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 29歳で盛岡グランドホテルの総支配人に就任して大赤字を大黒字に転換させ、シーホークホテル、福岡ダイエーホークスの経営にも携わり、見事に成功させた再建請負人が著した書籍。

 

 

【静学と動学】
 勉強には 「静学」 と 「動学」 の2種類があると考えています。「静学」 とは本を読んで学ぶなどの通常の勉強、「動学」 とは、人の話や人に生きざまから直接学ぶことです。そして、静学よりも動学のほうがはるかに得るものが大きいと私は考えています。 (p.42)
 仕事を通じて遊び、仕事を通じて学ぶというのが基本姿勢 (p.19) と言える著者のような向上心に溢れた人にとって、ビジネスの現場は 「動学」 の宝庫なのだろう。

 

 

【能力ではなく、能力の向上度を評価する】
 私にとって、最高のライバルは 「昨日の自分」 でした。昨日より一歩前に進む闘い、去年よりも前に進む闘いを自らに課し、がむしゃらに働きつづけているうちに、いつしか私の二十代は終わっていました。
 そこで学んだことは、自分がトップに立つことがあったら、能力を評価するのではなくて、能力の向上度を評価してあげるべきだということです。
 能力は直ぐには良くなりませんが、態度はその気になれば、今すぐからでも、良くなります。私は能力の向上は態度で決まると思っています。  (p.48)
 著者の記述の中には、要所要所で “素直” という言葉が記述されている。向上度は素直さに比例しているといえる。

 

 

【「企業」 は 「人を止(とど)める業」】
 「お客様は神様です」 などと言われていますが、私にとって一番大切なのが社員たち、二番目に大切なのが取引先、お客様は失礼ながら三番目です。私は、あえてそう公言しています。社員を大切にしない会社が、お客様を大切に出来るはずがないからです。
 「企業」 という言葉は 「人を止(とど)める業」 と書きます。「企業の目的は利益の追求だ」 というのが世間一般の考え方ですが、私はそうは思いません。企業等という仲間関係を継続させることこそが 「目的」 であり、利潤を上げることはそのための 「手段」 にすぎないと思っています。  (p.57)
 著者は、新入社員の働いている姿を写真にとり、母の日には、カーネーションに代えてその写真を新入社員の母親に送っている (p.78) のだという。
 先行き不透明な現状だからこそ、こういった日本的経営の本質である考え方は、より受け入れられやすくなってゆくだろう。そもそも日本は、アメリカのような “個人の成功” より “集団の幸福” を基準にしてきたはずの国である。
 

【敵に素をつけると素敵になる】
 私は、「敵を追い越し、叩きつぶすこと」 よりは、「敵を見方に変えること」 をまず最初に考えます。それが 「敵に素をつけて素敵に変える」 ということであり、私の経営者としての基本姿勢なのです。(p.152)
 リストラもそうだけれど、誰かしらの怨念に纏い付かれるような経営方法は、見えざる世界から経営の足を引っ張られる巨大なマイナス因子となる。アメリカ的合理化効率化経営は、このような見えざる世界の因子など眼中にない。仮にあったとしても、数量化しようにもできっこないから分析項目には入れようがない。愚者はそれでもアメリカ的経営を良しとする。

 

 

【ロイヤリティ(著作権使用料)の放棄】
 大切なことを実行するためには、これまで正しいと思っていたこと(規制緩和)、これまで得をしていたこと(既得権の放棄)をどれだけ棄てられるかです。そのために私は、球団のロゴ、キャラクター・マーク、テーマソングなどのロイヤリティを一切無料にしたのです。・・・(中略)・・・。そうすれば球団と地元のみなさんとが同じ方向を向けると考えたのです。 (p.118)
 ロイヤリティ収入というのは、いわば “閉じた収入” である。 (p.121)
 ロイヤリティを、“安定収入” と考えずに “閉じた収入” と考えられる発想がすごいところ。
 ダイエー球団は、福岡との一体化を進めることで、放棄したロイヤリティ額(5億円)をはるかに上回る収益を上げることが出来た。球団の利益より福岡地域へ利益を還元することによって、球団の財政は再建されたということになる。より広範な領域での 「全体最適」 が実証されたということでもある。

 

 

【若者が抱く 「疑問」 を大切にする】
 若い人が持っていてベテランがもっていないものは何かといえば 「行動力」 と 「意欲」、そしてもう一つは 「疑問」 です。初めて配属された仕事の現場で、彼らが抱く、どうしてこうなんだろう?」 という素直な疑問。その疑問を大切にしなければいけないと思うのです。というのは、ベテランたちはもう妥協を覚えてしまっていて、そうした素朴な疑問を抱けなくなっているからです。
 私は、若手や新入社員をできるだけ第一線に立たせるようにしています。そしてベテランたちには、彼らが率直にぶつけてくる疑問を大切にするようお願いしています。「そういうふうに決まっているんだから従え! と頭ごなしに言ってはいけない。誠実に疑問に答えてほしい」 と。 (p.187)
 疑問を抱けないような若者なら魅力や資質に欠け、疑問を抱かせないような組織なら既に死にかけている。若者が疑問を抱いてもそれを伝えるルートが用意されていないなら、情報化社会の縮図としてそれらを自らの組織内に反映させ時代にマッチした有益な永続性ある企業としての資質に欠けている。
 著者は、以下のようにも記述している。
 会社に限らずあらゆる組織を建て直し、力を引き出すには、2つのC、すなわちコミュニケーションとコンセンサス(合意・意見の一致)が何より重要です。 (p.62)
 若者が抱く疑問は、この二つのCにも関わって、重要かつ貴重な因子である。
 どの地位の人であれ、疑問に答えようと常日頃どれだけ頭をめぐらせているか、そんな社員のパーセンテージが高いなら、きっと業績良好な会社なのだろうと思う。部品感覚の人まかせは “壊死” の始まりである。
 
 
<了>
 

  髙塚猛・著の読書記録

     『人生を立て直す36のヒント』

     『組織はこうして変わった』