

抗原とともに表出された「癌の抗原」を認識し、破壊するわけですので、とても強い力で「癌細胞」を破壊することが可能である・・・と言えます。

 

しかしながら・・・弱点もあるわけです。

 

ひとつ目の弱点は、「MHC classI抗原」とともに表出されていた「癌の抗原」が変化してしまうことです。

 

これは、「癌細胞」が、「細胞障害性T細胞(CTL)」などで認識され、攻撃され始めると・・・特定の抗原を持つ癌細胞が攻撃され、破壊されます。

これであれば、「癌細胞」はすべて破壊されるということになるのですが・・・「癌細胞」の中には、この抗原が変化しているものが存在するわけです。

 

例えば・・・「癌細胞」の表面に「MHC class I」抗原が存在しても、

「癌細胞」の遺伝子が変化することにより、「MHC class I」抗原とともに表出される抗原も変化してしまうのですね。

 

最初の「癌抗原」をAとすると・・・当然、この時点の「細胞障害性T細胞(CTL)」は、「癌抗原A」を持つ「癌細胞」は確実に破壊できるわけですが、「癌抗原」がBに変化してしまいますと・・・

 

いくら「癌抗原A」を持つ「癌細胞」に対する「細胞障害性T細胞(CTL)」を多く投与しても、「癌抗原B」を持つ「癌細胞」を破壊はできないことになります。

 

こうした「癌抗原」の変化は、「癌細胞」のDNAの変化を生じる場合よりも、DNAのエピジェネチックな変化(アセチル化、メチル化、リン酸化など)によって変化し、癌に対する「免疫応答」に影響を与えると考えられています。

 

なので、癌の抗原変化のパターンは、無限であると考えてよいかもしれませんね。

そして、これらの抗原の変化は、常に生じており。治療の影響でも変化すると考えられています。

 

この癌の抗原の変化は、どの程度の頻度で起こるのでしょうか?

 

「癌の種類」にもよるのですが・・・その変化のスピードは速く(はやく)、癌発生の初期から数週間〜数ヶ月の間に観察されることが多いとされています。

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」の投与を開始すると・・癌細胞は、この免疫から逃れるために・・・「癌抗原」の変化スピードは速くなっていく可能性が考えられます。

 

ただし、最初の抗原の完全な消失はまれで、ある程度のレベルで抗原は残存します。

 

つまり、当初の癌抗原Aが、突然、癌抗原Bに変わるというわけでなく、癌抗原A<癌抗原Bとなっていくクァ毛ですね。

しかしながら、当初の癌抗原Aを持つ癌細胞を破壊することが可能な「細胞障害性T細胞(CTL)」の破壊力は弱くなっていくことが予想されます・

 

    (AIで画像を作成)

 

「細胞障害性T細胞(CTL)」の2つ目の弱点とは、どのようなものなのでしょうか?

 

これは、これまで何度かブログ内でもご紹介している話ですが・・・

通常であれば、「癌抗原」と「MHC class I抗原」とが、「癌細胞」の表面に出ているわけです。

 

これらが「癌細胞」の表面に出ているために「細胞障害性T細胞(CTL)」は、「癌細胞」であると認識し、これを破壊することができるわけです。

 

しかしながら、時間が経過するうちに・・・「癌細胞」は、抗原提示に関わる分子(MHCクラスIなど)の発現をなくしたり

「抗原」の処理経路を変化させたりすることで、「免疫」から逃避しようとすることが知られています。

 

この現象は、「MHCクラスI抗原」の「ダウンレギュレーション(Daunregyurēshon)」と呼ばれています。

 

ヒトの「癌細胞」では、約40~90%でMHCクラスIのダウンレギュレーションが報告されています。

多くの固形がんでMHCクラスIの発現低下が見られ、これはCTLによる認識・攻撃を回避する主要な免疫逃避メカニズムであると考えられています。

 

「癌抗原」は、「MHC classI 抗原」とともに「癌細胞」表面に表出されますので、「癌抗原」も隠されて(かくされて)しまうわけです。

 

そのような状況になりますと・・「細胞障害性T細胞(CTL)」がどんなに多く存在しても、「癌細胞」を破壊できないjということになります。

 

 

このような「癌細胞」が、「癌抗原」は、「MHC classI 抗原」を表出しなくなってしまうような変化は、「癌」の進行とともに段階的に起こり、数週間から数ヶ月のスパンで進行するとされているのですね。

 

この状態になると・・・これは、「免疫細胞」を利用して、「癌細胞」

破壊するのは不可能なのか?・・・と言いますと、そうでもありません。

 

 

 

