
前半は、アベノミクス「第1の矢」から「第4の矢」までが簡略に説明されている。後半は、日本のTPP参加に関する説明。これについては重大な懸念があるけれど、この著作を読んでその懸念は抑止できる可能性があることが理解できた。2013年11月初版。
【アベノミクス第1の矢:金融緩和】
過去のインフレ例は、固定相場制状況下において起こった事例ばかり。現在の日本はきちんとした変動相場制を敷いている。
中国がインフレ圧力に晒されているのは、形式上は変動相場制をとっているけれど、実質的には人民元切り下げを拒むことで固定相場制的な運営をしているから。このような状況下で、空虚な住宅投資に充てられた理財商品の償還期限目白押しの過程に入った中国は、さらなるジャブジャブ供給を余儀なくされているからインフレ圧は高まるばかり。
黒田氏がいうように、2年というタイムスパンで2%の物価上昇率目標を達成することも、充分可能でしょう。そこには「将来、物価が上がる」というインフレ期待があるからです。もし、仮にそうならなかったら、それは金融緩和という「薬」の使い方が弱いということ。金融緩和をさらに推し進めていけばよいのです。(p.49)
アベノミクス「第一の矢」である「金融緩和」の論拠は 『アメリカは日本経済の復活を知っている』 浜田宏一 や 『日本人が知らされていないお金の話』 高橋洋一 に書きだしておいた。また、インフレ懸念に関することも書き出してある。過去のインフレ例は、固定相場制状況下において起こった事例ばかり。現在の日本はきちんとした変動相場制を敷いている。
中国がインフレ圧力に晒されているのは、形式上は変動相場制をとっているけれど、実質的には人民元切り下げを拒むことで固定相場制的な運営をしているから。このような状況下で、空虚な住宅投資に充てられた理財商品の償還期限目白押しの過程に入った中国は、さらなるジャブジャブ供給を余儀なくされているからインフレ圧は高まるばかり。
【近隣諸国の懸念】
【金融拡大によって各国とも安定した状態に落ち着く】
変動相場制下では、ある国が金融緩和によって景気を刺激しようとすると、その通貨のレートは下落します。すると、貿易相手国の通貨は切り上がり、相手国の経常収支は悪化することになります。そのことが、いわば不況を輸出するかのように見える効果があるため、「近隣窮乏化」政策だという批判が生れることになりました。
これは1950年代には経済学の常識でしたが、現在の経済学の知見からすると。大きな間違いなのです。(p.72-73)
《参照》 『アメリカは日本経済の復活を知っている』 浜田宏一 (講談社) 《後編》これは1950年代には経済学の常識でしたが、現在の経済学の知見からすると。大きな間違いなのです。(p.72-73)
【金融拡大によって各国とも安定した状態に落ち着く】
韓国で講演した際にも、私は、「日本の中央銀行を責めるのではなく、韓国の中央銀行に対して適切な金融政策を求めるべきだ」とコメントしておきました。(p.73)
アベノミクス実施以前の韓国は、日本の中央銀行の政策によって長年ウォン安というボーナスを支給されていたのだから、今になって変更された日銀の政策を責めるというのはおかしい。むしろ日本企業を苦しめ韓国企業を飛躍させたボーナス期間について日本に感謝すべき。
【アベノミクス第2の矢:財政政策】
財政政策とは、歳入面では増減税、歳出面では公共投資。
歳出面の公共投資においても、ちょっとどうかと思うような公共工事が始まっている。
これらの財政政策に関して、著者は以下のように記述している。
財政政策とは、歳入面では増減税、歳出面では公共投資。
アベノミクスには、雇用を増やした企業、賃金を上げた企業、設備投資をした企業に対して法人税を減税するという税制改正が盛り込まれています。(p.79)
しかし、国民に対しては消費税8%を来年4月に実施すると宣言したばかり。歳出面の公共投資においても、ちょっとどうかと思うような公共工事が始まっている。
これらの財政政策に関して、著者は以下のように記述している。
【「マンデル・フレミングの法則」を踏まえた上での金融政策と財政政策】
