中国関連書籍:その1 | ricky321のブログ

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「池上氏の書籍はあまり食指が動きません。ジャーナリストの出版物は良く手にしますが、時折TVでの発言を聞いているとその気が起きません。万人受けするコメントを分かりやすく解説しているだけで本人の主張は一切出ません。書物を読まない人々に世の難しい諸問題を分かりやすく解説する物知りタレントのようで…」というコメントを去年いただいたが、そのTVというものを私は観ないから本でしか分からない。ライター池上彰のまとめる力、伝える力を甘く見てはいけない。台湾であれ中国であれ近現代アジアに興味ある方は、『池上彰の世界の見方/中国・香港・台湾』(18-051)をお勧めする。各々の抱える問題が簡潔に整理されている。小生は図書館で一度借りたが手元に置いておきたくて、KindleにDLしたくらいだ。

19-027『理想はいつだって煌めいて、敗北はどこか懐かしい~100歳の台湾人革命家・史明自伝』講談社★★★★★
「現実は小説より奇なり」を地でいくノンフィクション、とは月並みな表現だが…。自伝は、小生の経験と感覚からすれば半分は嘘だと思ったほうがいい。少なくともかなり脚色されていると覚悟して読むべきだ。たとえば、十年前に読んだ本、それもかなり印象に残ったものを再読してみれば、結構自分の記憶と違っていることが多い。本筋は頭に残っていても、登場人物の名セリフが、終盤だったと思ったら、意外に序盤にあったとか、主人公の友人だと思っていた人間が従兄だったとか、数多ある。良心に基づき、かなり忠実に記憶に依って再現したつもりでも難しい。命からがら中国共産党から逃れる場面があるが、もしかしたらわざと共産党幹部が、後年利用価値があると考え見逃したかも知れない。鄧小平のイメージだって、後に政治トップに立った時の印象に支配されているのではないだろうか。

もう一度整理する。
・人は自らの過去を美化したがる。たとえば、日経新聞の「私の履歴書」がしばしば物議を醸す。元経営者が「アメリカで大型の受注に成功した」と書けば、その部下が「あの時社長は挨拶に行って契約書にサインしただけで、実際交渉したのはこの俺、手柄の横取りだ」と周囲に漏らし、その噂が広がるようなことがある。
・妹尾河童『少年H』はよく売れ、映画にもなったが、「戦後に明らかになったことを、戦時中にリアルタイムで知ったような書き方をしてある」と幾多の間違いを山中恒が指摘している。記憶は確かなものではない。
・スパイの世界なので、実名を明かすと存命の人間に迷惑が及ぶどころか、命が危うい場合があり、全てを暴露できない。
疑ってかかる小生のような読者のためなのか、筆者自身による記録だけでなく、他から(その内のひとりは配偶関係にあった女性)見た史明の姿を記してあるのは本書の価値を高めている。
なんといっても蔡英文が序文を書いているところからして凄い。
本年のベスト書籍候補作。たとえフィクションだったとしても、これなら許せる。欲望や裏切りや愛憎といった生々しいドラマがある。買って読む価値はある。講談社の編集部は本当によくやった。