侵蝕 | dokidoki感

侵蝕

こんにちは

この本を読みました

櫛木 理宇

侵蝕








簡単なあらすじ

普通の家族の家に赤の他人達がしれーっと入って来て
生活を支配してゆき 元の家族は正気を失います


感想

実際に他人が家にやってきて支配された事件ありました
なんで そんな事になるの?と思いますが
実際の被害者は こんなだったのだろうと思わせる
櫛木さんらしい強力なイヤミスです

夫婦と娘3人で普通に暮らしてそうな皆川家
女子高生の美海は明るくて友達も多い快活な子ですが
家庭では疎外感を感じまくっています

それは姉の琴美は人付き合いが下手だけど頭が良いので
父方の親戚から大層可愛がられており

妹の亜佑美は美しいため祖母に気に入られており
そんなせいで かなりのわがままぶりを発揮

父は仕事が忙しく 家にあまりいないから
母は不満感じていた所 息子を授かると

母は末っ子の息子智未を溺愛しまくるのですが
智未は半年前に事故で亡くなってしまい

母は立ち直るどころか生きる気力を失い
家事は疎かだし 見た目も老けてしまい
精神状態は不安定に陥ってしまいました

そんなせいで両親には大きな溝が出来てしまい
美海には自分の味方がいないという状況となります

ある日皆川家の家の前に6歳位の少年が現れます
少年は汚れた服に靴も履いておらず
母にトイレを貸してといい 家の中に入ります

母が少年に名前を尋ねると 朋巳と名乗り
名前・年齢から亡くなった息子と重ねてしまい
状況的に育児放棄されていると思ったため
朋巳をしばらく預かることにしました

父と琴美は大反対するのですが 最近やる気なく
惰性で生きていた母の母性に火がつき 言う事聞かず
強行突破して仕方なく住ませることになりました

この様子が開始40p程度に収められており
それぞれの人間性も詳らかに描かれつつ
不穏な空気を感じさせる物語の密度は濃く

この母親 哀しい出来事があったにしても
こんな行動取るのがバカかというだけでなく

父親の威厳のなさや 3女の傍観者な振る舞いが
とても不愉快に感じてしまうのは
それだけ物語に感情移入してしまったという事で

序盤だけで どうなるのかと興味を覚え気になるけど
嫌な予感しかしないから 読むのが躊躇われるような
ジレンマに陥ってしまいました

すると変な恰好をした 朋巳の母だと名乗り者が現れると
皆川家が朋巳を返せば 話は終わるはずなのに 
自分は夫からDVを受けているから行く場所がないと言い
知らない女性まで住ませることにします

それは皆川家は朋巳が来てから 母の精神状態は安定し
平穏がもたらされたため 家族は朋巳がいなくなり
また母がおかしくなることを恐れ
知らない女性を受け入れてしまったのです

すると女は家族を侵蝕してゆき 遂には・・・
という物語で たまにこの手事件は実際にあり
その度に何で?と思っていたのですが

少しずつ弱みを突いて 精神状態を不安定にさせ
洗脳してゆく様子は生々しくて 不愉快だけど
気持ち悪い物をつい見てしまう感じで読み進めました

闖入者たちに腹黒さが存在するのは当然ですが
洗脳された人達も 不条理な言動を繰り返すのは
この家自体がが悪意の塊のようになってしまい
それに立ち向かうのは美海のみという絶望的な状況

例えば憎い相手が登場し 腹が立つ物語と言えば
半沢直樹を思い出しますが 半沢は大人の男性で
スキルもある人物なのに対して

美海は普通の女子中学生でしかないから
どうにもならないのは 不憫すぎてシンパし
強力な勧善懲悪を期待しつつ 迎えたラストは
私の想像を数倍上回るドラマティックかつ意外さでした

こんなに人の感情を言葉・文章にして描きつつ
ここまでの構成の物語にする櫛木さんは凄すぎて感嘆でした

とてもとても面白かったです