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 タイトルの意味は、個性なき集団の消費傾向ということか。いわゆるマーケティングものだけれど、あんまり体系的なメッセージが伝わってこない。2007年11月初版。

 

【透明人間とは】
 透明人間とは?
 平凡で個性がなくて、臆病で ―― 要は極めて特徴のない、マスコミに取り上げられにくい人たちのこと。
 そして、この世の中は、そんな向こう側が透けて見えそうな、極めて希薄な存在感の透明人間たちで溢れている。物言わぬ大衆、サイレントマジョリティ。(p.144)
 本書のキーワードなのに、著作の終盤になって、その意味するところが書かれていた。
 最初に書くべきだろう。

 

 

【昔のほうがまだ個性があった】
 思い起こせば、女子大生のリクルートファッションは、一昔前はグレースーツや紺のブレザーなど、もっとバリエーションがあったと思う。企業側も、最近は「清潔な服装であれば」と、むしろ以前よりも服装の縛りをゆるくしているほど。それなのに、学生側が自ら縛りをきつくしているのだ。
「もはや大衆はいなくなった」とか「大衆から小衆の時代へ」なんて言われて久しいけど、いえいえ、世の中はどんどん大衆化している。昔のほうがまだ、個性があった。(p.27)
 時代はエントロピー増大の方向へ、すなわち多様化に向かっていると思っていたから、この記述はちょっと意外。今の学生のリクルートファッションは、SF映画のクローン人間のように黒一色に染まっているらしい。
 また、昔は「オタク」という言葉はなかったから、片っ端からなんでも趣味にすることができて、趣味のバリエーションも多様だったとも書かれている。

 

 

【女性はいくつになっても王子様が好き】
 実は韓流ブームの背景には、日本の芸能界が「王子様需要」のマーケティングを疎かにしてきた側面もあった。
 ジャニーズに代表される日本の男性アイドルは、基本、やんちゃ系、三十路を過ぎても「クンずけ」で呼ばれるなど、永遠の少年路線を売りにしている。ファッションもカジュアル中心。優しくて、包容力のある王子様路線とは少々違う。
 一方、四天王に代表される韓国スターたちは、スーツも着こなし、振る舞いも紳士的。包容力もありそう。まさに理想とする王子様路線をまい進していた。
 世のおばさんたちが「韓流ブーム」に飛びついたのも、無理はない。(p.40-41)
 バブル崩壊で懐具合が悪くなってしょげ返っていたオバサンたちが、時の癒しによって蘇ったら、「やっぱり白馬の王子様よね~~」ということになったのだろう。これを読んで、おばさんたちが時代の主導権を握りつつある現代を描いた下記の著作を思い出してしまった。
    《参照》   『オバサンとサムライ』 養老孟司・テリー伊藤 宝島社

 

 

【女の子同士のカラオケ大会で、外せない曲】
 ZARDの 「揺れる想い」、 小泉今日子の 「あなたに会えてよかった」、 今井美樹の 「プライド」、 ドリカムの 「未来予想図Ⅱ」 ―― 。 (p.46)
 へぇ~。
 今から7年も前の著作だから、今はどうか知らないけれど、小泉今日子とドリカムの曲を知らなかったから、リンクするために書き出しておいた。

 

 

【OL像】
 実は、僕等が想っているほど、世間のOLたちはトレンドや流行りものに貪欲じゃない。
 毎号欠かさず女性誌を購入し、流行りもののチェックに余念がなく、トレンドスポットはオープンしてから2週間以内に必ず訪れる ―― そんなOL像は、マスコミが作った幻想である。(p.52)
 そんなに流行に追随してばかりいるOLがいたら、チャンちゃんなんかは、相当露骨に「あなたって心底アホねぇ~~」っていう目でその意味が伝わるようにキッチリ見つめるだろう。
 実際のところ、流行を追いかけるのにはそこそこおカネがかかる。平均的なOLが簡単にできることじゃないだろう。経済的に余裕があるOLなら、それ相応に仕事に忙しくて流行なんかにかまけている時間などないはずである。