上記のように「MHCクラスI抗原」の「ダウンレギュレーション(Daunregyurēshon)」が生じていたとしても、「ナチュラル・キラー

(NK)細胞は、「癌細胞」を破壊することが可能であるのですね。

 

もちろん、「癌細胞」の「癌抗原」の変化や「MHCクラスI抗原」の「ダウンレギュレーション(Daunregyurēshon)」がなければ、

「細胞障害性T細胞(CTL)」の癌細胞の破壊力は、とても強いわけですが・・・ね。

 

では、「細胞障害性T細胞(CTL)」と「NK細胞」を使えば、癌細胞の立場からすると、これを回避(かいひ)するのは、難しいのでは・・・と考えられますね。

 

実際に「細胞障害性T細胞(CTL)」と「NK細胞」を同時に投与することで、相乗効果が期待できると報告されているのですが・・・続きは。後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な休日を、そして、1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記 >7月22日

本格的な夏の季節が訪れたのは嬉しいのですが、
容赦なく(ようしゃなく)強い陽射し(ひざし)が照りつけているのは、少しだけ(?)・・・うんざりしてしまいますね。

今回は、前回のブログ内でもお話をした「細胞障害性T細胞(CTL)」についての特徴をお話をさせていただきました。


「細胞障害性T細胞(CTL)」が「癌細胞」の抗原の変化に弱いというお話をしますと・・・ならば、最初から「ナチュラル・キラー(NK)細胞」を用いた方がよいのではないか?・・・という疑問を持つ方も多いかもしれません。

しかしながら、「NK細胞」にも弱点はあります。

それは、本文内でもご紹介したように「NK細胞」の寿命の短さや「NK細胞」の活性、つまり「癌細胞」を破壊する力ですが・・・本文内にもご紹介をした「ドレス現象」が起こることで、
「NK細胞」の活性が低下してしまい、効率的に癌腫瘤全体に効果を及ぼす(およぼす)可能性が指摘されています。

ことから、癌の腫瘤の表面にダメージを与えるものの、癌腫瘤の深部までは達しにくい(たっしにくい)と考えられてもいるのですね。

「NK細胞」を大量に培養し、断続的に投与することが可能であれば、その有効性を充分に期待できると考える医学研究者もいまし、実際に効果が期待できると思います。

こうした癌に対して「細胞障害性T細胞(CTL)」や「NK細胞」などの「免疫細胞」を用いた治療は、韓国、中国、マレーシアなどで研究「がされており、今後、ベトナムでもその治療の実際的な方法が
検討されています。その中で、「韓国」で、GCリンフォテック社の主導で国として、治験が第3相試験までが施行されて、有効性が認められて、同国の「保険診療」となったそうです。

話を戻しますと・・・「細胞障害性T細胞(CTL)」や「NK細胞」の細胞を同時に投与すると、治療効果に「相乗効果(そうじょうこうか)」があることが、既に世界各国で報告されているのですね。 

 

次にまとめてみたいと思います。

1)相補的な腫瘍認識と攻撃

「細胞障害性T細胞(CTL)」は、抗原特異的に「癌細胞」を認識し、「NK細胞」は、抗原に依存しないで、異常細胞を排除できるため、「癌細胞」の多様性や免疫逃避に対応できるとされています。
(参考1,2)

「NK細胞」は、正常な細胞ではない細胞を破壊しようとしますので・・・例えば、ウイルス感染細胞
や「老化細胞」までも破壊することが可能でしたね。

この性質からしますと、「癌細胞」抗原がどんなに変化しても・・・「NK細胞」は「癌細胞」を破壊できることになりますね。

2)免疫応答の増強

「NK細胞」は、「樹状細胞」の腫瘍局所へのリクルートを促進し,「細胞障害性T細胞(CTL)」の細胞応答を強化することが報告されています。さらに「細胞障害性T細胞(CTL)」から放出される
「インターロイキン2(IL-2)」はNK細胞を活性化することも報告されています (参考1,3)

「樹状細胞」のお話は、ブログ内であまり触れてこなかったのですが、そのメカニズムを簡単にご紹介しますと、次のようなものになります。
「樹状細胞」が癌細胞の断片や死んだ細胞を「食べる」わけですね。これを「貪食(どんしょく)」
と呼びます。そして「抗原」処理をして、MHC class II抗原と一緒に表面に出し、「ヘルパーT細胞(CD4+T細胞)」→「細胞障害性T細胞(CTL)」を活性化するというプロセスをたどります。
このプロセスに10日〜14日程度の時間が必要であるとされています。

このプロセスのスタートは、「癌組織」部分に「樹状細胞」を早く集めるところから始まりますので
「NK細胞」が癌組織を攻撃すると同時に「樹状細胞」を呼び寄せるということになりますね。

