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 「中東の火種」というような印象しかないイスラエルが技術大国?と思うけれど、その実態が報告されている。著者は東芝の副社長や米国企業の社外取締役など、様々な肩書きを持っている方。直接の見聞が書かれているので興味深い。2000年初版。 

 

 

【秀でた才能を養成する制度:タルピオット】
 (イスラエルでは)高校までの成績が特段に優れた人材には「タルビオット」という少数精鋭のエリートコースに進む道が用意されている。小国であるうえに建国以来の厳しい国情から、才能は草の根を分けてでも探し出し、国家のために活用しなければならない。 (p.34)
 イス(神)ラエル(勝利)という、カバラを秘教とする国家は、1948年(最強の数霊:22)に合わせて建国された。中東戦争の最中だっただろうか。最初からオイル産油国であるアラブ諸国の中に、マッチを投入するような建国だったのである。 “火に油を注ぐ” というか “油に火種をいれる” という表現がピッタリだった。

 

 

【ソ連崩壊がイスラエルの発展を準備した】
 旧ソ連からイスラエルへの移民は、ベルリンの壁が崩壊した1989年にユダヤ人の出国が緩和されてから増え始め91年のソ連崩壊を機に急増した。95年の総選挙では約19%を占めるまでになった。
 旧ソ連からのユダヤ人移民のうち相当数が軍や国の研究機関で働いていた第一線の技術者だった・・・(中略)・・・・彼らは数学的才能に長け、優れたアルゴリズム(画像解析などに使われるロジック)を携えてイスラエルにやってきた。 (p.37)
 軍需関連産業がイスラエルの経済発展を牽引しているにせよ、民需技術の発展も大きいのだから、1993年のイスラエルとPLOの歴史的和解も、間接的な要因のひとつなのだろう。

 

 

【イスラエル企業の特性】
 イスラエルの人口は日本の20分の1、国内総生産は40分の1にすぎない。そんな小国から、米国のNASDAQ(店頭公開市場)に上場している企業数は優に100社を超える。日本は20社にも満たないのだから、いかにイスラエル企業の比率が高いか分るだろう。 (p.72)
 イスラエル企業がナスダックに上場するのは、資金調達が目当てである。もとよりイスラエルは、ものづくりの伝統がある国ではなく、殆どが知能労働によるIT分野のベンチャー企業なので、アメリカ証券市場に適している。
 米国のインテル社は、才能ある技術者を集めてR&D(研究開発機関)をイスラエルにおいている。
 ファイアー・ウォールを開発した、チェックポイント社もイスラエルの企業である。
 今日、東芝はデジカメなどに使われるSDカードなどのフラッシュ・メモリで莫大な利益を上げているけれど、これは、東芝の技術とイスラエル企業のアイデアによる共同開発が元になっているそうである。

 

 

【リアクティブ・アーマー】
 被弾した瞬間、爆発することで、敵のミサイルの化学エネルギーを相殺してしまうというのだ。それにしても、戦車のボディーに自ら爆弾を巻きつけるとは、すさまじいまでの逆転の発想である。新品を買うより安上がりで、旧式戦車を十分戦力にできるため、いまでは旧式戦車の装甲強化の標準仕様になっている。 (p.102)
 リアクティブ・アーマーを、人間の心理戦に当て嵌めた場合、どういう意味になるのだろう、などと考えてしまう。サドをマゾのエネルギーに変換して受け取るということか・・・・。SとMのベストマッチは親和的互換ではあっても相殺ではないから、このケースに該当しない。
 全うに考えれば、混ぜっ返し、あるいは、他罰的批判を自虐的理解で応じること。

 

 

【米国・イスラエル・日本のカルチャー比較】
 米国の強さの本質は、実はこのように優れたバランス感覚にこそあるのだ。
 ユダヤ系の発想の斬新さや企業にかける情熱と、それをうまくマネジメントするアングロサクソン系の優れた戦略眼を併せ持っている。米国は、移民のエネルギーを国の力に換え続けている多民族国家であり、こうした多様性は彼ら独自のものだ。
 その点、日本やイスラエルはモノ・カルチャーで、それぞれが単一の思考パターンで凝り固まっている。それが強さだともいえるが、同時に弱さでもある。 (p.149)
 割り切った表現でこのように言えるだろうけれど、アメリカの多様さの中には、既に多大に浸透した日本のビジネス・カルチャーがある。アメリカは一面において日本化することで生き延びてきたと言えるはずである。それもアメリカにとっては多様性の一部ではあるのだろうけれど。

 

 

【マルチメディア時代をリードするのは日本】
 マルチメディア時代の日・米・欧の実力を比較してみよう。マルチメディアというのは、コンピュータと情報通信と民生機器(家電)という3つのデジタル技術の組み合わせで、日・米・欧それぞれに得手不得手がある。(p.186)
 米はとうの昔に家電が衰退してしまった。欧の家電は並でコンピュータはあまり強いとは言えない。その点、日本はコンピュータと情報通信はまずまずで家電は無類の強さを誇っている。

 

 

【台湾企業 TSMC と WSMC 】
 私は台湾のファンドリー・メーカー、WSMC(世大積体電露)の会長を引き受けたばかりだったのだ。大地震はあろうことか、その翌日に起きたのである。 (p.206)
 WSMCの製造技術はニコン(日本光学)などの日本企業が担当していたのはいうまでもない。日本企業だったからこそ、地震後の復旧が速やかに行われた。
 著者が会長になるくらいなので、日本市場に強かったWSMCであるが、アメリカ市場に強かったTSMCが好条件で買取を提示し、WSMCは、会長(著者)抜きで売却を決定してしまったのだという。日本企業ではありえないことであろうけれど、台湾人の変わり身の速さの実例として知っておいたほうがいい。
 TSMC(台湾積体電露)の製造技術も日本企業が供給していたのはいうまでもない。著者は、半導体業界のヴィヴィッドな情報を入手するために、WSMCを買収したTSMCのアドバイザー契約を引き受けたと言う。
 《関連》   日本の半導体産業の技術力

 

 

【自前で自己完結できる時代ではない】
 私はシンガポール国立研究所のチェアマン(会長)もしているのだが、チェアマンの次のディレクターは米国人で、その下にはなんと20カ国の人が働いている。それがシンガポールの最先端の国立研究所の姿なのである。
 彼らは自国の人間を幹部に据えなければいけないなどとはつゆほども考えていない。優れた人材が外国にいるなら、連れてきて使えばいいではないかと割り切っている。この話を日本ですると、「海外に情報が流れるのではないか」と心配する人もいるが、そういう人は、それ以上に “情報が入ってくる” ことのメリットを見落としているのである。 (p.216)
 日本の国技である大相撲も既に二人の横綱は外国人である。三役以上も殆ど外国人になってしまったとしても、外国人力士の出身国で大相撲が放映され日本文化が広まり、いずれ引退した人材を通じて相互に文化と経済が強く深く還流しあうことを思えばいいのであろう。
 先ほど、俳優の浅野忠信が主演しているカザフスタン映画「モンゴル」が第80回米アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた、と報道されていた。
 日本とモンゴル、主役の座をそれぞれに相手国の人物が務めている。大いに結構ではないか。
 
 
<了>