・・・・・・っということで、ぼくがやろうとしていることは、イスラム教を理屈で理解する試みです。
宗教を理屈で理解すること自体間違っているといわれるでしょう。
なぜなら、宗教は「理解する」ことではなく、「信じる」ことなのですから。
でも、理屈で理解できることは、理屈で理解したいのです。
もちろんそれには限界があることは承知の上です。
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さて、ムハンマドに聞きたいことがあります。
なぜ新しい宗教を作ったのか? いや、なぜ新しい宗教を広めろと神が命じたのか?
一神教なら、先輩格のユダヤ教やキリスト教でいいはずでしょ?
貴方が広めようとしているのも同じ神を戴いているのですから。
すると、神はユダヤ教もキリスト教も気に入らないことになる。
気に入らないどころか、教えが間違っていると考えているからこそ、貴方を指名したのでなければ理屈が通らないでしょ?
ならば、イスラム教という「正しい」宗教を広めて、「間違った」宗教を信じている人たちを改宗させなければならない。
こうやって理屈で考えを進めると、貴方が布教する過程で必ず「摩擦」を生むことになる。
当然、その摩擦は戦いに発展することを貴方は覚悟していたのでしょう?
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次に聞きたいのは、イスラム教を広めることによってどんな世界をムハンマドは目指していたのかということです。
前回書いたように、それは身分の差や貧富の差のない平等な世界だったのでしょうか?
その世界はイスラム教が統治する世界、即ち政教分離ではなく「政教一致」の世界であったはずです。
貴方は統治するために必要なイスラム法を考えたのですから、それは間違いないでしょう?
過去にも宗教家が国を統治しようとしたことはあります。
でもそれは、宗教に基づいて国を治めるのではなく、キリスト教のように法王が国王の上に立つことでしかなかったのです。
キリスト教を徹底的に調査した(と思われる)貴方はそれでは満足しなかったのでしょう?
実にチャレンジングな考えだと思います。
宗教が統治する国家の前例がなかったのですから。
貴方がいくら天才とはいえ、法体系を一人で書くことは不可能だったはずです。
貴方の書いたのは、じゃなかった、神から受けた神託は主に法律の基礎となる「道徳」(しばしば刑法)であり、その後は法律の専門家に任せるスタイルを採ったのですよね。
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そういう国家のイメージを人々に伝えるのはとても困難なはずです。
それは大いに貴方を悩ませたことでしょう。
そこで思いついたのが「ウンマ」という概念です。
それまでの国家は、主に君主国あるいは共和国でしょうが、それは当時のアラビア半島に住んでいた人には理解できなかったでしょう。
君主国が一番分かりやすいでしょうが、それは選択肢にはありません。
ウンマとは共同体のことです。
もっと噛み砕いて言えば、家族みたいなものです。
部族や人種の違いを問わない家族ということです。
これなら誰にも分かりやすい。
家族ならだれもが平等じゃないですか。
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ウンマは分かりやすいけれど、欠点もあります。
それは、一家のオヤジを誰にするかです。
貴方はそれを決めずに世を去ってしまいました。
ぼくが思うに、貴方はイスラム教がここまで大きくなるとは予想していなかったんじゃないでしょうか。
ムハンマドがイスラム国家をどのようなスケールで考えていたか、それはとても興味深いテーマです。
イスラム教はその教義上、広い帝国を形成する性質を持っています。
その帝国を維持するリーダーの選出方法の定めがないのは、法律としては未完成です。
その欠点がムハンマドの死後、一気に表面化してきます。
・・・つづく。