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 アベノミクスの論理的支柱となっている方の著作。大きなポイントは、リーマンショック以降、日銀が行ってきた金融政策が世界各国のそれと違い過ぎた、ということだろう。2013年1月初版。

 

【まえがき】
 ある人々は私のことを「ノーベル経済学賞候補の一人」などといってくれることもある。実力以上に持ち上げてくれるのはうれしいが、経済学が世のためになる「経世済民」の学問だと考えると、とてもそんな資格などないように思える。
 なぜか? 友人がいうように、教え子である日本銀行総裁、白川方明氏を正しく導くことができなかったからである。
 結論からいおう。20年もの間、デフレに苦しむ日本の不況は、ほほすべてが日銀の金融政策に由来するものである。(p.1)

 そう、アメリカは、いや世界は、日本経済が不変の法則に則って運営されさえすれば直ちに復活し、成長著しいアジア経済を取り込み、再び輝きを放つことができることを知っている。
 私が本書のタイトルを『アメリカは日本経済の復活を知っている』としたのも、ここに理由がある。もちろんそこには、私が第2の故郷たるアメリカから経済学を研究し日本を見続けてきた結論、という意味も含まれている。(p.3-4)
 本書の横帯に高橋洋一さんの推薦文が書かれているけれど、昨年、日本経済を討論し合う番組で、通貨供給量を増やす金融政策を語っていた高橋さんは、圧倒的多数の否定論者に囲まれて主張の根拠を語れないような状態だったのを覚えている。だからその時は、正論であったとしても、国民の誰もが疑惑を抱えたままになってしまっていたはずである。
 しかし、この本を読んで、市場に多くの円を供給する金融政策が効果的である理由が、諸国家の通貨供給量との具体的な比較値という簡単な事実からすんなり理解できた。

 

 

【自分なりの総括】
 要は、「インフレ(ターゲット)政策は、国際経済化した段階では資金が海外に流れてしまうだけで効果的ではないだろうと、かつて単純に思っていたのだけれど、それはあまりにも未熟で浅薄な考え方だったのである。流れ出るからこそ為替(円高⇒円安)に影響する。まあ、当たり前のことだけれど、しょぼくない金融緩和は、無駄ガネになりはしないのである。
 それよりなにより、世界の主要な諸国家は、通貨供給量を3倍にも増発している中で、日本だけが微増で終わっていたということを、具体的な数値を元に認識していなかった。これは大きい。具体的なマクロ状況を正確な数値で捉えていなかったのである。日本も実態はけっこうジャブジャブなのだろうと勝手に思っていたのだけれど、国際比較で言えば、日本は確かに微増である。これゆえにこそ円高になっていた。
 「アメリカがドルをジャブジャブ供給すれば、世界経済の破綻になる」という論理はあり得ただろうけれど、実際はアメリカだけでなく、世界中の主要国家がおしなべてジャブジャブ供給だったのだから、日本だけが孤高にも例外だったのである。つまり日本だけが、自国通貨高という国際的に特異な陥穽に自ら率先して陥っていた。
 そしてここでも、円高基調はもはや国際経済において不可避な趨勢、と勝手な思い込みの理解をしていたようなところがあった。しかし円高は不可避だったのではなく、日銀による意図的な日本経済封じ込め政策だったのである。<円高は、BIS第3次バーゼル規制によって日本を経済的に完全に壊滅させるという闇の権力によって指示されたシナリオに基づいて行われていたのだろう>
   《参照》   『経済大国なのになぜ貧しいのか?』 苫米地英人 (フォレスト出版) 《後編》
             【好況・不況を定めるマネーストック】 から最後まで

 

 

【円高のダメージ】
 たしかに石油産業のように、ほとんどを輸入に頼っている純然たる輸入産業には、デフレと円高は有利に働く。しかし、そういう分野はむしろ稀。 ・・・(中略)・・・ 。
「日の丸半導体の没落」として記憶に新しいのは、エルピーダメモリの破綻だ。大新聞は、欧州景気や経営の誤算を強調するが、基本的な要因は、経営者の記者会見にある通り、円高に尽きる。
 リーマン・ショック以降、円はドルに対して30%も高くなった。一方、韓国のウォンはドルに対して30%も安い。ということは、エルピーダは(というより日本の輸出企業の多くがそうなのだが)、韓国製品との競争において60%ものハンディを背負うことになったのである。
 60%ものハンディを背負わされては、産業政策や生産性向上の努力では、絶対に太刀打ちできない。つまりエルピーダは、円高によって破綻したといえる。
 円高を放置してきたのは、それを止めることができたにもかかわらず無策だった日銀だ。そう、エルピーダは日銀に潰されたのである。(p.58)

 

 

【円高抑止策】
 具体的には、 ・・・(中略)・・・ 20兆円の国債を日本銀行が引き受けるというのが、有効なシグナルの一案だ。
 これは財政法の条文、すなわち財政法の第5条によって原則として禁止されている日銀の国債直接引き受けかどうか解釈が分かれるところだが、形式論理を使って日銀の都合のいいように主張するのは、国民の福祉をないがしろにした日銀の御用学者の議論である。
 もし直接引き受けが望ましくないならば、市場に国債を発行したあと、総額を日銀が買い上げると宣言するかたちでもいい。引き受け、ないしは大規模な買い上げを宣言することで、マネタリー・ベース(現金+金融機関の日銀預金残高)が拡張し、量の効果で円高傾向が抑制される。
 それだけではない。「将来は、日本銀行も、過去20年にわたって産業界と国民に押し付けてきた引き締め政策をやめるだろう」と市場に受けとめられれば、そのことが期待を呼んで、円高傾向に歯止めがかかる。(p.51)
 この本では、マネーストックの問題は言及されていない。
 しかし、マネタリーベースの範囲で、金融緩和によって円高傾向に歯止めがかかるという論理は、アベノミクス開始から6カ月ほどたった今日、正しいことが分かる。
 変動相場制のもとでは、基本的に、自国の物価、為替レート、雇用は、金融政策で左右できる。変動相場制のルールのもとでは、各国が自由に金融緩和や為替介入を行えばいいので、協調介入の必要はない。(p.52)
 介入だけしても金融緩和が伴わなければ、円高は止まらないのである。
 それなのに、日銀の山口廣秀副総裁が、「日銀は金融政策を為替レートに影響を与えるために使う意図はない」と語っているのには呆れるしかない。日本経済の病根であるデフレ、円高、不況のいずれにも、すぐさま効く貨幣供給を握っている日銀が、この薬は使えないといっているようなものだ。 (p.72)

 

 

【金融緩和が効果的ではないという意見に対して】
 「日本では、現在お金は余っている。お金が銀行に余っていても、それを借り入れる人がいないのだ。だから金融緩和は無意味だ」という理屈だ。専門の銀行家にもそういう意見の人が多い。
 しかし、これは二重の意味で間違っている。(p.84)
 その理由の一つ目。
 デフレ状況においては、借り手は物価下落分だけ損失を受けている。つまり、金利がゼロでも、実質の利子率はゼロではない。だから借りない。デフレが克服できれば、実質の利子率がゼロになって借り手は増える。
 二つ目。
 借り入れには担保が必要。多くの担保は不動産によっているけれど、金融引き締めをしていると、不動産価格や証券の価値が下がってしまう。これではなおさら借り入れする人は減少してしまう。