3)癌細胞が「MHC class I抗原(HLAクラスI)」を喪失し「細胞障害性T細胞(CTL)」から逃避しても、NK細胞はそのような細胞を認識・排除できる

4)免疫チェックポイント阻害剤との併用効果の増強

PD-1/PD-L1阻害などの免疫チェックポイント治療は、「細胞障害性T細胞(CTL)」だけでなく
「NK細胞」の抗腫瘍活性も高める(参考5)

これらに加えて、癌幹細胞(Cancer Stem Cells, CSCs)は、腫瘍の再発や治療抵抗性の原因となる細胞ですが、「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」は、条件によっては、癌幹細胞を破壊することが可能です。
ただし、「癌幹細胞」は、免疫細胞からの攻撃を回避する多様な仕組みも持っていますので、
やはり、「NK細胞」と「細胞障害性T細胞(CTL)」を同時に投与した方よい可能性はありますね。

もちろん、これらの「免疫細胞」だけで「癌細胞」がなくなるとは、現時点では考えていません。


可能であれば、標準治療の「手術療法」や「化学療法」の補助として、用いるべきという私の基本的な考え方です。

それは、どんなに「化学療法」を施行しても、現状では「癌幹細胞」は残っている可能性があるということです。もちろん、経過中に自分自身の「免疫細胞」の力が強ければ、「癌幹細胞」は自然に消失する可能性は高いと考えます。


しかし、万が一、残っていますと、再発するリスクもあるわけですね。

「化学療法」の優れた(すぐれた)ところは、「癌細胞」を大量に破壊できることです。もし、手術が可能ならば、できるだけ「癌組織」を除去し、癌細胞の数を少なくした方が「免疫細胞」を用いた治療
は効果を示しやすいと言えますね。

ただし、化学療法には「プロトコール(レジメ)」と呼ばれる抗がん剤の投与方法がありまして、世界の中でも「超高齢化社会」である我が国では、このような「プロトコール(レジメ)」をすべて
施行できずに、副作用の出現で、中止せざるを得ない患者さんもいるとされています。

「NK細胞」や「細胞障害性T細胞(CTL)」を併用するとしても、あまり、副作用が出ないことが特徴なのですね。
 

しかしながら、「免疫細胞」を用いた治療にも弱点があります。
それは、「癌関連線維芽細胞(CARF)」の存在でしたね、「癌関連線維芽細胞」と「癌細胞」の混じりあった「がん微小環境(Tumor Microenvironment, TME)」でしたね。


この中には、血管内皮細胞や免疫細胞が「癌関連線維芽細胞」と同時に存在しているわけです。
この免疫細胞の中で、「マクロファージ」という細胞が、活性型のM1型から、免疫抑制型のM2型に変化しているために・・・
ひどい場合には、どんなに「免疫細胞」を投与しても、それらが「癌組織」を認識できずに通り過ぎる・・・という現象「も報告されているのですね。

今回のブログは、若干、踏み込んだお話をしましたので・・・また、叩かれる(たたかれる)かもしれませんねえーん

 

まあ、引退まじかの「老害医師」が、若い医療者たちに残した伝言と

考えてもらった方が良いかもしれません爆  笑

「常識にとらわれるな。そして、新しい考え方に乗り遅れるな!」というメッセージとともに・・・ね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

ありがとうございましたお願い

 

参考)
1)Annu Rev Immunol. 2023 Apr 26:41:17-38.
 Designing Cancer Immunotherapies That Engage T Cells and NK Cells
Oleksandr Kyrysyuら

2)J Immunother Cancer. 2024 Oct 31;12(10):e009934.

Unlocking the therapeutic potential of the NKG2A-HLA-E immune  checkpoint pathway in  T cells and NK cells for cancer    immunotherapy
Yan Liら

 

3)Immune Netw. 2025 Apr 9;25(2):e17.
Cytokines in Focus: IL-2 and IL-15 in NK Adoptive Cell Cancer Immunotherapy
Bryan Marrら

 

4)Front Immunol. 2019 Dec 6:10:2836.
 Harnessing NK Cells for Cancer Treatment
Paola Minettoら

 

5)J Clin Invest. 2018 Oct 1;128(10):4654-4668.
 Contribution of NK cells to immunotherapy mediated by PD-1/PD-L1 blockade
Joy Hsuら

 

(麻布台ヒルズにて)
(筆者撮影)

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 院長  

小笠原  均  (Hitoshi Ogasawara)   

医学博士, 内科医

(総合内科、リウマチ専門医)

(新潟大医学部卒)

 

 

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