著者の浜田先生も実施時期の早すぎるこういった財政政策の大盤振る舞いには賛成していない。金の卵を産む鶏を殺しかねないからである。
財政政策を使うとき、欠かせないのは金融政策を全開で行うということです。財政拡大によって国債を大量に発行し、金利が上昇すると、海外資金の流入を招き、円高につながってしまうおそれがあるからです。
円高で輸出減と輸入増が起きると、外需が縮小し、財政出動で喚起した内需を相殺してしまう ―― これを「マンデル・フレミングの法則」といいます。そうならないためには、金融政策による金利の安定化を同時に図ることが必要。つまり金融緩和を十分に行うことで、財政政策も効いてくるのです。すなわち金融政策が「主」、財政政策が「従」なのです。(p.80)
アベノミクスの効果が国民全体に実感できるようになるまでの期間は当初から2年と言われていたのだけれど、それを待てないから、喫緊の必要性もないのに、国交省の族議員などが首謀者となって紀伊半島の周回道路建設などといって過剰な公共投資(財政政策)を行いたがるのである。円高で輸出減と輸入増が起きると、外需が縮小し、財政出動で喚起した内需を相殺してしまう ―― これを「マンデル・フレミングの法則」といいます。そうならないためには、金融政策による金利の安定化を同時に図ることが必要。つまり金融緩和を十分に行うことで、財政政策も効いてくるのです。すなわち金融政策が「主」、財政政策が「従」なのです。(p.80)
著者の浜田先生も実施時期の早すぎるこういった財政政策の大盤振る舞いには賛成していない。金の卵を産む鶏を殺しかねないからである。
たしかに3%上昇する消費税のマイナス効果は無視できません。しかし私は、それほど心配していません。所得や雇用統計に見る実体経済の改善の姿が力強いのと、変動相場制下では、財政による景気抑制要因は金融緩和によって十分に対抗できると信じるからです。(p.89)
【アベノミクス第3の矢:成長戦略】
給与を5%以上上げた企業については、その10%を減税するというような条件付きの法人税減税なども、この成長戦略にからむものなのだけれど、より多きな効果を生むはずの規制撤廃・制度改革に関しては、天下りに象徴される腐りきったお役人たちの利権に絡むところだから、福島原発の東電に象徴されるように、巨大なところは何も変わらないだろう。
《参照》 『日本中枢の崩壊』 古賀茂明 (講談社) 《前編》
【腐敗王国・日本の象徴:東京電力】
この成長戦略は、より正確にいうと、「民間投資を喚起する成長戦略」。成長力のある民間の分野に資本や労働力が集まりやすいようにしていく、ということです。・・・中略・・・。
この『好循環』を回していく鍵は、規制・制度改革であります。(p.83)
アベノミクス第3の矢が有効に働くためには、TPPへの参加が必要になります。貿易の自由化を推し進めて、農業部門を含む日本の産業全体の効率化を実現しなくてはなりません。(p.5)
TPP参加に関しては、《後編》に書き出しておいた。この『好循環』を回していく鍵は、規制・制度改革であります。(p.83)
アベノミクス第3の矢が有効に働くためには、TPPへの参加が必要になります。貿易の自由化を推し進めて、農業部門を含む日本の産業全体の効率化を実現しなくてはなりません。(p.5)
給与を5%以上上げた企業については、その10%を減税するというような条件付きの法人税減税なども、この成長戦略にからむものなのだけれど、より多きな効果を生むはずの規制撤廃・制度改革に関しては、天下りに象徴される腐りきったお役人たちの利権に絡むところだから、福島原発の東電に象徴されるように、巨大なところは何も変わらないだろう。
《参照》 『日本中枢の崩壊』 古賀茂明 (講談社) 《前編》
【腐敗王国・日本の象徴:東京電力】
【アベノミクス第4の矢:セーフティーネットの作成】
ニートやフリーター以外に、適職が見つからず働くことを諦めてしまった「孤立無業者」といわれる人々は日本総人口の1.28%も存在している。また、派遣やパート依存になってしまっている雇用形態はおいそれと正社員形態になど回復しない。弱者がそこから抜け出る道筋は余りにも少ないのが現実である。
