【人間失格】
太宰治/著
新潮文庫/出版
1952年11月03日/発行
こういう作品を、この歳になるまで読んでいないのは、全く罪なことである。
こういう本は、若いときに読めば、かなり影響を受けると思う。
今更言うのも気が引けるが、太宰治は上手い。
なかなかの、策士である。
主人公の葉蔵は、まさしく太宰そのものであろう。
自分自身のことを、かなり正直に独白したと思わせる。
だが、計算が働いている。
葉蔵と同じく、この期に至っても、オチャラケの芝居をしている。
本当のことを書いていない。
もうこうなれば、この人の正直な気持ちというものは引き出せないだろう。
誰でも、人生で仮面を被リ続けるのは、また事実だろう。
だが、ここまで自分を隠し通すのは、なにか病的なものを感じてしまう。
変な言い方だが、この人はサービス精神がとても強かったと思う。
読者に対して。
あまりにもサービス精神が強すぎて、読者の期待を裏切らないために、自殺をしたのではないかとさえ思っている。
ここまで書いたら、本人が自殺しないと、格好悪いじゃないか。
読者が、ガッカリするじゃないか。
そんなところへ、自分を追い詰めたような気がしてならない。
不思議な魅力を持った人である。
何でこんなにも、女性にモテたんだろう。
カネに不自由しない、良いとこの出身だからこそ作り上げた坊ちゃん風の性格。
そして、めったやたらに教養が高いのに、世間知らず。
手が届かないはずの人なのに、手が届く。
そんな、女性を惹きつける条件を満たしていたのだろうな。
それにしても、3回も女性を連れて入水自殺(情死)をするなんて。
分からないのが、女性の心理である。
もともと自殺願望がある女性達だったのだろうが、いまのネット時代じゃなかったんだからなァ~、当時は。