 

 

【透明人間の味方】
 ファッションに個性がない分、蛯原友里や押切もえ、山田優ら専属モデルに個性を持たせたのである。
 その戦略は当たった。
 世間の大多数の透明人間たちは、彼女たち専属モデルに憧れ、彼女たちが身に付けている服を着たいと思うようになった。そして実際に着てみたら ーー よく似合うし、周りからの評判もいい。
 そう、エビちゃんは、エビちゃんにしか似合わないような、いわゆるモデル服は着ない。誰にでも似合う、無難な服を着てくれる。
 透明人間の味方なのだ。(p.60-61)
 透明人間は、誰にでも似合う、無難な服が嬉しい人たち。
 そして・・・

 

 

【できれば「選ぶ」ことから逃れたい】
 僕らは、基本、選ぶのがニガテ。
 ―― というか、できることなら「選ぶ」ことから逃れたい。いや、むしろ「選択の余地がない」ほうが幸せかもしれない。・・・中略・・・。
 選択の余地を与えることで、相手が幸せを感じると言うのは、送り手側の幻想である。(p.66)
 これが平均的な日本人だろう。
 しかし、国際化の進展によって、かなり日本人離れした日本人が増えているのは確か。
 日本人だけなら、自己主張せず、受け身な人生を過ごすことで、無難な人生を送ることができる。
 透明人間=旧タイプの日本人と言えそう。

 

 

【エジソンが蓄音機を作った目的】
 エジソンは蓄音機を発明した当時、それが音楽を録音・再生するものとは認識していなかったのだ。
 え? じゃあエジソンは何のために蓄音機を発明したかって?
 遺言だ。遺言を音声で残すために、エジソンは蓄音機を発明したのである。(p.106)
 著者は、未来の需要を予測し商品を開発するというのはかくも難しい、ということを言っているのだけれど、読者としては、そんなことより「遺言を残すため」という理由に、「へぇ~」である。
 手書きでは、偽造されるという恐れがあったということか。

 

 

【ビルを新築すると業績が悪化する】

 目立つことは得策じゃない。
 嫌われない程度に、ほどほどの存在感を発揮するのが一番賢い方法。・・・中略・・・。
 テレビ業界を例にすると、TBSは94年にビッグハットと言われる新社屋を建てたところ、立て続けに不祥事が発覚。「ニュース23」でキャスターの筑紫哲也さんが「TBSは死んだ」と発言したのは有名な話である。
 フジテレビも97年にお台場に移転したけど、90年代後半から2000年代前半のフジテレビは、かつての三冠王の勢いはどこへやら ―― 日本テレビの前に全く歯が立たなかった。
 ―― が、その日テレも04年に汐留の新社屋に移転したところ、9年間続いてきた四冠王から陥落。
 これらは偶然だろうか? (p.125-126)
 誰でもこういう話は、頻繁に聞いているだろう。
 トップに惜福、分福、植福という概念があれば、世のため人のために使うことを選択するだろうけれど、羽振りの良さ第一としか考えられないような無教養な人間では、福を有効活用できないのだから、当然先細りである。
    《参照》   『宇宙銀行』 植西聰 (サンマーク出版)
              【惜福】

 ところで、近年はどのテレビ局もメディアの潮流がインターネットにシフトしつつあるので、広告収入が減って以前ほど豊かではないだろう。
 そもそも、インターネットを活用している人々は、大手メディアの情報など鼻から馬鹿にしている。各局揃ってSTAP細胞のニュースを一斉に報道したのは、都知事選で原発即停止の小泉純一郎陣営を優勢にさせないためであり、STAP細胞など識者の間では話題になるような研究ではないと、インターネット上では当たり前に語られていた。研究内容の信憑性が疑われることまで計画していたかどうかは分からないけれど、乗せられて失墜させられた女性研究者は、自業自得とはいえ強烈に気の毒である。

 

 

                    <了>