弱者救済のための大きな指標や枠組みは国が作るとしても、具体的な調査・実施は、各市町村の行政が行うべきことである。
《参照》 『下流志向』 内田樹 (講談社) 《後編》
【下流社会を救済せよ】
もう一つ、規制改革を行う際に注意すべきことがあります。小泉内閣における規制改革では、「競争に負けた人を救う」という発想が足りなかったように思うのです。そこで、「第4の矢」として、セイフティーネットを設けることも一案ではないでしょうか。・・・中略・・・。
重要なのは、政府自らが鎧を脱いで不必要な規制を外すこと。しかし、激化する競争のなかでふるい落とされる人、不幸にして取り残される人に十分なケアがなされなければ、人々を幸福にするという国家最大の目標は達成されません。(p.85)
たとえアベノミクスが最大限に上手くいったとしても、それによって国民すべてが経済的に豊かになれると思うのは幻想でしかない。グローバル化した資本主義経済下にあっては、勝者と敗者の陰影はどうしても強烈にならざるを得ないのである。強者によって得られた資金で、弱者のためのセイフティーネットを作成することは必要なのである。重要なのは、政府自らが鎧を脱いで不必要な規制を外すこと。しかし、激化する競争のなかでふるい落とされる人、不幸にして取り残される人に十分なケアがなされなければ、人々を幸福にするという国家最大の目標は達成されません。(p.85)
ニートやフリーター以外に、適職が見つからず働くことを諦めてしまった「孤立無業者」といわれる人々は日本総人口の1.28%も存在している。また、派遣やパート依存になってしまっている雇用形態はおいそれと正社員形態になど回復しない。弱者がそこから抜け出る道筋は余りにも少ないのが現実である。
弱者救済のための大きな指標や枠組みは国が作るとしても、具体的な調査・実施は、各市町村の行政が行うべきことである。
《参照》 『下流志向』 内田樹 (講談社) 《後編》
【下流社会を救済せよ】
【日本経済は正しい方向に舵を切った】
現時点は、アベノミクス開始からちょうど1年である。
「第4の矢」で記述したように、破壊された中流が元に戻ることまでは期待できない。失業率改善の殆どは、パートや派遣による雇用の増加によって起こるはずである。仮に数値上の回復が見られるようになったとしても、その実質がバブル崩壊以前の状態に戻ることは100%あり得ないのである。
アベノミクス批判でよく見られるのが、「庶民の生活は一向に良くなっていない」というもの。給料が上がり、国民全体が景気回復を実感できる日は、果たして来るのだろうか。(p.90)
これに関しては、「効果が出るまでに、2年かかる」と最初から言っていた。現時点は、アベノミクス開始からちょうど1年である。
そのことで「アベノミクスは失敗だ」とするのは早計なのだということを分かっていただきたいのです。いまみなさんにいいたいのは「少しだけ我慢してください」ということです。(p.91)
日本経済の今後について、最も強く言いたいことは、次の言葉に集約できます。
「何も心配はいらない。アベノミクスをこのまま続けるべし」
日本経済は正しい方向に舵を切ったのです。(p.97)
輸出関連産業以外の企業の正社員の給料が増加しだしたら、本当の回復だろうけれど、それを待つだけで何もせず無為に過ごすだけなら余りにも能天気過ぎるだろう。日本経済の今後について、最も強く言いたいことは、次の言葉に集約できます。
「何も心配はいらない。アベノミクスをこのまま続けるべし」
日本経済は正しい方向に舵を切ったのです。(p.97)
「第4の矢」で記述したように、破壊された中流が元に戻ることまでは期待できない。失業率改善の殆どは、パートや派遣による雇用の増加によって起こるはずである。仮に数値上の回復が見られるようになったとしても、その実質がバブル崩壊以前の状態に戻ることは100%あり得ないのである。
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