最優秀書籍賞:『恋と女の日本文学』丸谷才一
最優秀個人賞:綿矢りさ
最優秀団体賞:中央公論新社
技能賞:桐野夏生
敢闘賞:佐藤優
功労賞:半藤一利
平成のベストブックという勝手な企画を催し、かつて選出したのが上記である。
改めて簡単に選出理由を書くと、
丸谷は本居宣長の生涯を追いながら、日本文学の根底にある「もののあはれ」「をかし」を形作ったものは何か、確固たる解答を用意した。なおかつわかりやすく、笑える。
綿矢は、ネット、メールという平成に普及したツールを題材にしただけでなく、その遣り取りを紙面に再現した。そんなことは、他の作家もやっていることだが、縦書きでありながら不自然さがない。顔文字の採り入れ方がうまい。無論、作家としての力量がある。
中央公論新社は「中央公論」「婦人公論」「中公新書」の充実を評価してである。
桐野は本を手に取りさえすれば、最後まで読ませる上手さ。これは平成の小説家ではナンバーワン。
佐藤は外交関係の重要さ、裏舞台を披露した。何しろ抱える連載の多さ。
半藤は第二次世界大戦を挟んだ現代史を整理し続けたことを評価した。司馬遼太郎、大岡昇平、丸谷才一といった大作家達と渡り合ってきたことも、説得力のひとつ。例えば、大岡昇平の『レイテ戦記』に半藤の名が出てくる。半藤の書いたものが参考になったという意味である。出版が昭和45年ころのことだから、半藤の活動も実に長い。
さて、『昭和史 1926-1945』半藤一利(平凡社ライブラリー)である。
若い編集者達に、戦前戦中におきたことを語って聞かせるという形式。6月初旬にKindleにインストールしてから、3か月かけてすこしずつ読んだ。
内容もさることながら、文庫本なりのおまけがついた。『ノモンハン事件から学ぶもの』が28頁分。『ノモンハンの夏』は半藤の代表作だが、本来は司馬遼太郎が書く筈だったのが、資料が揃ったのに「書きたくない」。理由はここでは省くが、代わりに半藤が書くことになったエピソードが披露してある。
文庫本はこのように、ハードカバーにはない、特典があった方が望ましい。最近解説すらないものも多く、寂しい限りである。
その司馬であるが、著書で「生々しい記憶を残している人が生きている間は歴史にならない」と書いていた。具体的には半世紀以上と書いていた記憶がある。そういう意味で、平成を締めくくる、平成史をまとめるというような書籍がずいぶん出たが、こういう昭和を整理することこそ、著述家が手がけなければならないことのような気がする。