つぐみは病弱で、いつ倒れるか分からない。わがままで人に迷惑を掛けることを生き甲斐としている。
クライマックスは「穴」。つぐみが命がけで穴を掘った。体力のないつぐみにとって落とし穴を掘ることはまず無理だと思われるが、それでも掘った。犬の権五郎を殺した高校生に復讐するために。
『TSUGUMI』の読み手にとってここが好き嫌いの分かれ目になるような気がする。のめり込む読者はこの章が好きで、一部の読者は「所詮作り話じゃんか」と冷めてしまうのではないかな。
私の20代(厳密には社会人になった後)において、最も重要だった小説かも知れない。いとことひと夏を過ごす、お化けごっこをする、楽しみにしていたTV番組の最終回の放映後、みな無口になる…といったシチュエーションには私にもあった。ある意味しょーもないことなんだけれでも、そのしょーもないことを小説にしている吉本を凄いと思った。先に『キッチン』を読んだが、オタク文化のさきがけという点で時代を反映しているのは『キッチン』だが、印象に残ったのは『TUGUMI』だった。
小説に於いて重要なのはモチーフではなく文章力ではないか。いくら大事件を書いても文章が拙ければ駄目である。日常のほんの些細な出来事であってもうまい小説家は人を惹きつけることが出来る。

吉本ばなな本人は当時「つぐみの性格の悪さは私の性格の悪さそのものです」というようなことを語っていた。今考えてみれば、ものを書くには性格が悪くなければならない、と宣言していたのかも知れない。