情けないことであるが、ブログへのアクセスがゼロという日が珍しくない。その一方で、書き続けていれば必ず誰か来るという確信のようなものはある。誰かが読んでくれて、賛同してくれればいいな、という程度であるし、そもそも小説をメインに据えたブックレビューにそんなに人は来るまい。従って、ブログで金を稼ごうなどと横着なことを考えたりはしないが、ブログ専業で生活している人もかなり少ないながら存在することだろう。
『ニムロッド』のテーマである仮想通貨もそんなものであろう。人気があれば価値が上がり、関心を持つ人が少なければ価値が下がるというような、存外単純な需要と供給という関係で成り立つ様だ。主人公の中本は通常の業務とは別に、ビットコインを採掘する課の立ち上げを命じられる。
登場人物としてのニムロッドは中本と同じ会社で働くサラリーマンであると同時に、文学賞受賞にあと少しという所までこぎ着けている小説家でもある。ニムロッドが進行形で書いている小説の主人公は資産家で、うまく飛ぶことができなかった飛行機を収集しているのだが、供給する航空機がもう無いと言われ、その収集も限界に来る。ニムロッドに関心を抱いている中本の恋人の田久保も有能なビジネスパーソンでありながら、何の為に稼いでいるのかわからないと、漠然と東方洋上に思いを馳せるようになる。そして中本が手がける仮想通貨も利益を生み出せなくなる。
バベルの塔の例え話が用いられるが、表紙絵と共に、人類が成し得ない、はかない夢のようなものである。
サリンジャーやロックミュージシャンなどの話も絡めながら、また人間の寿命、少子高齢化など多岐に渡る問題を織り込みながらも小説の方向性にはブレがない。LINEで交わされる言葉も巧みに取り入れた。
実にうまい。が、これを超える小説を筆者が今後書けるだろうかという老婆心を愚生は抱いた。
