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 営業職にある人は勿論のこと、人間関係でちょっと悩んでいる人が読んでも、大いに参考になるだろう。
 2003年9月初版だけれど、手にしたこの本は2005年7月第16刷である。優れた内容の本は、流石によく売れている。

 

 

【コミュニケーション能力】
 序盤に、ダサイおじさん、ボキャ貧のおにいちゃん、美人過ぎるおねえさんがそれぞれ成果を上げるまでの話が書かれている。このらの会話含みの実話に、読者は一挙に引き込まれてしまうだろう。
 その中で、暴走族のリーダーだったボキャ貧のお兄ちゃんが、トップ営業マンになるまでの初期段階。
 言葉の表現能力と言うのは、それまでにどれくらいボキャブラリーをインプットしてきたかによって決まります。小学校の高学年くらいから、ちょっと勉強をさぼったり、本を読まないでいると、極端にインプットされている言葉は少なくなってしまいます。 ・・・(中略)・・・ 。
「あのね、まずはここに5冊の本があるけど、どれが一番読みやすい?」
「うーん」
 と言って彼が手を伸ばした本は、小学生が歴史の勉強で使う簡単な本。 『織田信長』 でした。
「オッケー、じゃあこれを明日までに読んできてね。そのあと内容を教えて。トレーニングはそれだけ」
そうして、次の日から1週間かけて、彼は4冊の本を読むことができました。毎回その内容について私に報告してくれます。(p.45)
 3冊目くらいから、明らかに表現に変化が出てきたという。
 彼は頭が悪いのではなく、いろいろな表現や言葉に触れるチャンスが少なかっただけなのです。本を読み、その感想を聞くというやり取りを1カ月くらい続けていると、しだいに彼は言葉が多くなり、自分の感情を言葉にすることができるようになってきました。(p.46)
 そんなボキャ貧なオニイチャンでも、立派な営業マンに育て上げてしまった著者の育成力が素晴らしい。
 能弁でありさえすれば営業成績が上がるというものではないだろうけれど、共感したことを表現すらできないようなボキャ貧では困るのである。営業マンに限らず日常生活者であっても。
   《参照》   『いま大人に読ませたい本』 渡部昇一・谷沢永一 致知出版
             【壊れたレコードにならないように】

 

 ところで、この本に書かれている文章やいくつかの会話を読んでいると、著者には、隠しだてすることなく、さりとて “グサー” とやってしまわないように、短所を上手に相手に伝える話術がある。勿論、その後の改善法まで用意して短所を指摘しているのである。ここら辺が、ご自身が優れた営業マンであり、また優れた営業マンを育成するプロならではなのだろう。

 

 

【全ての商品は・・・】
 「全ての商品は問題解決のために生まれた!」 ということを忘れないでください。
 お客さんに 「もっとこうなればいいなぁ」 という欲求がなければ、どんなよい商品であっても 「欲しくない」 のです。(p.80)
 ちょっと意外な記述に思えるけれど、考えてみればなるほどその通りである。
 著者は、初めての営業で英会話の教材を売るのに、英語に関するお客様の夢の実現を応援するつもりで話していたら、買っていただくことができたのだという。
 本人に自分の潜在的な欲求に気がついてもらう方法は、
「今は興味ないかもしれないけど、いつか、将来的には・・・英語話せるようになったほうがいいですよね?」と聞いてあげること。
 そしたら、たいてい 「まぁ、そうですよね」 と答えてくれます。
 そこから、 “いつかを今” に変える方法を工夫すればいいのです。(p.124)

 

 

【エネルギー】
 「この人はパワーがあるな」 と思える人は、みんな元気がいいという点で共通しています。 ・・・(中略)・・・ 。内に秘めたエネルギーをもっともっと燃やしてやれば、あなたの周りは一気に明るくなり、影響力だってぐんぐん上昇していくはずです。
 そんなに毎日元気でいたら疲れるって? いいえ、元気いっぱいでやっていたら疲れないのです。本当です。このエネルギーは、使えば使うほど増えるのです。(p.181)
 「疲れる」 と感じる人と、「使えば使うほど増える」 と感じる人の違いって、多分、人の幸せに役立っているという実感の有無の差なのだろう。生活(お金)のために仕方がなくやっているのと、商品を通じて人の幸せに役に立っていると感じるのとでは大きな差がある。
 著者は、ジェットコースターに乗る時の気持ちを例にして “ワクワクとドキドキは裏表” という風な表現をしているけれど、同じことを経験しながら、ワクワク派は元気が増し、ドキドキ派は疲れるのである。
 これを書いていたら思い出してしまった。
 大学生の頃、エアコンメーカーで雇用されてコジマ電気の売り場で1週間ほどアルバイトをしたことがある。売れ残っていた古い機種のエアコンを1台でもいいから売りたいがためにアルバイトとして雇われていたのであるけれど、チャンちゃんはその使命を果たしたのである。アルバイトだから売ろうが売るまいがバイト代には関係なかったけれど、どう見ても古い機種と分かってしまうブ厚い茶色のエアコンを、素晴らしいと思わせる思いつきの会話で売ってしまったのである。機種や性能の比較をきっちりやってその違いを知っていたら客に対する罪悪感で売れなかっただろうけれど、「バイト代くらいは売らないと」と思っていただけだったから、マイナス面には触れずにお客の幸せ(欲求)に寄与する感じで会話ができたのである。
 南極で氷を売るとか、アフリカの原住民に靴を売るというような話が、営業の世界ではよく語られているけれど、どんな商品でも売ってしまう営業マンと言うのは、おそらくワクワク感を売り込んでいるはずである。これが基本だろう。
 
<了>
 

  和田裕美・著の読書記録

     『神社が教えてくれた人生の一番大切なこと』

     『「売れる営業」に変わる本』