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 47歳で、休職してロンドンに留学した体験談が書かれている。様々な状況を正直かつ上手に表現してくれている。著者のネアカそうな性格と、口語的な記述ゆえだろう、シアリアスな場面ではドキドキしながらもスラスラと楽しく読めた。何と言っても、実体験が書かれている本は引き込まれ易いものである。

 

 

【留学の前準備】
 休職による日本国内での様々な繋ぎ支払いの総額。
 15ヶ月間の休職を取ることになったので、その間、次のような項目について職場を通して処理してもらうことになった。つまり、厚生年金保険料、住民税、共済掛け金、生命保険料などである。これらを合わせると、なんと150万円にも上る。 (p.22)
 「ウッソー」 と思うけれど、月額なんと10万円である。こんなになるものだろうか。

 

 

【インターネットは便利・・・???】
 孤独な英国留学を励ましてくれたのは、手紙類だと書いたが、もう一つ近代兵器があることを言っておかねばならない。それは電子メールである。 (p.123)
 著者の留学時は1996年頃。今日の日本ではインターネットなど当たり前だけど、僅か12年前の日本はまだワープロ専用機の時代だった。ワープロを日本から持ち込み、しかも電圧の違う英国で変圧器の接続を忘れ、早速に壊してしまったという、痛~い経験も書かれている。
 カメラもこの頃はまだ、デジタル・カメラではなくフィルム・カメラが主流だった。重たい一眼レフカメラを購入して出かけたらしい。

 

 

【ロンドンの交通トラブル】
 地下鉄もよく突然動かなくなる。乗客はだからといって駅員に食らいつくわけでもなく、皆あきらめ顔で別のラインに乗り換えたり、バスに移ったりしている。これは、いかにこんなことが日常茶飯事かという証明であろう。 (p.125)
 ロンドン名物の赤いツーデッキバスなど、行き先表示の中に “OUT OF SERVICE” という黄色文字のプレートが用意されていて、突然、路側帯で停止し乗客を降ろし、そのプレートに変わってしまうのである。 これを2日に1回はどこかしらで見ていたから、運転手さんのサボリの口実として有効利用されているのだろうと思っていた。だって、運転手さんなんて実に慣れた表情で真っ直ぐ喫茶店に入ってゆくのだから・・・。

 

 

【英国人はセザンヌ好き】
 テート・ギャラリーで開かれた 「セザンヌ展」 は初日から何日たっても長蛇の列であった。・・・(中略)・・・。英国人のセザンヌ好きには驚かされた。 (p.114)
 へぇ~、知らんかった。
 ネルソン提督が高っか~い棒の先っぽに突っ立っているトラファルガー広場に面したナショナル・ギャラリーなど、ロンドンには無料のミュージアムが結構いくつもある。有料であっても、学生証を持っていると無料になったり半額になったりする。コーチ(長距離バス)の場合も学生証はすごいパワーを発揮する。著者の場合、47歳であっても学生は学生である。

 

 

【心の豊かさを求めて】
 勉強のために来ていたのだが、自分の年齢、能力からみて、はなばなしく成果があがったとは言えない。しかし、私の大切にしなければならないものは何か、それを気づかされたような一年でもあった。そして心が豊かになったと感じた。この留学では、仕事に関連した勉強という実利的なものを求めていたにも関わらず、私は途中から心の豊かさを求めていたことに気づいた。 (p.177)
 この書籍を一読してみると、著者の心境はよく分かる気がする。いろんな人々との関わりの中で経験できたことが何よりの宝物となったのだろう。特にロンドンまでやってきた家族を、ルームメイトの皆に紹介していた時など、最高に輝いていたのではないだろうか。
 同年代既婚者の読者であれば、著者の体験記に、胸が熱くなるような思いを抱くのではないだろうか。
 
 
   《同系統の著作》
 
<了>